-53- 「タスケテ」

 普通の人には姿が見えなくて、声だけは誰にでも聞こえる人型のイキモノ。


 時々、夕方の街外れで、助けて-、と大きな声で叫んでる。


 声は聞こえるものだから、聞き付けた人が何人か、こいつの周りに集まって来る。


 けれど、姿は見えないものだから、皆きょろきょろと辺りを見回して、互いに顔を見合わせる。


 そして、誰も自分の事が見えないと分かると、そいつはがっかりした様子で叫ぶのを止めてどこかへ行く。


 きっと、自分の事が見える人を、探しているんだろうな。


 僕は見えるよ、と名乗り出る気には、なれないけれど。

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