第13話 メリーさんの服選び1

 さて、結局メリーと咲の間に挟まれる状態で一夜を過ごした。

 全然眠れなかった!

いや絶対眠れることなんて出来ないでしょ。

 だって寝返りたいからって右を見たら、俺をガン見しているメリーがいて、だからといって左を見たら咲がいるだよ?

 こんな美少女たちに囲まれたら無理だよ寝ることなんて!


『―――結局眠れませんでしたね、ゆーまくん』


「そりゃそうだろ……。こんな状態で寝れるやつがいたら変態でしょ……」


『ふふ……。でも―――』


 メリーは起き上がると、四つん這いになって俺に覆いかぶさってきた。

 そしてメリーは顔を近づけ、


『ゆーまくんの横顔は、とってもカッコ良かったですよ。それはもう見蕩れてしまう程に……』


「―――!?」


『動揺してますねぇ……。そんなゆーまくんの姿も可愛らしくて大好きです』


 キュウウン……って危ねぇ!

俺が恋する乙女になってしまうところだった。

落ち着け俺……。

 メリーは何時どんな攻撃をされるか分からないし、ひとつひとつの仕草に破壊力がある。

 隣に咲がスヤスヤ寝ているにも関わらず、こんな行動ができることが本当にすごいと思う。

 そんなことよりも、いち早くこの状況を打破したい!


「メリー、お願いだ。これ以上は―――」


『大丈夫ですよゆーまくん、安心してください。メリーはゆーまくんともっと触れ合いたいだけですので!』


 こんな状況で大丈夫なわけないし安心できないし!

 これ以上は俺の人格が変わって、メリーに手を出し始める羽目になってしまう。

 誰か助けてくれ――


とんっ


 そう願っていたら本当に助けが来た。

メリーの肩に誰かの手が。


「そこの幽霊さん、わたしの悠真に何してるの?」


『―――』


 あっ、メリーが固まってしまった。

メリーは後ろに誰がいるのか分かっているようだ。


「人が近くで寝ている時に、何イチャついているのかなー? それをなんていうと思う? 抜け駆けって言うのよ?」


 メリーの後ろには、口角を上げてめちゃくちゃ怖い咲がいた。

 やべー、氷花姫より怖い。

今にも怖すぎて気を失ってしまいそうだ。

 メリーも同様に咲の方を振り向かず、顔を青ざめている。


「メリー?」


『―――!』


 メリーの体がビクリと動くと、咲は一間置いて、にこやかで怖い表情で言った。


「―――この後どうなるか分かってる?」


 パタッ……。


「メリぃぃいいい!!!?」


「あらら……」


「あららじゃねぇよこれぇ!?」


 メリーが気を失ってしまった。

いやいや初めて聞いたよ!?

幽霊が気を失うとか。

どっかの有名な幽霊が出てくる童話とかでも見たことねぇよ!

あったかどうかは知らんけど!


「どうしてくれんだよ咲!」


「どうしてくれと言われても、わたしは分からないわよ」


「バカ言うな! お前が原因だからな! さっさとメリーを起こさないと」


「はぁ……仕方ないわねぇ」


 こいつ……。

こんなことになった原因なのが自分だと思ってないな。

 今日はメリーの御粧おめかしが見れると楽しみにしてたのに……。

 よし決めた、今度は咲に御粧ししてもらおう。

これは欲望とかじゃなくて、腹が立つから罰としてやらせる。はい決まりね!

別にパワハラでもセクハラでもないからな!





◇◇◇





「やっぱここよね」


『ここが咲さんの言っていたお店……』


 今いる場所、それは咲が良く利用するという衣服専門店『ビューティフル』。

俺の家から電車を使って30分かかるところにある。

 主にレディースを扱っていて、雑誌にも載るくらい全国的に人気のある店だという。

 流行に合わせて服のデザインも変えてくることから、オシャレさん達は必ずここに訪れるらしい。

 ちなみに咲もかなりのオシャレ好きだ。


「なぁ、俺みたいな男が入ったらまずくないか?」


「別にまずくないわよ。少しだけどメンズも扱ってるから男子も見かけたりするよ」


「なら良いんだけど」


 しかし、店の構えが女子ウケするようにデザインされているのがあって、やはり入りづらい。

でもメリーが流行りの服を着ているところも見たい。

 どっちを選ぶべきか……。

いや答えはひとつ、これしかない!


「よし行こう」


「急に男前の顔になったけどどうしたのよ……」


『そんなにメリーのを見たいんですか? それなら嬉しいです!』


 結局チョロい俺であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る