-21- 「最期の晩餐」

 死亡事故のあった交差点を通りかかったら、肩がずしりと重くなった。


 背後の事だから、自分では見えないけれど、背中に誰かが負ぶさっている様な感覚だ。


 ああ、これは拾っちゃったな、と思い、家に帰った。


 妙にお腹が空いて、ラーメンでも食べたいなと思いながら。


 ランドセルも背負ったまま、おじいちゃんの部屋に向かう。


「何じゃい、真実。背中に何を引っ憑けとるんじゃ。あの交差点で拾って来たな。しばらくは、あそこは避けて通れと言ったじゃろ」


 おじいちゃんは僕を見るなり、状況を一発で把握した。


「登校する時は避けたけど、帰りは一緒に下校した友達の家があっちの方だったんだよ」


「ふむ、まあ仕方ない。気分はどうじゃ。何か体に変化はあるか」


 僕は自分の体をあちこち確かめたが、特に変化はない。


「肩は重いけど、それ以外は何ともないよ。ああ、でも、何だかラーメンが食べたい。王麺の、こってりした奴」


 王麺のラーメンはこの町で一番こってりしていて、普段はあまり好きじゃないのに、この時はむしょうに食べたくて仕方がなかった。


 二人で王麺に行って、こってりしたラーメンを食べた。


 麺を食べてもまだお腹が空いていて、スープも全部飲んでしまった。


 すると、急に背中が軽くなった。


「ふん、逝きおったか。最期に食いたかった物が、ここのラーメンとはな。最期の晩餐は、人それぞれじゃの」


 おじいちゃんは、半分位残していた。

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