虹の騎士団物語~世界をひとつにした9人の少女~
@maiko-zaka
第1章 旅立ち
第0話~第10話
第0話 はじまり
昔々、神様は世界をひとつにできる架け橋、虹を作りました。
けれど、いつまで経っても世界から争いはなくなりません。
悲しんだ神様が流した涙が虹に落ちると、虹は砕け、空から消えました。
それから、虹が空に現れることはありませんでした。
でもある日、虹のカケラが、ある国の9人の少女の元にとどきます。
虹の騎士団と呼ばれた彼女たちが世界をひとつにしてくれる、最後の希望になった。そのときのお話です。
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第1話
1人目の少女 白銀騎士団団長ジャンヌ
ジャンヌ(私の名はジャンヌ。この国を侵略者から守る正規軍・白銀騎士団の団長)
ジャンヌ(軍をまとめる立場として、私自身が兵たちの模範にならなきゃ……)
兵AB「」コソコソ
ジャンヌ「ちょっと!あなたたち!何をしているの!」
兵A「いえ!違うんです!」
兵B「こ、これはですね……」
ジャンヌ「何を隠したの!お菓子!?まったく、たるんで…………」
子犬「クゥ~ン」
ジャンヌ「……」
兵A「す、すみません……」
兵B「捨てられていたもので……仕方なく……」
ジャンヌ「!軍に仕方ないもクソもない!軍規違反よ!」
ジャンヌ「バツとしてあなたたちは、林まで行って木材を調達!」
ジャンヌ「そして……こう……これくらいの……いい感じの木製の小屋と、皿を作ってきなさい!駆け足!!」
兵AB「は、はい!」タッタッタ……
ジャンヌ(ふぅ、ごまかせた)
兵A「(ヒソヒソ)ごまかしてるつもりなのかな?」
兵B「(ヒソヒソ)やめろよ、ごまかせてるつもりなんだから」
コツン
ジャンヌ「いたっ……なに?落ちてきたの?……なにこの色の、箱?」
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第2話
2人目の少女 近衛兵長フィスト
フィスト「あなたたち、なぜ近衛兵の武器がレイピアって決められているか知ってる?」
兵A「い、いえ」
フィスト「教えてあげます……正規軍は野戦が主な仕事だけど、近衛兵の戦場は城内。狭い場所でも扱える小ぶりな武器でなくてはならないからよ」
兵B「な、なるほど」
フィスト「そして、レイピアのもっとも効果的な攻撃方法は、突き!レイピアの切っ先を活かして、このように一気に突く!」
ドゴォォォォォォンッ!
フィスト「」
兵AB「」
フィスト「……まぁ今回は向こうの廊下まで突き破ってしまったけど、気持ち的にはこれくらいでいいわ」
兵A(この人、レイピアいるのかよ)
兵B(素手の正拳突きで戦えるだろ)
カラン
フィスト「ん?なにこれ?箱かな?綺麗……」
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第3話
3人目の少女 魔女の弟子サリー
サリー「召喚術……成功しました」
魔女「うん……うん、バッチリだね」
サリー(よかった……できた)
仲間A「サリーって、やっぱりすごいね」
仲間B「ねー!あんな難しい術、簡単にこなしちゃって」
サリー(すごくない……全然、簡単にこなしてない……自信、まだない……)
虫「」カサカサカサ
仲間A「ギャー!虫ー!」
仲間B「キモーい!!無理無理無理!」
サリー「」バシンッ
虫「」
サリー(はぁ……すごくならなきゃ……)
仲間A「サリー……」
仲間B「すごすぎ……」
カラン
サリー「?なにこの箱……綺麗……」
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第4話
4人目の少女 冒険家マリン
敵船「出たぞー!女海賊のマリンだー!」
マリン「誰が海賊よ!!沈めるわよ!」
敵船「」ブクブク
マリン「はぁ……結局沈めちゃった……」
マリン(世界が見たくて船乗り始めたら、意外に侵略船が多くて戦ってるうちに『海賊』なんて呼ばれるようになっちゃうし)
船員「おかしら!敵船の連中どうしますか?」
マリン「やめてよね!あんたたちが『おかしら』なんて呼ぶせいよ!」
船員「す、すみません」
マリン「…………」
船員「…………」
マリン「なにしてるのよ!早く助けてあげなさい!」
船員「は、はい!」
マリン(はぁ……なんであたしが海賊なのよ……外国行きたい……世界中の麺類を食べつくしたい……)
コツン
マリン「ったぁ……なにこれ?箱?空から?」
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第5話
5人目の少女 吸血鬼一族の姫ブラド
ワー!ワー!キャー!キャー!
使い魔A「姫さまー!次はなに弾いてくれるの?」
ブラド「城のオルガンでも結構弾けるもんなのねー♪次の曲、何がいい?」
使い魔B「えっとねー」
吸血鬼「……ブラド」
ブラド「なに?パパ」
吸血鬼「吸血鬼の姫が使い魔と仲良くしすぎるのは、どうかと思うぞ。昼でも活動できるほどに血が薄くなったとは言え、お前は吸血鬼なんだ」
ブラド「大丈夫よー私夜型だもん」
吸血鬼「それは単にだらしないだけだ」
使い魔A「あ、YOASOBIがいい!」
ブラド「お、いいねー!ん?何この、変な色の箱?こんなのあった?」
使い魔B「?知りませーん」
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第6話
6人目の少女 貴族の令嬢ローズ
侍女A「おやすみなさいませ、お嬢様」
ローズ「おやすみなさい」ガチャ…パタン
ローズ(なんなのかな?この不思議な色の箱……朝起きたら枕元にあったけど)
コンコン
ローズ「どうぞ」
侍女B「し、失礼します!お嬢様!今知らせがあり、邸内に不審者が侵入したと……」
ローズ「え!そうなの?」
侍女B「は、はい!」
ローズ「……………………」
侍女B「……あの?……なにか?」
ローズ「あなた、いつからここでお勤め?侍女は200人いるけど、あなたに会ったのは初めてだわ」
侍女B「フッ……使用人の顔を全部覚えてるなんてね……油断させて人質にしようと思ったけど、ぼーっとしてるだけのお嬢様ってわけじゃないのね……いいわ!正体見せてあげる!」
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第7話
7人目の少女 トレジャーハンターキャッツ
キャッツ「変装解いてビビるなよー!あ、やだ服が引っ掛かって」ツルッゴンッ
ローズ「だ、大丈夫ですか?……やだ、動かない……」
5分後
衛兵「お嬢様!お怪我は?」
キャッツ「…………イテテ……ん?ちょっと何よこれー!ふざけんなー!このトレジャーハンターのキャッツ様をあっさり捕まえてんじゃないわよー!」
ローズ「え?自分で捕まえたらダメだったかしら?」
衛兵「い、いえ、大丈夫ですよ、お嬢様。でも、よく縛り方なんかご存知で」
ローズ「本で読みましたから」
キャッツ「捕まえることないじゃん!ちょっとくらい、こそっと食料もらってもさー!減るもんじゃなし」
ローズ「え!?減らないんですか?」
衛兵「いえ、減りますね」
コツン
キャッツ「ったぁ!なにぶつけてんのよ!こんな固い箱投げんな!」
ローズ「な、投げてませんよ!……それに、その箱、私のと、同じもの?」
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第8話
8人目の少女 孤児院のシスターマリア
子どもA「シスターマリア!ご飯できた?」
マリア「ええ、できたわよ!みんなー!ご飯よー!」
子ども達「」ワー!ワー!
マリア「それじゃ、お祈りからしましょう……手を合わせて、目をつぶって……」
子ども達「はーい!」
マリア「お当番さん、お祈りの言葉を…………」
子ども達「…………」
マリア「…………」
子ども達「…………」
マリア「……今日のお当番は誰?」
子どもA「シスターだよ?」
マリア「え!?ホント?ごめんなさい!」
子どもB「シスターぼけすぎー(笑)」
子どもC「今のなんの時間?(笑)」
マリア「あぁ、主よ、お許しください……(コツン)あいたっ!」
子ども達「天罰だー!(笑)」
マリア「こら!あなた達!まったく……なにこれ?箱?」
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第9話
9人目の少女 エルフの娘リーフ
リーフ「はぁー……指、疲れた」
小鳥「弓矢の練習?エルフは大変ね」
リーフ「そう。苦手なの。動物とお話するのは得意なんだけどねー」
兎「なぜ弓矢の練習をするの?エルフは動物を食べないのに」
リーフ「必要以上に動物を狩る人間を追い払ったりするんだって。私はまだしたことないけど」
モグラ「リーフは人間に会ったことある?」
リーフ「あるわよー。私は長老たちみたいに、人間、嫌いじゃないの。嫌なこと、されたことないから。何なら、いつか人間の住む町に行ってみたいわ」
ヘビ「僕は人間、怖いな」
キツネ「お前の方が人間から怖がられてるだろ(笑)」
カサッ
リーフ「ん?なにか落ちた?」
モグラ「うん、こんなのあったよ。箱かな?」
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第10話 虹の光線
虹のカケラが9人の少女の元に舞い降りました。
立場も種族も違う彼女達は「世界をひとつにする」という大きな使命を負ったのです。
ある少女は箱を一日中眺めて過ごし、ある少女は肌身離さず持ち、またある少女は机の引き出しにしまいました。
でも9人の少女の思いは同じでした。
「私は何かしなくちゃいけない」
ある日の朝、虹のカケラがひとすじの光線を放ちました。
それは野を越え、山を越え、海を越え、城へと差し込みました。
少女達はそれぞれ、その光の先、お城を目指します。
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