-56- 「狐面の子3」

 スーパー八百万の横の林で、皆と遊んでいると、八百万で買い物をしたおじいちゃんが覗きに来た。


 おじいちゃんは、狐面の子に目を止めた。


「おや、初めて見る仔じゃな」


と言ったので、僕がその子を紹介すると、その子もおじいちゃんにお辞儀をした。


 少しの間話をしていると、その子のお母さんが迎えに来て、おじいちゃんに向かってお辞儀をした。


 そして、狐面の子が頭にずらして付けていたお面を取り上げ、自分の顔に付け、


「ご無沙汰しております」


と言った。


「ああ、久しぶり。大きくなったな。そうか、仔が産まれたか」


 どうやら、知り合いの様だ。


「いつもお孫さんには、うちの子と仲良くしていただいております。今後とも、よろしくお願いします」


「こちらこそ。一度、うちに遊びに来なさい。旦那も連れてな」


「是非、伺わせて頂きます。今日のところは、これで」


 狐面のお母さんは再びお辞儀をし、その子と手を繋いで帰って行った。


 その後ろ姿が見えなくなると、おじいちゃんは、


「あの狐のお面は、昔、わしがあの娘にくれてやった物なんじゃ。夏祭りに迷い込んで泣いておったが、見せてやったら泣き止んでな。祭りの踊りで使うヤツじゃったが、返せとは言えんかった」


 おじいちゃんは、懐かしそうに目を細めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る