第6話 彼らの事情

爛れたこの学校の内情を聞いてしまった僕は、ちんたま君がもはや身を守るスベにならないと悟った。


男に襲われるかもしれないという漠然とした不安。

いやいや、まさかいきなり襲っては来ないよね?ていうか僕は女だからこの場合どうなるんだろう。

襲ったら女だったから無事に逃してもらえるとか?


おうあ、どっちも詰む!僕は昨日からぐるぐると考えすぎて頭が痛い…。



考えるより事情通に聞いた方がいいのかもしれないと思い始めた僕は、隣の席に丁度いい相手がいることに気づいた。

佐藤だ。佐藤はウケとかセメとか自分がどちらかとは言ってなかった。


聞くとしたらどっちの人に聞くのが正解なのかなぁと、僕は考えすぎてもう訳がわからなくなってた。

そして疲れた僕はやっぱり手近な佐藤に聞くことにしたんだ。



「…佐藤、聞きたいことがあるんだけど。時間作ってくれないかな?」

佐藤はこちらをチラッと見て、ちょっと考えた後言った。


「イイよ、僕は今日でもいいけど。じゃあ、授業終わったら教室で待ってて。」

お、佐藤良いやつじゃん!僕は嬉しくなってにっこり笑うと手を振って教室を移動した。



「おい、ケンケンあんな顔するんだな。あいつって男に興味ないと思ってたけど。あいつの事、味見したわけ?」

「いや、まだ。これから仕掛けるから邪魔すんなよ。お前、あいつはタイプじゃないだろ?」


僕は話しかけてきたタクミを牽制した。

タクミはロン毛で長身のまさに肉食系の男だ。

ま、女の方が好きだろうけど、場合によっては男もというタイプ。


僕も別にゲイではない。ただこの学校は全寮制の男子校なので場合によってはお互いに慰め合うというだけだ。

見目は良い方らしいから、案外お誘いは来るけどね。


僕とタクミは選択授業が一緒なので、並んで歩いて行った。

「裕はさ、自分から行く事ないってトモが話してたの聞いたけど、今回は自分から行くんだ?

どんな心境の変化な訳?ケンケンてそんないい感じなの?」


「…そうだな。あいつ去年の評判聞いても最悪でさ、確かに最初の頃は愛想も無いし、僕のことなんて眼中にもない感じだったわけ。


でも最近、ちょっとワンコっぽいっていうか、話しかけるとしっぽ振ってくるっていうか、でもそれを必死で隠そうとしてるのが気になるというか。

本当のところはどこにあるのかなって興味湧いたわけ。」


「へー。あいつが去年から一目置かれてるのも理由があるわけか。何かわかったら俺にも教えてよ。」

タクミはケラケラ笑いながら、でも目が鋭く光った事に僕は気が付かなかった。



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