秒殺怪談録 真実少年の覚書「変なイキモノ」4冊目

香具師

4冊目

-1- 「大迫商事 その3」

 大迫商事のビルは、火事で焼けた後、綺麗に攫われて更地になった。


「誰が火を点けたのか知らんが、お陰ですっかり無害な土地になったわい」


 おじいちゃんがそう言っていたので、僕は更地になった跡地を見に行った。


 たくさんの人が首を吊って死んだはずなのに、幽霊を全く見かけなかったし、ビルを祟っていたと言う神様の気配も感じなかった。


「首吊りの神様じゃからな。更地になって首を吊れなくなったから、興味を失って何処かへ行ったんじゃろ。首を吊った連中は、一緒に連れて行かれたんじゃろうな」


 犠牲になった人達には、気の毒な話だ。


 もうこの土地には誰も残っていないのかもしれないけど、僕は手を合わせ、冥福を祈った。

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