第26話 もち米と友好

 「ふははは!!」

 「出来た、出来たぞ!」


 「ユウトさん何が出来たんですか?」


 「ふふふ、ゼダン。 例のブツを」


 「かしこまりました」


 「これで世界は私のモノだ!」





 「……こ、これは!!」


 「何ですか? ユウトさん」


 「わかると思って『これは!』とか言うとるのかと思ったぞ」


 「ホントに。 キオって昔はこんな感じじゃなかったのにね」


 「皆で刈り取ったもち米を加工し乾燥させて、出来たのが白玉粉という粉です。 その白玉粉を使って、ゴマ団子を作りました。 少し冷ました方が食べやすいんですけど、どうぞ」


 「この隣のも、もち米を使った食べもの何ですか?」


 「もち米を炊いて十五分程ついて、苺を包んだ、苺大福です」




 「っ! 美味い。 なんて優しい甘さだ」


 「それにこの、もち米も良いね。 こんなに伸びるんだ~」



 「ありがたいことに、もち米は沢山あります。 大体、カフェシエルで二~三年分くらいかな? なので、その間は、田植えや稲刈りはありません」


 「含みのある言い方だな」


「え……もしかしてまた、何かするの? マスター?」


 ふふふふふふふふふふ


 「あら、『田植えや稲刈りは』だから、お米以外があるんじゃない?」


 「一つ目は魔法で定期的に収穫する必要がある様にした、赤い色の果物。 甘酸っぱくて美味しい代わりに、沢山の実がつきます。 二つ目は最初の収穫まで最低五年かかるところをこちらも魔法で、定期的に収穫出来るようにします。 甘くて美味しいオレンジ色の果物です」


 「マスター、もしかしてなんだけど、その赤い果物って苺?」


 「おお! さすがシャーノアくん!」


 「シャーノア様、ユウトさんはサラっと『定期的に収穫する』と言ってますよ」


 「ま、僕は学園があるからね!」





 「テオシウス・トルテ・ファジールの名において、『神の島』と正式に友好を結んだ事を、ここに宣言する!」


 「一年の歳月をかけて友好を築き、こちらに敵意がないこと、今後も敵意なく接する事を条件に、友好を結んだ。 『神の島』には神獣様も住まわれている。 先王陛下は既に『神の島』の城の主に許可を貰い、余生を過ごしている。 私が『神の島』で余生を過ごすにはまだ、時がある。 先王陛下が守った国を、民を、私も時が経つまで守っていきたいと思う」









「くそぉぉぉぉ!!」


「ファジールめぇぇ!!!」


 激高し手近の物を勢いよく投げつける。


「わしの、わしの、島が……」


「ドルバ皇帝……落ち着いて下さい」


「黙れぇ!」

「わしの島が奪われたのだぞ!」


「元々はドルバ皇帝の物ではなく神の物です。 正確にはドルバ皇帝が手中に収めるハズだった島です」


「貴様! わしに歯向かう気か」


「事実を述べただけです」


「奪われたのではなく、手中に収めるハズだった島を横取りされたのです」


「何が言いたい、リヴィア」


「お暇を頂きたく……」








 「父上の功績を横取りした気分だ……」


 「失礼します。 トルパーダでございます。 先王陛下より言伝を預かってきました」


 「父上か!」



 『たまには休んだらどうだ?』



 「………たまには休暇を取るのも悪くない……か」


 「宰相、休暇は取れるか?」


 「再来月までは埋まってます」

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