-o-o- 12
僕が頭を抱えている間に、部室の雰囲気が一変していた。
「
「崖……」
聞いたことのない男の人の声と、それに答える赤いメガネ。
「そうですか」
「とめ……!」
またもやノータイムで見送った、対面すらまだな彼にまでツッコみそうになって、なんとか堪えた。
半袖の制服シャツ、黒ベストに紐ネクタイ。
首から下は完全に顧問。上は学生だった。似合ってるなぁ。
祖父譲りという設定がしっくりきすぎる腕時計。
とても背が高い。そして黒縁眼鏡。色々できあがっている。
そんな彼にも止めてもらえず、とうとう自らスキャットで演出しだす赤いメガネ。
ルールールルルー
「やほーい 部っ活ー!」
赤いメガネの脇をすり抜けるように、いや、何もしなくてもすり抜けられるぐらい小柄なセーラー服が室内に飛び込んできた。
顔と同じくらいある大きなお団子ヘアー。
何が入っているんだと聞きたくなるくらい巨大なボストンバッグ。
比較対象のせいもあって、とても背が低い。そしてオレンジクリアな眼鏡。
「あら? その方は?」
入口から家政婦のようにひょこっと現れたもうひとりのセーラー服。
ゆるやかなウェーブがかった髪の先はふんわりと縦巻きになっている。
どこから見ても、お嬢様、な感じ。
そして、丸みを帯びた銀縁の眼鏡。
さっきちらっと聞いた、むこせさん、は、長身の彼のことでいいんだろうか。
あれ? どっちが、かえでさん?
んで、どっちが……誰だ?
「もしかして新入部員さんですの!?」
ですの!?
「ほぅ……」
ほぅ!?
「しょたーいめーん♫」
いつの間にか目の前にいた大きなお団子ヘアーの小さな彼女は、僕の両手を握りブンブンと縦に振りながら初対面の歌を歌いだした。
なんだ初対面の歌って。
アカン、追いついていない。
渇いた笑いしか出なくなってきてる。
情報量が、多すぎる……!
「部長……出番」
見かねてくれた、のかな。
……ん? 部長って?
「よしきたー!!」
かまってもらえた大型犬のように全力で振り返りながら返事をしたのは
筆先のような毛束を携えた赤いメガネ
顔には生気が
目には輝きが
今までの事がすべてなかったような
活き活きとした顔をして
光の速さで戻ってきた。
「復活はやっ!」
この状況でツッコめた自分を
褒めてあげたいと思います。
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