第2話 死後、神様と

 耳元で風の音が聞こえる。

 落ちている。

 物凄く速く落ちている。

 どこまで落ちるのかはわからない。

 瞼を開けると真っ暗だ。

 本当に瞼を開けたのか、一瞬わからないほどに。


 漆黒の黒ーー


 それ以上の表現が出来ない程の黒。



 『君はどうしたい?』


 頭に響く様な誰かの声が聞こえる。

 夢でも幻でもいい……僕は……




 「やり直したい」







 『ようこそ。 アリディーテアの天界へ、名も無き魂よ』


 暗闇を落ちていたハズなのに、声が聞こえた後の瞬きで、場所が変わっていた。

 目の前には、目鼻がなく口だけの人型の何か。



 後光が凄い。


 『君には選択肢が3つある』


 『1つ目、このまま地獄に行く』


 ん?


 『2つ目、魂の消滅』


 んん?


 『3つ目、異世界転生』



 『「……」』



 「いや、選択の余地なし!!」




 僕の異世界転生が、決定した。



 『異世界転生したいのかい?』


 「はい、出来れば人生をやり直したいです」


 『君はどんな人生を送って来たんだい?』


 そう聞かれ、僕はかくかくしかじかと話をする。






 『よし、君の称号欄に〈底辺を生きた者〉と付けよう!』


 「何その残念な人……」


 『君だろ?』


 そうですね。


 『後は、容姿・年齢・名前・適正魔法・スキル・固有スキル・所持金……だね』



 え? 魔法? スキル? なにそれ?!


 『何って、これから君が転生する為の必要事項だよ』


 あれ? 声出てたっけ……


 『思い浮かべた事もわかるのだよ、神様だからね。 何でもありだよ』


 はい、神様でした。 しかも筒抜け!


「何でも良いんですかね……?」


 『ドンと来なさい』


 「では、僕視点では全てVRゲーム仕様で。 容姿は、普通で。 年齢は12歳。 適正魔法は全て。 スキルは役立つものを全て取得可能に。 鑑定とアイテムボックスは初期スキルで。 固有スキルって何ですか?」


 『固有スキルとは、個人個人の個別に授けられた万人が得られるスキルではない、スキルだよ』


 「つまり、人それぞれという事か…」

 「じゃ、可能なら不老不死でお願いします。 所持金は、可能な額で」


 『他にはないかな? 希望があれば「あります!」ほほう』


 「収納可能で割と広めな持ち家が欲しいです。 誰にも縛られないスローライフがしたいので!」


 『よし、じゃ第2の人生を楽しんで』


 それだけ言うと、神様は手を振って上に消える。

 いや、僕が消えたのかな…。



 下に。




 情報の波が視界の先から、押し寄せてくる。

 まるで、人生を振り返るかのようなその情報に、目頭が熱くなった。


 父はどう過ごしてるだろうか。

 何もしないで過ごしてる僕がいなくなって、清々してるだろうか。

 それとも、自分の子供だから泣いてくれたのだろうか。

 今となっては知る術もないが、父には迷惑をかけてきた罪悪感がある。

 せめて、父の未来がいい方向へ行く事を願うしかない。



 「僕、次はちゃんと生きるよ」



 情報の波が終わり、白い光が近づいて来る。 

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