第14話 エロい男のキス

「佐藤、マジやばかったな、さっきのケンケン。アイツ普段真顔だから、笑うとギャップすごいし。

しかもメロメロって言った時、魔性だった。」


タクミが僕に話しかけてくるのを聞き流しながら、思わず口から言葉がこぼれ落ちていた。


「漆原のキスは何か記憶に残るって言うか、凄い熱くなっちゃうんだよ。

僕、今でも時々思い出すくらいだし。ま、漆原本人は全く反応しないけど。

多分、僕たちが思うより百戦錬磨だと思う。」


「百戦錬磨⁉︎うわー、今日、田中倒れちゃうんじゃ無いの?ところで、どこでやるって?」

タクミは興奮した様にはしゃいだ後、急にトーンを落として聞いてきた。


「いや、僕も聞いてない。放課後ここで待ち合わせしてるみたいだったけどね。」


皆がソワソワと面白がって、あるいは何かを期待して、興奮した様に話していた。

僕は漆原にリストを渡した事を、何となく後悔していた。


*************


「ここ、入って。あ、和也。悪いね、付き合わせちゃって。彼、田中。

えーっと、あっちに和也が居るから、キス以上の不埒な事しようとしないでね。基本僕がリードだから。」


僕は色々考えた結果、寮の相部屋に連れ込むことにした。

相部屋の和也が在室してくれれば、二人きりの密室にはならないし、僕にとっては安全になる。


和也とはもうキスしたから、覗いてくることもないだろうし。

ていうか、そもそもアイツは覗くようなタイプじゃない気がする。


目の前の田中翔太は、真面目すぎず、チャラ過ぎず、ちょっと面白い事が好きそうな普通の高校生に見える。

和也が選んだ後腐れも無いタイプらしいから、こっちも安心だ。


しかし、ムードもへったくれもないな。どうやってスタートするんだコレ。


「田中はどうして僕とキスしようとか思った訳?」


僕は田中をデスクに座らせて聞いた。田中は心なしか、顔を赤らめて、言った。


「オレ、漆原の顔タイプだから。」


「ふうん。いくらタイプだからって、僕男なのに。」


僕はニヤリと笑い、田中の顎を指で掴むとゆっくりと唇を重ねた。


正直僕はこのキスレクチャーを楽しみ始めていた。男たちを思い通りにする事も達成感があったし。こっちの安全も保証されてて、急に襲われる事を考えなくて良くなって、キスが嫌いじゃなければいい事づくめだ。


こっちは帰国子女で軽いキスは挨拶で、まぁボーイフレンドと深いキスは楽しんだ方だしね。

そう考えながら、田中とのキスを楽しんだ。


田中は佐藤や、和也と違って随分敏感に反応するので、攻める甲斐がある男だった。

キスが終わった後もしばらくうっとりと呆けているので、ちょっと可愛いなと思った。


「結構楽しかったよ。」


そう言いながら、部屋を出る田中の指先を持ち上げて上目遣いで甘噛みした。


ちょっと屈みながら田中が部屋を出て行った後に、和也がジト目で言った。


「お前、嫌々やってるとは思えない程ノリノリだな。まったく。」


調子に乗ってたなと反省したけど後の祭りだったかな?


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