我等、はみだしテイカーズ2!~立ち上がれ!夢のスーパーロボ~

えいみー

前回までのあらすじ

1999年、地球は魔力マナに包まれた。

あらゆる人々が、蹂躙され尽くしたかに思われた。

だが、人類は屈してはいなかった!



ばあんっ!



その、5mのボディはまるで体操選手のように宙を舞い、軽やかに着地してみせる。

そして、ボクシングよりも鋭い拳と、テコンドーのように素早い蹴りを、見せつけるように放った。


まるで、プロのスポーツ選手や格闘家並みの身体能力の人間を、そのまま巨大化させたようだ。

けれどもこれは、巨人でも、大型の人型モンスターでもない。

人が乗って動かす事を前提とした、乗り物なのだ。



………現在の時代は、アンゴルモア・ショックよりしばらくの時が流れた、西暦2002年。


混乱は収まりつつあるが、未だにモンスターは人々の生活を脅かし、またそれの対抗策になりうる魔法も、人類が手にするのは少し先の話。


つまり、魔法による技術革新もまだなのだ。

そんな時代に、こんなオーパーツじみた物が存在している理由。

それは、ただ一つ。


天才がいるのだ、悔しいが。



「いかがですか?これが私の開発した、初の有人搭乗型対モンスター用パワードスーツ・ニクスバーンです!」



人型の胸が開き、得意げに笑う男が降りてきた。

あんなに激しい動きをしたというのに、男には疲労一つない。

これも、人型を作ったこの男が、天才であるが故の事。



そして今、世界は求めていた。

この未曾有の危機。

世界を覆った魔力と、恐るべきモンスター達。

それに対抗できる、人類の新たなる力を。



「まさに拡張された人体!その身体は体操選手のようにしなやかで、ブルドーザーを上回る怪力と、戦車以上の耐久力!」



そして、男は作り上げた。

幼き日より憧れた、鋼鉄の勇者達。

それと肩を並べる………とまではいかないだろうが、その一歩とも言える存在を。



「ニクスバーンこそ、人類を救う救世主なのです!」



超合金の身体に人の心を加えた、空に聳えるくろがねの城。

一つの勇気シンカを百万パワーに押し上げる、変幻自在の鋼鉄の虚無。

宇宙そらの戦場を駆け抜けた、燃え上がりよみがえる機動戦士。

海の向こうからやってきた、乗り物の姿に変形トランスフォームする超ロボット生命体。

陰謀渦巻く新世紀ネオンジェネシスに現れた、母の魂を宿した人造人間。


ロボットアニメ。

そのアニメーションの長い歴史の中で生まれた彼等は、多くの子供達を魅了した。


そして、今まさにそれを現実の物としようとしていたこの天才も、そんなロボットに憧れた少年だった。


だからこそ、胸を張って言えるのだ。

この、技術の粋を集めた機械人形こそ、彼等のように人類の希望となるスーパーロボットなのだと。



「………本当に、それでいいのですか?」



ようやく、実現しようとしていた男の夢。

アニメに出てくるような正義のスーパーロボットを作り、世界を救う夢は、今始まろうとした瞬間に幕を引かれる事となった。



「何っ?」

「平和を守るためなら、何をしてもいいのですか………!」



展開としても、テーマとしてもベタな話。

フィクションの受け取り手として自分も楽しんでいた展開が、まさか自分の夢を潰しに来るとは。

まさか、そんな事があるとは、思ってもみなかっただろう………。






………………






西暦1999年。


かの、ノストラダムスの予言は当たった。


突如、地球全土を覆った謎のオーロラと、磁気嵐。


それは、地球の衛星軌道上に出現した「穴」………時空の裂け目とでも言える場所から、地球に広がった「魔力マナ」と呼ばれる異世界のエネルギー物質による物だった。


後に「アンゴルモア・ショック」と呼ばれる大異変。

それにより、地球は変貌した。


魔力と共に地球に現れた、「モンスター」と俗称される、異世界を由来とする狂暴な不明生物達。

魔力による汚染により、異世界の環境が再現されてしまった領域「ダンジョン」。


突如現れた恐るべき「敵」により、多くの人々が犠牲になり、人類は危機に立たされた。



だが、もたらされたのは「敵」ばかりではなかった。


それから一年して、いくつかのモンスターのように、魔力を自らの力「魔法」として行使する人間が現れだしたのだ。

それはやがて人類全体に広がり、モンスターに対する対抗策として重宝された。


モンスターへの対抗策が生まれると同時に、様々な事が明らかになってきた。


それは魔力が、ダンジョン発生の媒体になる汚染物質や、魔法という超能力の元という以外に、

使い用によっては石油や原子力をも上回る、新しいエネルギー資源としての側面を持っていた事。



やがて、モンスターの討伐やダンジョンの調査。

ダンジョン内部に発生した、様々な資源の採掘を生業にする人々が現れた。


かつてのファンタジーRPGの勇者達のような活躍を見せる彼等は、いつしか「ダンジョンテイカー」………略して「テイカー」とも呼ばれるようになった。


それに続くように、テイカーの育成の為の機関や、専用の武器や防具を作る会社も生まれた。



やがて、世界の危機はイベントと仕事に変わった。


いくつかの危険度の低いダンジョンは、テイカー入門の為の訓練所や、テイカーを疑似体験する為のベンチャー施設に変わった。


恐れられていたモンスター達も何種類かは捕獲され、動物園や水族館で………厳重な注意の元ではあるが、見る事が出来る。


テイカー達も、トップクラスの者達はロックミュージシャンやトップアスリート並みの人気を博し、称賛を浴びた。



世界がモンスターに、ダンジョンに、テイカー達に熱狂していた。







………こういう物が一番好きそうな、ある国を除いて。






………………






アメリカはニューヨークを拠点に置く、トップ冒険者集団テイカーパーティーザ・ブレイブ。

そのエースである、メキシコ産まれアメリカ育ちの女テイカー「スカーレット・ヘカテリーナ」。


その、ボンテージを纏ったようなセクシーな装備コスチュームで人気を博した彼女であったが、アメリカの「正義」は、そんな彼女を許さなかった。

一部の市民からの反感は、ついに彼女をザ・ブレイブからの追放リストラへと追いやったが、それで挫けるスカーレットではない。


このゴールドラッシュならぬダンジョンラッシュの世の中において、数多くのダンジョンを抱えつつもその殆んどが手付かずの国があった。

我々の住む東洋の島国、日本である。


………しかしながら、彼女は世界情勢についてそこまで関心がなかった。

故に、日本がテイカーに対して厳しい目線が集中している事を知らなかったのだ。



しかし、何も収穫が無かった訳ではない。

スカーレットは、日本で最初に潜ったダンジョンで、あろう事からテイカー………の真似事をしているような集団から殺されかかる、一人の少年に出会った。


秋山東アキヤマ・アズマ

学校で居場所がなく、家庭でも虐待同然の扱いを受けていた、13歳の日本人。

そして………この、テイカーに厳しい日本において、皮肉にも天性の魔法の才能、すなわちテイカーの才能を持って産まれてきてしまった少年だ。


そして、スカーレットとの出会いは、このまま腐ってゆくハズだったアズマの運命を大きく変えた。


ダンジョンに潜った事を父親から咎められ、家から放り出され、父親から言われた通り自殺しようとしていたアズマ。


それをスカーレットが助けた事で、二人の奇妙な同居生活。

そして、アズマのテイカーを目指す特訓の日々が始まった。



特訓の果てに、スカーレットと共に再びダンジョンに潜ったアズマは、因縁の相手でもあるモンスター・スケルトンを撃破。

父親とも法的な決着をつけた。


そしてアズマの夏休みを利用し、スカーレットとアズマは各地のダンジョンを巡るべく、一夏の旅に出た。



………同じ頃、スケルトンの出没したダンジョンの奥で、正体不明の巨大モンスターの骨格が発見された事を知らずに。

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