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僕は岡本おかもと 一行かずゆき。機械工学科の2年。

父さんの仕事の都合で転校。この明鏡町にやってきた。

転校は今回が初めてじゃないけれど、慣れるはずもなくて。

荷物も、気持ちも、整理する間もなくダンボールに詰め込まれ、大きなトラックに載せられて。


たった数日後には、誰も僕を知らない所に立っていて。

気がつけば次に行くべき学校の前に立っていて。

毎回そんな感じだ。


「――失礼しました」


今日は連絡をとってくれた先生と職員室で話だけ。登校は明日からだ。

小中とは違って、高専ともなれば「手ぶらでおいで」ぐらいにあっさりしていた。てか、実際そう言われた。


さ、帰ろ……うん?


遠くから地鳴りのような音がする。

するし、近づいてくる!?


「うおぉおおおおおおお!!」


見えたのは、書道家が使うような太い筆の先……のような薄茶色の毛束。

中身大丈夫? と聞きたくなるほど揺れに揺れたショルダーバッグ。

オレンジボーダーのパーカーからのぞく、まっピンクのTシャツ。

迫りくる、赤いメガネ。


避ける間もなくものすごい速さで現れた赤いメガネの誰かは

避ける間もなくものすごい早さで僕のカバンを掴み

止まらない勢いのままに引っ張られ

僕を軸にコンパスみたいに一周して

正面に戻ってくるなり

両肩を掴まれた。


なにがなんだかなんなんだ!?

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