第7話 佐藤に聞く

放課後教室で待ってると、選択授業を終えた佐藤が席に戻ってきた。


「ごめん。ここじゃ内容がアレだから別のところ行こう。どこがイイかな?」


「…だったら僕の寮室来る?同室の奴、部活で遅いからゆっくり話出来ると思うよ。」


「マジで?じゃあ、何か飲み物買って行こ?奢る。」

佐藤のいつも通りの柔らかな態度に僕は少々油断してたと言わざるを得ない。


僕はもう少し、この爛れた学校のリアルを胸に留めておくべきだったんだろう。



佐藤の相部屋はそこそこ片付いていて、水回りを挟んだ佐藤コーナーはもっと

スッキリと居心地が良かった。


ベッド周りもホテルの様なキッチリ感で、案外この男子は潔癖で、見かけより中身が違うかもしれないなと考えていた。



佐藤はデスクチェアに座ると、僕は当然の様にベッドに座ることになる訳で。

まぁこのベッドは良い香りがするし、いわゆる男子高校生のホルモン臭の漂う

様な座るのに躊躇するベッドでなかったのでホッとした。


「で?聞きたい事って?」


佐藤は炭酸を飲みながら、こちらに流し目を送ってきた。


僕は少々気まずい思いで思い切って切り出した。


「僕、去年しばらく病欠してたし、あまり周囲と交流してなかったからこの学校の事情とかに疎いんだけどさ、昼に何か怖い事言ってたじゃん?

何かウケとかセメとか、色々。あれってみんなが皆そうじゃ無いよね?」


「…んー、どう思う?去年ケンケンは取り付く島もない不遜な態度だったから、多分皆も遠目に見てたんだと思うんだけど。

でも結構目立つ方だし注目はされてたよね。

ちなみに僕はゲイでは無いかな?


トモなんかすっかりウケにハマって、ほぼゲイに移行してる感じだけど。

僕はどっちかというと、ノンケ寄りの環境的バイという感じ。女の子が側に居ないから時々身体だけ肉欲解消的な?


今のケンケンはちょっと隙があるというか、今も僕の部屋のベッドに座って無防備だしね。

きっとこれから色々狙われると思うよ。」


僕はベッドに座ってる身体が硬直したのを感じた。

ああっそうじゃん。やばい。密室2人きりだよ!僕は焦って、縋る様に佐藤を見て言った。


「佐藤は嫌がる相手に無理矢理とかは無いよね…?」


佐藤はにっこり笑うと立ち上がりながら言い放った。


「もちろん無理矢理とかは趣味じゃないよ。楽しくないし。

でも同意を取るのは得意な方なんだよね。」


そう言うとスルリと僕の隣に座りながら僕の顎を掴んで唇を合わせてきた。


佐藤の柔らかな唇が、自分の唇にゆっくりと押し付けられたかと思う間もなく、強めに押し付けられて、ちゅっと吸われたのを感じた。

僕は余りの早技に呆然として結構間抜けな顔をしてたんだろう。


「どう?嫌な感じがしないなら、ケンケンは男もいけるんだと思うけど。というか、そんな顔してたら襲われちゃうと思うよ?」



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