-46- 「街灯人間」

 冬のある日、森崎君の家に遊びに行って、帰りがすっかり遅くなってしまった。


 森崎君の家の周りは田んぼばかりで、辺りに街灯があまりない。


 真っ暗な中、自転車を漕いでいると、とても明るい、街灯の光が遠くに見えて来た。


 もう少しで街灯に辿り着く、と言う所で、僕は不意に違和感を感じ、止まった。


 あそこに、街灯なんてあっただろうか。


 よく見ると、その眩しい光は街灯、ではなかった。


 異様に背が高くて細長い人間が、気を付けの姿勢で真っ直ぐ立ち、猫背気味に少しだけ背を曲げて、下を見下ろしているのだ。


 そして、両目が異常に明るく光っていて、遠目に見るとまるで街灯の様に見えるのだ。


 一度気付いてしまったら、もはやそれに近付く事など出来ない。


 街灯と間違えて、あの光の下を通ったら、あの光る目の視界に入ったら、一体どうなってしまうのだろう。


 別の道で帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る