-21- 「最期の晩餐」
死亡事故のあった交差点を通りかかったら、肩がずしりと重くなった。
背後の事だから、自分では見えないけれど、背中に誰かが負ぶさっている様な感覚だ。
ああ、これは拾っちゃったな、と思い、家に帰った。
妙にお腹が空いて、ラーメンでも食べたいなと思いながら。
ランドセルも背負ったまま、おじいちゃんの部屋に向かう。
「何じゃい、真実。背中に何を引っ憑けとるんじゃ。あの交差点で拾って来たな。しばらくは、あそこは避けて通れと言ったじゃろ」
おじいちゃんは僕を見るなり、状況を一発で把握した。
「登校する時は避けたけど、帰りは一緒に下校した友達の家があっちの方だったんだよ」
「ふむ、まあ仕方ない。気分はどうじゃ。何か体に変化はあるか」
僕は自分の体をあちこち確かめたが、特に変化はない。
「肩は重いけど、それ以外は何ともないよ。ああ、でも、何だかラーメンが食べたい。王麺の、こってりした奴」
王麺のラーメンはこの町で一番こってりしていて、普段はあまり好きじゃないのに、この時はむしょうに食べたくて仕方がなかった。
二人で王麺に行って、こってりしたラーメンを食べた。
麺を食べてもまだお腹が空いていて、スープも全部飲んでしまった。
すると、急に背中が軽くなった。
「ふん、逝きおったか。最期に食いたかった物が、ここのラーメンとはな。最期の晩餐は、人それぞれじゃの」
おじいちゃんは、半分位残していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます