A子 3
なんとかお互い時間を作り日中に2人で病院へ向かう。
小さな命の芽が写ったエコー画像を見せながら、医者は「おめでとうございます」と言った。
さすがに言葉に詰まってしまう私。
「今後のお話ですが...」と医者が話し出すがA子が遮るように言葉を重ねる
『ごめんなさい、今はどうしても産んであげられません。お願いします。』
未成年ということもあり中絶同意書には親の署名と捺印が必要だと言われた。
車内に戻った後、A子は悪びれもせず私の前で親の名前を書いて捺印をしてみせた。
『こんなの電話でもしなきゃバレないよね』
私は複雑な気持ちではあったが、本人がそれでいいのならと黙っていた。
日程を決めてその日は帰宅した。
手術は日帰りで済んだ。
数日分の飲み薬が処方されたが、初めて見る奇抜な色のカプセルで驚いた。
『すごいなぁ。ウチ、今年だけで色々経験しちゃったなぁ。ずっと家の中にいたら知ることができなかった世界だよ。』
私の≪おかげ≫であり
私の≪せい≫だとも取れる台詞だった。
『また会えるよね?』
その日の帰り際、A子は手術前よりも不安そうな顔をして私にそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます