日記(高校生編⑥)

▽▽月■■日

生まれてきた中で最悪の目覚めだ。

なんせ来てほしくない朝が来てしまったのだから。

僕はゆっくりと起き上がり、身支度を始める。休もうかとも考えた。

小中高と一度も休まなかった男がいきなり休んだら親はどう思うだろう。

友達はどう思うだろう。あの子はどうも思わないだろう。

いつものように家を出て、学校に向かう。馴染みの通学路がいつもより短く感じた。

学校につきあの子の上靴を横目で見ながら自分の靴を履き替える。

教室に入り、席に座る。

スマホに目を向けると、画面には1件の通知が僕を昨日から待っていた。

覚悟を決めて見ようか。もし予想通りだったら僕はどうなってしまうんだろう。

泣くんだろうか。はたまた笑うだけの人形になってしまうのか。

もう少しであの子が来る時間だ。

僕の手は気持ちとは裏腹にスマホをタップした。

「あんまりいいたくないんだけど.....あの子の好きな人年上で女の人なんだよね。

 もしあの子の事が好きならいい感じで進んでるっぽいからそっとしてほしい。」

僕は理解ができなかった。

いや、頭が理解しようとするが追いついていなかったのかもしれない。

僕は生まれて初めて早退した。親からは声をかけられたが、内容は覚えていない。

頭が他の情報を入れようとはしなかった。

「あの子の好きな人は年上で女の人」

誰が予想したのだろうか。少なくとも僕はそんなことは一ミリも考えてはいなかった。あの子はどう思って一緒に夕食を食べたのだろう。

「私の好きな人、女の人なんだけどな。」とでも思って夕食を食べ、一緒に帰り公園で告白されたのか。

頭の中であの子が僕に向かってほほ笑む。

僕は泣いた一日中泣いた次の日も泣いた学校は休んだ休んで泣いた泣いた泣いた。

僕は結果が原因で泣いたんじゃない。あの子の好きな人が年上の男じゃなくて泣いたのでもない。かといって女の人だから泣いていたのでもない。僕は恋というものは男女関係なく好きという気持ちがあれば成立するものだと思っている。

ただ気づいてしまったのだ僕に勝機はゼロ、この先何十年とあの子を想っていても僕の事を好きな人はおろか恋愛対象にも入ることはないのだ。



▼▼月◎◎日

卒業式が終わり校門から卒業生が一斉に外へ出る。

写真を撮ったり泣きあったり後輩から色紙をもらっているやつもいる。

あの子も友達と泣いていた。「卒業してもまた会おうね。」なんて言いながら。

みんなの気持ちも落ち着き始め、それぞれの帰路につこうとしているとき。

僕はあの子を呼び止めた。

「たとえ君が誰を好きでいようと僕の気持ちはずっと変わりません。

 もしかしたら迷惑かもしれない。けど、言わせてください。」

「僕は君の事が好きです。君の事をずっと好きでもいいですか?」

僕の恋は桜の様に高く高く舞い上がった。

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