迷子の女の子を家まで届けたら、玄関から出て来たのは学年一の美少女でした

楠木のある

第1話

 高校2年生の夏、蝉がうるさいくらいに鳴いている日のことだった。


 俺は今日の昼飯がないことを知り、コンビニまで弁当を買いに来た。

 自転車を漕いでるだけで、汗がタラタラとひたいから頬まで落ちてくる。


 コンビニに着いたあと、駐輪場に自転車を停めようとした時だった。

 小さい女の子がポツンと1人で立っていた。


 きっと誰かを待っているのだろう、お母さんとか・・・・・・じゃないと1人でこんなところにいたら危ないし。


 最初はそう思っていた。しかし女の子はずっとそわそわ、していて落ち着かない様子だった。


 ここのところ、なにかと物騒なので、放っておくのも自分の良心が痛んだ。


 仕方なく、女の子に声をかけることにした。しかし、こんな時にどんな風に声をかけていいのか分からなかった。


 子供の頃、母親が自分にどのように接していたかを今頑張って思い出していた。


 姿勢を低くして、その子と同じくらいの目線で喋るようにしていた気がする。

 自分も同じように姿勢を低くして、その女の子に話しかける。


「こんにちは、今一人なの?お母さんとか待ってるの?」


 小さい女の子は声をかけられた時驚いて肩をビクリと震わせていた。

 そりゃそうだろっ、と自分で反省するがこうも反応良くビックリされると、すこし傷つく。


 なにも喋らないので、ちゃんと変な人にはついて行かないって教わってるんだなぁと思いながら、お母さんを待ってるんだと自分で勝手に解決して、コンビニに入ろうとした時、服の裾を掴まれた。


「・・・・・・ま、・・・・・・とり」

「えっ?」

「いま、・・・・・・ひとり、こうえんであそんでて、かえろうとした、ひとりになっちゃった・・・・・・」


 今にも泣きそうな声で、伝えてきた。自分はお節介なのか、結局その子を家まで届けることにした。


「じゃあ、まずはバックの中に、迷子になった時とかに渡しなさいって言われてるものとかない?」

「えっと・・・・・・えっと、ない・・・・・・ごめんなさい」


 また泣きそうになっているので、「大丈夫」と言いながら、不安にさせないようにニコニコと笑う。


(しかし、なんて体力がいるんだ、小さい子と接するのに、こんなに体力を使うなんて・・・・・・)


 そんなことを考えながらまずは、スマホで一番近い公園をスマホで調べる。


「おっ、出てきた」


 小さい子は、キョトンとしていたが、手を繋ぎながら、公園まで歩いて行く。


 小さい子というのは不思議なものだ、知らない男といるのに、安全と分かったのだろうか、隣でカエルの歌を歌っている。


 小さい子のカエルの歌を3回くらい聞いたあと、一番近い公園に着いた。


「あっ・・・・・・ここ!ここであそんでた、」

「じゃあ、公園から家に帰るときの目印とかって言われてる?」

「うんっ、ここからいりぐちってかいてあるところをもどってまっすぐいくって」


 小さい子は俺の手をギュッと握りながらそう答えている。


(・・・・・・そうか、この子は入り口に戻らないで出口から出て真っ直ぐ向かってしまったんだ)


 きっと、公園で遊ぶのが楽しくて、忘れてたんだろうなぁ、と思った。


「じゃあ、きっとこのまま真っ直ぐいけば、おうちに着くよ」

「ほんとっ?!」

「うん、もちろん」


 そう言って、ご機嫌な女の子の手を引いて、また歩く。


 すると、女の子が急に走り出した。


「あった!おうち!」


 ニコニコしながら指をさして報告してくる。


「じゃあ一応、挨拶するからインターホン鳴らすよ?」


 そう言って、インターホンを鳴らすと「はーい」と言って、女の子の声が聞こえてきた。


「あっ、お姉ちゃんだ!」


 お姉ちゃん?お姉ちゃんもいるのか、少し緊張するなと思っていたら、ガチャッと玄関の扉が開いた先には、長い黒髪をサラッと靡かせる美少女が出てきた。


 ちょっと待て、、、俺はこの子を知ってる。我が校で学年一美少女と言われてる白河綾乃しらかわあやの


「お姉ちゃんー!!」


 さっきまでいた女の子ががっしりとお姉ちゃんのお腹の辺りに顔を埋めている。


「な、なにするのっ!ど、どうしたんですか?」


 やはり心配していたのだろうか、すぐに視線をこちらに向けてくる。


「あ、いや、妹さんがコンビニで迷子になってたので、えっと、家まで届けた、だけで・・・・・・本当ですっ!なにもやましいことは!」

「大丈夫ですっ!この子の表情をを見ればそんなことしてないって分かります」

「ほ、本当ですか?」


 俺は不審に思われてないようで一安心した。姉の方も妹が無事で安堵したのか、ニッコリと笑みを浮かべている。


「はい!本当ですっ!ふふっそれに君がそんなことする人じゃないことくらい知ってますから、、ね?黒田雄星くろだゆうせいくん?」


 笑いながら俺の名前を呼んだ時は不意にドキッとしてしまった。


「な、なんで俺の名前を」

「選択授業の家庭科で料理の班で一度だけ一緒になったでしょ?」

「一度だけで普通覚えるか?」

「記憶力はいい方なので」


 ドヤりながら、胸を前に出しているので、少し胸が強調されている。ラフな格好だったが、噂によればDからFのどれからしい。


「じゃ、じゃあ、俺はこれで・・・・・・」

「ちょっと待った!」


 逃げるように、帰ろうとしたとき白河に引き止められる。


「妹が迷惑かけたからさ、上がってってよ、ご飯今ちょうど作ってるからさ、ね?」

「いや、でも、」

「いいからいいから、話も聞きたいし」


 そう言って、断りきれず、流されてしまい、ご飯をご馳走になることになってしまった。

 

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