ネガティブ・シンデレラ

岸亜里沙

ネガティブ・シンデレラ

「シンデレラ、あなたに魔法をかけてあげましょう。そしたらお城の舞踏会へ行って、王子様と楽しい時間を過ごしていらっしゃい」


魔法使いのおばあさんは言いました。


「まあ、ありがとう魔法使いのおばあさん」


シンデレラは喜びました。


おばあさんが魔法の杖を翳すと、シンデレラは一瞬で素敵なドレスを身に纏いました。


「さあ、お行き。ただしこの魔法は、夜の12時までしか持たないの。だからそれまでに帰ってらっしゃい」


おばあさんは更に魔法の杖で、カボチャの馬車も用意してくれました。


「ねえ、ちょっと待って。夜12時で魔法が消えちゃうの?私これまでずっとひたむきに頑張ってきたのよ。消えない魔法をかけてくれても良いんじゃない?」


「あなたの魅力は心よ。それを王子様にアピールするの。例え12時にこの魔法が消えても、王子様はあなたの虜になっている事でしょう。恋の魔法はそんなちょっとじゃ消えないわ」


「初対面の王子様が、私の心なんて分かるわけないじゃない」


シンデレラは少し涙ぐみました。


「あなたは外見も綺麗よ」


おばあさんは優しく語りかけます。


「外見なんて、王子様の好みに合わなければそれまでじゃない」


「じゃあ、あなたの武器は何?」


おばあさんはシンデレラに問いかけます。


「何もないわ。だから魔法で全部変えてほしかったの」


「ああ、シンデレラ。いつからそんなにネガティブになってしまったの」


おばあさんは悲しそうな顔をしました。


「それにこのガラスの靴は何?こんな慣れない靴で、王子様と上手にダンスなんか踊れるわけないじゃない。足を挫いて終わりだわ」


シンデレラは捲し立てます。


おばあさんは悲しそうに首を振るだけでした。


「仮に全部が上手くいったとして、王子様と結婚出来たとしても、王子様のお義母様と上手くやれる自信がないわ。王子様の周りには、女の影も絶えないだろうし、私きっと精神がおかしくなるわよ」


「どうしてまだ決まってもいない未来の悲観をするの?そんなの今から考えていても仕方ないじゃない。未来というものはあなた次第で良くも悪くもなるものよ」


おばあさんはシンデレラを諭します。


「魔法が使えるなら教えて。私の未来がどうなっているのかを」


シンデレラはおばあさんに尋ねました。


「未来を知りたいの?それがどんなに絶望的な未来でも?いいわ。もし覚悟があるのなら、あなたに教えてあげる」


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ネガティブ・シンデレラ 岸亜里沙 @kishiarisa

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