第52話 前半 誤解だー!


王城にて国王からエドワードの協力を頼まれた俺は、5日後の晩餐会に参加する事を条件にエドワードの復讐を手伝う事を約束した。

そして俺とカーラは今、馬車に揺られてエドワードの家である剣爵邸へとむかっていた。


◆◇◆◇◆◇◆


〜馬車の中〜


「なあエドワード、国王との約束だから俺はお前に協力するけど、城で言ってた通り騎士団を本当に辞めるのか?」


俺がエドワードに質問するとエドワードは


「うん。流石に国王陛下の誕生祭が終わるまでは辞める訳には行かないけど、誕生祭が終わり次第すぐにでも辞めるつもりだよ!」


「ちなみにその事をお前の母親は知っているのか?」


「ギクッ!」


俺がそう聞くと、エドワードは明らかに動揺した様子で


「い、いや、実はまだ話してはいないんだよ。母にはあんまり心配かけたく無いし、それに多分反対されるだろうから……」


「はぁー、まぁそうじゃ無いかと思ったけどさ!あっ!お前、もしかして俺に母親を説得しろなんて言うんじゃ無いだろうな?」


するとエドワードはあからさまに目を逸らしながら


「……バレた?」


「お前と出会ってから数時間しか経って無いけど、本当にお前が『剣聖』なのか疑わしくなって来たぞ!」


俺がそう言うとエドワードは笑いながら


「あはは、安心して、ちゃんと『剣聖』だよ!」


と言って肩を叩いて来たので俺は


「んな事、分かってるわ!!」


ベシッ!


逆にエドワードの頭に思いっきりチョップをかました。


するとエドワードは痛そうに頭を撫でながら


「いたたたた、ちょっとケイタ!痛いじゃ無いか!」


「うるせー!あのぐらいでお前がダメージを受ける訳ないだろうが!」


「そんな事ないよ、少しは痛かったからね」


俺は呆れながら


「あっそ!……つーか、それよりまだ着かないのか?」


「そろそろ到着するよ。っと、噂をすれば屋敷が見えて来たよ」


エドワードがそう言うので、俺は窓の外をみる。すると目の前に、テッサリアの街の領主であるバスタード伯爵家の屋敷よりもさらに凄い豪邸が建っていた。


「えーと、エドワード。本当にあの屋敷なのか?」


俺の質問にエドワードは


「えっ?うん、そうだよ。あの屋敷は先代『剣聖』である父が母と結婚する時に、祖父から与えられたんだよ」


と、飄々とした口調で答える。


「マジですか……」


俺は『剣聖』と言う称号がどれだけの価値を持っているのかを改めて認識した。



*******


屋敷に到着すると、俺は寝ているカーラを起こしてからエドワードと一緒に屋敷なら入る。


「ケイタ、カーラちゃん。どうぞ入って!」


「お邪魔します」


『おじゃましまーす』


俺たちが中に入ると数人のメイドと執事が挨拶をして来た。


「「「「いらっしゃいませ」」」」


どうやらエドワードが事前に俺たちがくる事を連絡していたようだ。


慣れない事でオドオドしていた俺とカーラをよそに、エドワードは笑いながら


「あはは、もしかしてケイタ、緊張してるのかな?」


わざとらしい笑みを浮かべるエドワードに対して俺は心の中で


(このヤロー!分かってて言ってやがるな!!ゼッテー後で泣かしてやる!)


と心に決めた。

すると、どこからかヒールのような足音が聞こえて来た。


コト、コト、コト


その足音を聞いた執事やメイド、そしてエドワード含め、その場にいた俺とカーラ以外の全員が階段の方へと視線を向けていたので、俺も階段の方へと視線を向ける。すると、2階から深い青色ネイビーブルーの髪に真紅の瞳をした、見た目が30代の女性が階段を降りて来て


「お帰りなさいエド。あら?そちらの方々が連絡にあったエドのお友達かしら?」


女性がそう聞くと、エドワードは少し緊張した様子で


「はい母上、ご紹介します。親友のケイタとカーラちゃんです」


俺はエドワードが言い終わると、一歩前に出て、右手を胸に当てながら


「お初にお目にかかりますエディアス夫人。私は冒険者のケイタと申します。こっちは同じく冒険者のカーラです。どうぞお見知り置きを」


俺が自己紹介をすると、夫人は笑みを浮かべながら


「そんなに畏まらなくていいわよ。当主であるエドの友人ならば、我が家にとって最上級のお客人なのですから」


そう言って笑う夫人を見て俺は思った。


(若!!!どう見ても、もうじき60になる人じゃないでしょ!!なにあの肌?この世界のアンチエイジングの技術は地球よりも進歩してるのかな?いや、そんな訳無いだろうし………分かったぞ!!きっと石仮面でも被ったんだ!!って、そんな訳無いだろ!!)


心の中でノリツッコミをしていると夫人が


「ごめんなさいね。わたくしはこれから明日まで出掛けなければならない用事があって、ゆっくりとお話は出来ないけど、どうぞくつろいで行ってね」


そう言うと、夫人は数人のメイドと一緒に部屋に入っていった。


「ごめんねケイタ」


「気にしなくていいよエドワード」


「ケイタなら、そう言ってくれると思ってたよ。それじゃあこっちに来て」


「ああ、行くよカーラ」


『はいご主人様』


俺とカーラはエドワードに連れられて、2階にある部屋に通された。


「王都に滞在中はこの部屋を使ってくれケイタ。一応、カーラちゃんにも部屋を用意してあるけど……」


『カーラはずっとご主人様と一緒に居ます!!』


「ちょっ!カーラ!」


「あはは、カーラちゃんはケイタの事が大好きなんだね!」


「茶化すなよエドワード。別に俺とカーラはそんなんじゃ無いよ」


「分かってるよそんな事。それじゃあ夕飯になったら呼びにくるから、それまでゆっくりしててくれ」


そう言ってエドワードは部屋から出ていった。エドワードが部屋から出た後、俺は軽くひと眠りをするためベットに入る。


「ふぁあああ、おやすみ……」


*******


数十間後


「ん〜ん、なんだ?」


突然の胸の苦しみで目が覚めた俺は、目を掻きながら胸の方を見る。


するとそこには、可愛らしい寝息をたてながらスヤスヤと眠っているカーラがいた。


「っ!カーラ!お前かよ」


俺が起きた事でカーラも目が覚めたのか、ゆっくりと目をあけながら


『う、う〜ん。おはようございます、ご主人様〜』


と、幼い見た目とは裏腹にどこか艶っぽい声を出しながらトロッとした目で俺を見つめる。


「ほら!重いから早く退いてくれ!」


俺がカーラを退かそうとしたその瞬間


コンコン!!


「失礼するよケイタ!夕飯のよういが出来てえっ?!……」


「あっ!」


エドワードが部屋に入ってきた。

そして、ベットでねている俺と目が合い、その後ゆっくりと俺の上にいるカーラを確認したあと


「ご、ごめんケイタ。ごゆっくり」


バタン!


そう言ってゆっくりと扉を閉めた。


数秒して、事態を飲み込めた俺は叫ぶ


「エドワード、誤解だーーーーーー!!!!」

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