メリーさんは俺に憑いてる

うまチャン

第1話 メリーさん

「ただいまー」


 と言っても、自宅には誰もいない。

家の中は真っ暗だ。

 今日は12月25日。世にいうクリスマスの日だ。

普通ならケーキが置いてあったり、クリスマスツリーが飾ってあったりするんだろうけど、そんな気配があるはずもない。


「はぁ……」


 あ、申し遅れました。

わたくし、あずま 悠真ゆうまと申します。

えぇ、そこら辺にいる極々普通の男の子、高校2年生です。

 高校生と言ったら青春!

友達と馬鹿なことやって彼女作って、もうどんちゃん騒ぎで近所に大迷惑!

―――という高校生活は全くしたことないです、はい。


「さて、ゲームやりますかね」


 俺の日課はゲームをすること。

俺の部屋にはゲーム機がずらり、部屋の扉を開けて正面には立派なPCがある。

 俺かなりのゲーマーなんですよ。

小学3年生の時に結構大きい病気を患ったんだ……。

退院するまで1年かかったよ。

 病院の中って何も無いから暇つぶしは勉強するか、ゲームをひたすらやることしか無かった。


カチッ


「今日も頑張りますか」


 PCが起動完了したところで話を続けるけど、もちろん勉強をするはずもなく……。

ゲームやりまくった! はっはっはー!

 まぁ、当時携帯型ゲーム機が流行っていたからそれで遊んでいた。

レースゲームよくやってたなー。懐かしい!


「今日は大丈夫そう、だな」


 さて今と言うと普通の家庭用ゲーム機は、その時ほど使っていない。

もっと自分はどこまで行けるんだろうとか思うようになると、やっぱPCになる。

FPSを中心にやっております。

ちゃんとランキングに載ってますよ!

 でも最近PCの調子が良くない時があるんだよな……。たまにラグくなる。

まあ結構年月経ってるし、そろそろ替え時かな。


ピロピロピロピロ!


「っ!びっくりした―――」


 なんだよ!

今から俺の時間が始まると言う時にスマホから電話かよ。

思わず飛び跳ねちまったぞ。

 でも、これ未登録番号の電話なんだよな……。

怖いけど、間違い電話かもしれないし出てみるか。


「はい、どちら様ですか?」


『もしもし、 わたしメリー! 今ね日の出駅にいるんだ!』


「? 何かの間違いじゃないで―――」


『ブツッ、プー、プー、プー』


 な、何今の電話? 怖いんですけど!?

メリーって誰よ。

女の子だったな。どこかの外国人か?

でも女子の名前ってキラキラネーム多かったりするから日本人だって有り得る。

 ちなみに日の出駅というのは自宅から徒歩2分位のところにある駅。

でもまぁ、気にする必要は無いか……。


ピロピロピロピロ!


 え、また!?

しかもさっきと同じ番号だぞこれ。


「あの違いますよ」


『もしもし、あたしメリー! 今ねあなたの家の前にいるんだ!』


「は?」


『ブツッ、プー、プー、プー』


 俺の家の前にいる?

インターホン鳴らしてくれればいいのに。

 俺は2階から降り、玄関まで行く。

あー、なんか人影見たいのが見える。

知らない人の相手したくないんだけど仕方ない。

さっさと帰ってもらおう。


「どちら様ですか―――は!?」


 だ、誰もいねぇ!

あれ? 人影見えたよさっき!

えっ、なにこれ!

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!


「ん? メリー、さん――――っ!」


 そうだ、 昔の記憶で思い出した。

メリーさんっていう怪談話があった。

突然電話でいる場所を教え、どんどん自分に近づいてくる。

そして最後は自分の後ろにいて襲われる。

そんな話を聞いた。

 やばい……。それと全く同じシチュエーションだよなこれ。

って、言うことは……。


ピロピロピロピロ!


「―――――」


 俺の手が震えている。

次は俺の後ろにいることを知らせてくる。

「死」その言葉が頭をよぎった。

俺は震える手を必死に抑えながら、スマホに映っている受話器のマークを押した。

そして俺の耳にスマホを当てた。


『もしもし、わたしメリー! 今ねあなたの後ろにいるの』


「―――――」


 俺は恐る恐る後ろを見た。

そこには長い黒髪で目元が隠れて見えない、足が透き通っていて浮いている女の人が。


「―――――」


 恐怖で全く声が出ない。体も動かない。

襲われる、そして死んでしまうかもしれない。

もう無理だ。


『―――――』


 メリーさんは何もしてこない。

でも、油断した隙に襲って来るかもしれない。

 メリーさんが俺にゆっくりと近づいてくる。

あぁ、もしかしたら俺を食い散らかしてバラバラにするんだろうな……。

短い人生だったけど、悪くなかったよ。

父さん、母さん。俺2人に感謝してます。


『―――――』


 メリーさんは俺の顔に向かって手を伸ばしてくる。

俺は覚悟を決めて目を瞑った。


『―――――ん』


 なんか唇に柔らかい感触があるんだけど。

明らかにおかしいなと思ってきた。

俺はゆっくりと目を開ける。


「―――――!?」


 そこには俺にキスしてるメリーさんが。

何この状況……。

混乱しすぎて頭が回らない。


『―――――』


 や、やっと離れてくれた。

いや、ファーストキスが幽霊とか―――死亡フラグですかね?

呪いとかかけられたりしてないよね?


『あなたの名前は?』


「しゃべったぁぁああ!」


『そ、そりゃあ幽霊だって喋りますよ……』


 そんなふくれっ面されたって、誰だって驚きますよ!


「東 悠真って言います……」


『ゆーまって言うんですね』


 やばいなんか急に眠くなってきた。

頭がぼーっとする。視界もブレてきた。


『少し眠ってもらいますよ』


「なん、で?」


『あなたにはあとで話しておきたいことがあるんです』


 話ってなんだろう。

メリーさんがなんかモジモジしている。

なんか、一瞬目元が見えた気がする。

――――あ、もうダメだ。

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