第83話 終結 そして……
街へと向かった2体のメフィストの反応が消えた事を確認した後、俺はエドワードの元に向かうため、中庭へと通じる廊下を走る。
移動中、何度かの衝撃音が響く中、中庭に到着した俺は唖然とした。
何故ならば、そこには四肢を切られ、虫の息となって転がっているメフィストに聖剣を突きつけている無傷のエドワードの姿があったからだ。
俺が唖然としていると、こちらに気づいたエドワードが、笑顔で話しかけてくる。
「やあケイタ!その様子だと街のほうはもう、大丈夫みたいだね!」
「ああ、お前の方こそ楽勝みたいだった様だな?」
「そんな事ないよ。途中で聖剣を解放したし、色々と話を聞きたかったけどやり過ぎちゃってさぁ、この通り喋る事が出来ないくらい虫の息なんだよねぇ」
エドワードは「やっちゃった!」と言う表情をしながら呟く。俺はメフィストを見ながらエドワードにある提案をする。
「それなら俺に任せてくれないか。魔法でコイツの頭に直接きいてみるからさ!」
俺が使える魔法の中に、ナ○トに出てくるペ○ンの様に、頭の中を調べる事の出来る魔法があるのだ!
俺が提案すると、エドワードは驚いた表情をしながら
「へぇー、ケイタってそんな事もできるんだねー!うん、分かった!お願いするよ」
と言って、メフィストに向けている聖剣を鞘に戻す。
「まかせてくれ!」
そう言って俺はメフィストに近づき、その頭を掴むと精神魔法を使い、メフィストの頭の中にある情報を読み解く。
「・・・・・よし」
しばらくして、メフィストの記憶を読みとった俺はエドワードに向かって、メフィストから得た情報を伝える。
「残念だけど、エドワードの父親を殺した奴の情報はコイツに無かったよ」
と言う。するとエドワードは悔しげな表情をしながら
「そうか……」
と、小さく呟く。
「でも、ほかの魔族に関しての情報は手に入ったから、もしかしたらその中にエドワードの敵がいるかも知れないよ」
「本当かい!」
「ああ、確率は低いけどゼロじゃないと思うよ」
と、俺はエドワードを励ます。
(まぁ、エドワードが探してる魔族がどいつなのか俺は知ってるんだけどね)
そう、既にエドワードのが探してる魔族について、アザゼルから教えてもらった俺はエドワードに少し申し訳ないと思った。
俺がそう思っていると、エドワードが笑みを浮かべながら
「ありがとうケイタ!」
と、感謝の言葉を俺に伝える。
「ハウッ!!」
まさにエンジェルスマイルと言うべきエドワードの笑みを見て、俺は思わず胸を押さえながら変な声が出てしまった。
(やばい!これはやばい!なんつー破壊力だよ!!イケメンのスマイルにキャーキャーする女子の気持ちが少し分かった気がするよ全く!!)
俺は心の中でそう思いながら、エドワードにメフィストに止めを刺すかどうか聞く。
「それじゃあコイツを始末しちゃっていいか?」
「うん。どうやらコイツは僕の獲物じゃなかったみたいだし、後はケイタに任せるよ!僕はこれから色々とやらなくちゃいけない事が多いから、先に行ってるね!」
と言って、エドワードは城の中へと向かう。
俺はそんなエドワードに一言
「分かった」
グサ!
と言って、虫の息のメフィストの頭にペティナイフを突き立て息の根を止める。
崩れ去る肉体を見ながら俺はスキル「蒐集図鑑」を開き、アザゼルのページ付近を調べる。すると、予想通りアザゼルの隣にメフィストと書かれたページが増えていたのを確認すると
「まぁ、メフィストに関しては後でアザゼルと同じように軍曹式矯正トレーニングをするとして、問題はこっちだよなぁ……
と言って俺は、図鑑を仕舞いながらアイテムボックスから箱を取り出す。
「取り敢えず明日、女神のとこに行って聞いてみらとするか!」
俺は箱をアイテムボックスに戻す。
すると、腹からグゥ〜〜!!と言う音が連続して鳴ったので
「屋敷に戻って夕飯を作るとするか!!」
俺はスキル「転移」を使って剣爵邸へと戻ると、作り置きしていたカレーとうどんでカレーうどんを作って食べた。
けれど、美味しいはずの食事なのにも関わらず、なぜか普段よりも味が落ちてる感じがしたのだった。
**************
翌日
俺はエドワードに昨日、あれからどうなったのかを聞いた結果、色々と事件の全容が見えて来た。
エドワードが言うには、事の発端はヴェルダン帝国がソラリア王国に対して侵略をする為に、ソラリア王国と因縁のあるウステム蕃国を無理矢理協力させたそうだ。
具体的には、ウステム蕃国が封印して来た「怨霊箱」の使用や兵量や物資の確保など、あくまで帝国のサポート役としての協力だったそうだ。そして、肝心の蕃国の王子に関してだが、メフィストが王子を使って受肉したのは全くの偶然だとわかり俺は確信した。
今回の事件を裏で操っている魔族は、ヴェルダン帝国にいると!それも、かなり位の高い者か、下手したら皇帝の可能性があると見て間違い無いだろう。
今後の方針について、取り敢えず女神に聞く事にした俺は、しばらく王都に滞在する事を決めた。
理由はいくつかある。
一つ目は卵になったカーラが、未だに出てこない事だ!流石に1メートル以上ある卵を持って旅はしたく無いし、何かあった時に対処が遅れる可能性があるからだ。
二つ目はエドワードの事だ。
なんだかんだ言って、エドワードの家には結構お世話になっているので、俺はエドワードに恩を返す事にした!
〜昼下がり〜
昼食を食べ終え、服を着替えた俺はエドワードとエドワードの母親であるミーナさんを中庭に呼ぶ。もちろんエドワードにも、いつでも全力で戦えるように、騎士団服と二振りの聖剣を持ってきて貰った。
俺が中庭で儀式のための魔法陣などを用意しているとエドワードが不思議そうな表情をしながら
「どうしたんだケイタ?なんだか物々しい雰囲気だけど?」
と、聞いてきたので俺は真面目な顔でエドワードに質問する。
「なぁエドワード。お前、エディアス婦人を助けたいよな?」
「もちろんだよケイタ!!」
即答するエドワードに俺はさらに質問する。
「ならエドワード。父親の敵討ちと婦人の解呪、お前のはどっちを選ぶ?」
俺の質問に対してエドワードは
「どうゆう事かなケイタ?意味が分からないんだけど?」
と、質問を質問で返してきた。
当たり前だ!圭太ですら、最初はサマエルを倒せば婦人にかかった“老生の呪い”を解けると思っていたのだから……けれど教会に行った時、女神からこの“老生の呪い”を解呪する為には、呪いをかけたサマエルの主人である嫉妬の魔王を倒すか、圭太のスキルで解呪するしか方法が無いと教えてくれた。
つまり、サマエルを倒しても父親の敵討ちはできても婦人の解呪は出来ないと言う事になる。それなら両方叶えてやれば、と言うかも知れないが、圭太がエドワードに感じている恩は屋敷に泊めて貰っているという一つだけだ!つまり、圭太がエドワードの叶えられる願いはひとつだけと言う事になる。
「恩には恩で報いる」これは圭太にとって絶対の決まり事で、一つの恩には一つの感謝をすると言うのが圭太のポリシーなのだ!
だから圭太はエドワードに選ばせる!
婦人にかかっている呪いを頼りに、父親の敵討ちであるサマエルを呼び出して戦うか、父親の敵討ちを忘れて、母親の呪いを解呪させるのかを……
「言葉通りの意味だよエドワード。父親と母親、エドワードはどっちを選ぶのかって聞いているんだよ」
「そんなの選べないよケイタ!」
迷っているエドワードに俺は無表情で
「早くしてくれエドワード」
と急かす。
するとエドワードは一度、ミーナさんと目線を合わせた後、黙り込んだまま俯いてしまった。
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