第91話~第93話

ジャンヌ:騎士団長

フィスト:近衛兵長

サリー:魔法使い

マリン:海の冒険者

ブラド:吸血鬼の姫

ローズ:貴族令嬢

キャッツ:トレジャーハンター

マリア:シスター

リーフ:エルフ




第91話 今日はここまで その2

**********



キャッツ「ね、ジャンヌ。急ぐってほど急がないよね?今日はもう休も?」


ジャンヌ「そうね、塔から飛んで出たのも、今日のことだし、休まなきゃね」


ボルカノ「……ふむ、午後5時か。せっかくだ、お嬢さんがたの夕食と寝床くらいは世話させてくれ」


リーフ「えっ」


9人が気まずそうに目を合わせます。


ボルカノ「なんだ?都合が悪いのか?言っておくが人間と食べるものはそう変わらんぞ」


マリン「いや、そうじゃなくて、ご飯も寝るところも、里の宿屋にお世話になれたらなぁ、って」


ロックス「なぜだ?この館の方がスペースは」


キャッツ「あー、そうじゃなくってさ、なかなかできない体験でしょ?ドワーフの里の宿屋に泊まるって」


ジャンヌ「個人的には市中の雰囲気も知っておきたくて」


フィスト「これからの旅にも役に立つかもしれないしね、そういうのが」


ボルカノ「……なるほど、世界をひとつにする少女たちらしく、立派な心構えだ。頭が下がるな。わかった。では今からは街を見てくるといい。宿はいくつもないが、どこを選んでくれても構わん。宿代も食事代もこちらで世話する」


ローズ「ほんとですか!?ありがとうございます!」


ブラド「太っ腹ねー」


サリー「かわいい宿屋があるといいなー」


ボルカノ「では明日の朝10時にこの館にもう一度来てくれ。それまでには特注の砲弾を完成させておく」


ジャンヌ「はい!ありがとうございます!」


ボルカノ「ロックス、てきとうなところまで送るか?」


フィスト「あ!大丈夫!道わかるから!」


マリア「お気遣いなく~」


ロックス「お?そ、そうか……なら、気をつけて」


リーフ「かわいい……」


ロックス「うるせぇ!」


ボルカノとロックスに見送られながら、9人は大広間を出ました。





第92話 やった

**********


ボルカノとロックスに見送られながら、9人は大広間を出ました。


9人は大広間の扉を閉め、出口に向かって歩き出します。

数歩進んだらもう、気持ちを抑えられませんでした。


誰が最初に声を上げたかわかりません。

でも、その第一声は大合唱になっていました。


「「「ぃやっっっったぁぁぁぁぁーーー!!!」」」


ジャンヌ「すごい!すごい!」


キャッツ「1個手に入れちゃったよ!オーブ!」


サリー「マリンちゃんかっこよかったー!」


ブラド「ほんとにねー!」


マリン「い、いや、私はそんな……勢いで怒鳴っちゃっただけで……私のせいで槍まで突きつけられたじゃん……」


リーフ「そんなの、結果オーライ!バッチグーじゃない?」


マリア「リーフ……いくつ?」


フィスト「ま、何にしても、この地のミッションはクリアね」


ローズ「じゃあさ!今から遊べるんだよね?」


ジャンヌ「当たり前でしょ!ローズ!遊ぶわよ!パァーッと!」


キャッツ「ジャンヌいいぞー!もっとやれー!」


ジャンヌ「ボルカノ様には悪いけど!堅苦しい夕食は嫌なのぉぉぉぉぉ!みんなで遊びたいのぉぉぉ!嘘ついてごめーん!」


マリン「はっちゃけてるね……」


9人の楽しそうな声は、館を出るまでひとしきり続きました。


9人が出ていった静かな大広間で、ボルカノとロックスは、閉まったばかりの扉を見つめています。


ボルカノが口を開きました。


ボルカノ「ロックスよ……彼女たちは、これからどうしていくんだろうな……」


ロックス「どうでしょうね……途方もない旅で、私には皆目見当がつきません……でも、ただひとつだけ、確実に言えるとしたら……彼女たちはこれから」


ボルカノ「……遊びに行くんだろうな」


ロックス「ええ」


9人は、思惑を見透かされているとも知らず、館を出たとたんに、足早に街に向かいました。

今にもスキップでもしそうな喜びようです。


そして、ドワーフの里を楽しみ尽くしました。


公園の初めて見る遊具でドワーフの子どもたちと遊んだり、精巧な細工のアクセサリーを吟味したり、カフェに入り里で人気のスイーツを堪能したり、珍しい本や道具を置いている店で買い物したり……


夜になってから宿を取り、その宿で夕食をとりました。

そして翌日、9人はボルカノの館の前に、再び来ました。




第93話 大砲

*********


ボルカノからレッドオーブを託された翌日、9人は再び屋敷の前に来ました。

ボルカノとロックスが出迎えてくれました。


ボルカノ「本当に、もういいのかね?2、3日ゆっくりしてもいいんだぞ」


ジャンヌ「いえ、夕べみんなで話し合って決めたんです。今日出発するって」


フィスト「勢いに乗りたいっていうのかな?このままほかのオーブ集めも頑張りたくて」


マリア「本当に、お世話になりました。ロックスさんも」


ロックス「あぁ」


ボルカノ「よし、では案内しよう」


11人が歩きだします。

館の中には入らず、外を歩いて裏手にまわります。


マリン「あの、特注で作るって言ってた砲弾、本当にできたの?」


ボルカノ「ああ、つい2時間前にな。腕利きのドワーフの職人が10人以上集まったんだが、お嬢さんがたの安全のために、細部にもこだわったらしくてな。今朝までかかったんだ」


リーフ「へー!すごいね!」


サリー「あの、その人たちにも、ちゃんとお礼言いたいんですけど……」


ボルカノ「気持ちはありがたく受け取っておくが、それには及ばんよ。ドワーフ世界進出を記念しての祝砲も兼ねとるんだからな。彼らにとっては名誉の仕事だよ」


ロックス「それに職人たちは、ついさっき寝たところだ。俺から伝えておく」


ブラド「ありがとうございます」


数分歩くと、黒い大きなものが見えてきました。


ローズ「あれが、大砲?」


キャッツ「でっかいねー」


砲身を上に向けた大砲を9人が見上げます。


ジャンヌ「軍の宿舎が8階建てだけど、それと同じくらいね」


キャッツ「で?ここ地下だけど、どうやって外に出るの?まさか撃った玉で天井を突き破って飛び出すわけじゃないよね?」


ボルカノ「………………」


ロックス「………………」


サリー「う、うそでしょ?」


ロックス「ああ、うそだ」


フィスト「チッ……」


リーフ「……ドワーフ嫌いかも」


ブラド「ダメじゃん(笑)」


ボルカノ「ワハハハハハハハ!まぁ個人的な好き嫌いはこの世からなくならんさ。さっきのは冗談だ。おい!ひらけ!」


ボルカノが近くに待機していたドワーフに声をかけました。

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