リボルバー

主道 学

第1話

 乾いた革製のベンチに横になり、汗と血で汚れた腕を埃まみれのテーブルの上のボロ切れで拭いた。


 今日で三勝一敗。

 バーの人たちは無事。


 ここバー「リボルバー」の片隅には、いつも白黒猫がいる。

 どこから来たのか、これからどこへ行きたいのかもわからない。

 ずっと、ここにいる。

 対抗組織のバー「ヴァイオレット・カーテン」との抗争が始まって、もうひと月になる。

 ヤスとクグマも傷だらけの身体で歩いて来た。

「最近さー。ヴァイオレット・カーテンの奴ら銃持っていそうだな……」

「ああ。危ない奴が増えたな……」

 ヤスの言葉に俺は頷いた。

 クグマは口数は少ないが、良い奴だ。

 クグマと同じく無口な数人の客と、酒の匂いしかしない寂れたバー。

「リボルバー」の売り上げが少なくなってきたから、俺たちは来た。その時に何も言わずにクグマもついて来たんだ。


 三カ月前。このスエタという街には、バーが一つしかなかった。だけど、いつの間にか二つに増えて、今じゃ抗争をしていて怪我人が溢れだしている。

 凹んだ壁に凹んだ柱。

 一日中、酔ってなくても倒れている男たち。

 店内の弱すぎる照明の下にはいつもハルがカウンターで突っ伏していて、いつも同じ酒を飽きもせずに飲んでいた。

 でも、誰がなんて言おうとハルはいい女だ。

 

 木曜からだ。

 今日まで生きていることが不思議だった。

 抗争の勢いがありすぎて、怪我人が稀に見るほど多くなった。

 やっぱり相手は銃か何かを持っているのかな?

 奴らの強気が一気に上がっている。

 けど、こっちは弱気じゃない。


「また、今夜だ」

 珍しくクグマがしゃべった。

「ああ。オッケー」

「オッケー。なあ、アル? こっちの人数は?」

「三人。ハルを入れれば四人」

「……」

「……」

 

 この抗争。

 俺たちが逃げれば、決着がつくだろうな。

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