異世界転生の物語を描き続けたら、異世界の魔物達が飛び出してきた件

@noberu

第1話 異世界

「サヤァー!!死ぬな!!」


あまりにも美しく、あまりに白い彼女の肌がどんどん白くなっていく。


僕は冷たくなる彼女を腕で抱えながら、涙をこぼした。


「私は大丈夫です。健太、貴方は私に囚われたダメよ。ちゃんと前を見てください」


サヤは浅い呼吸を繰り返している。


彼女は話すのも辛いはずなのに、僕なんかに励ましをくれた。


彼女はどこまでいっても優しい。


彼女はどこまでいっても僕のことをわかっている。


彼女はどこに行ってしまうんだろうか。


僕の悲しみが予期する場所に行って欲しくない。


そして、サヤは大きな瞳をゆっくり閉じた。


僕は、抱えていたサヤをゆっくり横にし、前を向いた。


そう、こいつのせいでこんなことになったんだ。


目の前にいたのは大きな剣を持った魔物。


今まで戦ってきた魔物とは違う。


圧倒的に強く、何か得体の知れない怖さを感じる。


僕はサヤが残した剣を手にした。


この剣は目の前の魔物によって折られてしまった。


でも、サヤの仇を討たないと。


この剣でこいつを倒さないと。


僕は思いっきり強く剣を握った。


この剣でこいつを斬る。


「このクソ野郎が!!」


僕は剣を大きく振り上げた。



僕の名前は神文健太。


元々はどこにでもいる普通の高校生だ。


何故、僕が魔物と戦う勇者になったかと言うと、僕の創造力が爆発したからだ。


僕は中学2年の夏から異世界転生モノのライトノベルを執筆している。


正直言って、僕の人生は今のところあまりパッとしない。


でも、唯一の救いはこんな人生の初期で本当に好きだと思えることに出会えたことだ。


僕は物語を考えるのが好きだ。


物語を書いたことのある人ならわかると思うが、頭の中で勝手に登場人物が動き出し、気がつくと文章は完成し、何時間も過ぎさってたときの気持ち良さは格別だ。


しかし、今の自分の人生に全く不満がないかというと嘘になる。


僕は本当に女の子に縁がない。


そう、全くと言っていいぐらいモテないのだ。


今高校生2年生の僕は、嫌でも女の子に興味を持ってしまう時期らしい。


親戚のおじさんが教えてくれた。


確かに、おじさんの言う通りだ。


彼女を作ろうと頑張ったことはないが、今執筆中のライトノベルにはちゃんと胸の大きなヒロインは出てくるし、その子との恋愛シーンを書くときはすぐにフロー状態に入れる。


まあ、控えめに言っても僕は女の子に興味はありありだ。


えっ?今どんなライトノベルを書いているかって?


タイトルは「異世界に転生したら、美少女と魔物を倒しに行くことになった件」だ。


この美少女がさっき紹介したヒロインで巨乳のサヤだ。


あらすじを簡単に説明すると、さえない高校生の主人公が電車を寝過ごすと知らない駅に着く。


そこで降りると異世界が広がっていた。


その駅で美少女のサヤと出逢い、彼女に魔物を倒しに行くようにお願いされる。


しかし、主人公はなかなか現実が受け入れられず、魔物を倒す気になれないでいる。


そんな時、駅の外から人の叫び声が聞こえる。


そう、サヤの言ってた魔物に襲われているんだ。


サヤが胸を突き出すと、溝打ちのあたりから刀の柄のような部分が飛び出した。


「早く、この剣を抜いて!」


サヤは叫んだ。


僕はサヤの身体から出ている柄を強く握り、一気に抜いた。


「あんっ」


サヤの可愛い声が溢れる。


僕は一瞬、恥ずかしくなったが、その剣で魔物を切り裂いた。


と、まあこんな感じで始まる物語を書いている。


しかし、ある日の授業中、僕は居眠りから目を覚ますと、ビックバンクラスのとんでもないことが僕に起きた。

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