-o-o- 9

静まり返った一室。

これまでの騒ぎの反動もあって、脈打つ心臓の鼓動まで聞こえてきそう。


「……ところで、ここ、何部なんですか?」


さっき、僕を新入部員とかいきなり言ってたもんね。

何かの部室なんだろう。

部屋の隅、入口横で体操座りをしている赤いメガネを視界から外すように明城みょうじょう先輩に問いかけた。


「んー」


部屋の隅、入口横で体操座りをしている赤いメガネを視界から外すように眠そうな返事をする明城先輩。


「メガネのサークル」


指差した先、黒板の上。

お誕生日会なんかで見たことがあるような紙のバラがあしらわれ、「め」「が」「ね」と一文字ずつ当て込まれた手作りだろう垂れ幕。


「はぁ、メガネ……」


どこぞの赤いメガネがやりそうな趣向だ。


「あついー……しぬー」


ゴッ


らつな女の人の声に混ざって鈍い衝突音がした。

開けられたドアと横壁に挟まった赤いメガネ。

ドアノブが当たってとても痛そうだ。


ドアを開けた彼女は、その様子をしっかりを見た。

しっかり見て、どんな悲惨な状態にあるかしっかり確認した。

しっかり確認して、握っていたドアノブを

更に赤いメガネに押し込んだ。


「何このハゲすごい邪魔」


ぎゅう


へぶぁ


ぎゅう


ほぶぉ


ひとしきりドアノブを押し込んだ彼女は、

壁にめりこむ赤いメガネをしっかり見てから

静かにドアを閉め

手団扇で顔を仰ぎながら

まるで何事もなかったかのように入室してきた。

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