A子 3

なんとかお互い時間を作り日中に2人で病院へ向かう。

小さな命の芽が写ったエコー画像を見せながら、医者は「おめでとうございます」と言った。


さすがに言葉に詰まってしまう私。

「今後のお話ですが...」と医者が話し出すがA子が遮るように言葉を重ねる


『ごめんなさい、今はどうしても産んであげられません。お願いします。』


未成年ということもあり中絶同意書には親の署名と捺印が必要だと言われた。

車内に戻った後、A子は悪びれもせず私の前で親の名前を書いて捺印をしてみせた。


『こんなの電話でもしなきゃバレないよね』


私は複雑な気持ちではあったが、本人がそれでいいのならと黙っていた。


日程を決めてその日は帰宅した。


手術は日帰りで済んだ。

数日分の飲み薬が処方されたが、初めて見る奇抜な色のカプセルで驚いた。


『すごいなぁ。ウチ、今年だけで色々経験しちゃったなぁ。ずっと家の中にいたら知ることができなかった世界だよ。』


私の≪おかげ≫であり

私の≪せい≫だとも取れる台詞だった。


『また会えるよね?』


その日の帰り際、A子は手術前よりも不安そうな顔をして私にそう言った。

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