【完結済】暮れ六つの絞殺~あなたにこのトリックが見破れますか?~
久坂裕介
事件編
第一話
俺は目をつむり、両手を固く
「俺に全てかかっていると言っても
そして
「よし、気合、入れるか!」と両手で
●
それから俺は
「あれ?」と左手もかけて引き、やっと開けた。
中に入ると店員の
「いらっしゃいませ!
奈緒は客に対応する時はしっかりと、目を見た。それが目当てでくる客もいた。
そして奈緒は黄色地に花柄の
俺は
「やあ、奈緒ちゃん」と返した後、奥にいる背の高い女主人のおこんに、文句を言った。
「やい、おこん! 入り口の引き戸が固いぞ、どうなってんだ!」
おこんは青の着物を着て、たすき
「何、言ってんだい! そんなこと私に言ってもしょうがないだろ!
それにいきなり何、余計なことを言ってんだい!」
俺は少し考えた後、小声で答えた。
「それもそうだな……、悪いな」
そして注文した。
「ええと、取りあえず酒一合と
すると奈緒は
「はーい。おこんさん、煮しめと、まぐろの刺身をお願いします」と伝えて、おこんは「はいよ!」と答えた。
つまり俺の『可愛いね』は、無視された。だが俺は、くじけなかった。次こそは奈緒ちゃんを笑顔にしようと、決意した。
豊島屋は入り口から見ると左側に、客に酒と
横長の台の奥では、おこんが肴を調理し、奈緒が酒や肴を客に出していた。
更に食器等が置いてある
また入り口から見て右側には、四枚の
更に入り口から真っすぐ行った奥には
江戸時代は居酒屋に女主人や、女性の店員がいることは珍しかった。
俺は、おこんに言い放った。
「しかし、いとこなのに全然似ていないなあ。奈緒ちゃんは目がぱっちりしてて、こんなにかわいいのに、お前は目が細いもんなあ。
やい、おこん! お前、『どうしても居酒屋をやりたい。奈緒ちゃん、手伝ってくれない?』って言って奈緒ちゃんに手伝ってもらっているんだろ? ちゃんと奈緒ちゃんに感謝しろよ!」
すると、おこんは
「うるさいよ! それに今日も奈緒ちゃん
●
岡っ引きは江戸時代の
●
俺が「不良岡っ引きは
「ええ、まあ。今日もご
ま、またしても流された……。だが今度こそと、俺はくじけなかった。
俺は上半身に
「まあ、いいや」と呟いて俺は、おこんに
「仕事なら、ちゃんとしてるって。江戸には北町奉行所と南町奉行所があるけど、俺が所属している南町奉行所管内で起きた事件、知っているだろ? あれ、今日、
「ああ、あの
「ああ、同心の
すると怪しい奴が二人出てきた。男と女、一人づつな。男の方は背も高い、がっしりした体格の奴で、女の方は
おこんは興味を持ったようで、話を
「うん、それで?」
「うん、それで板崎の親分は考えた。主人は首を
それでもなお首を絞めて殺すなんて、力のある男にしかできない、か弱い女には無理だってな。
それで男の方を問い詰めると『自分がやった』と白状したんだ」
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