虹の騎士団物語~世界をひとつにした9人の少女~

@maiko-zaka

第1章 旅立ち

第0話~第10話

第0話 はじまり



昔々、神様は世界をひとつにできる架け橋、虹を作りました。

けれど、いつまで経っても世界から争いはなくなりません。


悲しんだ神様が流した涙が虹に落ちると、虹は砕け、空から消えました。

それから、虹が空に現れることはありませんでした。


でもある日、虹のカケラが、ある国の9人の少女の元にとどきます。

虹の騎士団と呼ばれた彼女たちが世界をひとつにしてくれる、最後の希望になった。そのときのお話です。





**********

第1話

1人目の少女 白銀騎士団団長ジャンヌ



ジャンヌ(私の名はジャンヌ。この国を侵略者から守る正規軍・白銀騎士団の団長)


ジャンヌ(軍をまとめる立場として、私自身が兵たちの模範にならなきゃ……)


兵AB「」コソコソ


ジャンヌ「ちょっと!あなたたち!何をしているの!」


兵A「いえ!違うんです!」


兵B「こ、これはですね……」


ジャンヌ「何を隠したの!お菓子!?まったく、たるんで…………」


子犬「クゥ~ン」


ジャンヌ「……」


兵A「す、すみません……」


兵B「捨てられていたもので……仕方なく……」


ジャンヌ「!軍に仕方ないもクソもない!軍規違反よ!」


ジャンヌ「バツとしてあなたたちは、林まで行って木材を調達!」


ジャンヌ「そして……こう……これくらいの……いい感じの木製の小屋と、皿を作ってきなさい!駆け足!!」


兵AB「は、はい!」タッタッタ……


ジャンヌ(ふぅ、ごまかせた)


兵A「(ヒソヒソ)ごまかしてるつもりなのかな?」


兵B「(ヒソヒソ)やめろよ、ごまかせてるつもりなんだから」


コツン


ジャンヌ「いたっ……なに?落ちてきたの?……なにこの色の、箱?」




**********

第2話

2人目の少女 近衛兵長フィスト



フィスト「あなたたち、なぜ近衛兵の武器がレイピアって決められているか知ってる?」


兵A「い、いえ」


フィスト「教えてあげます……正規軍は野戦が主な仕事だけど、近衛兵の戦場は城内。狭い場所でも扱える小ぶりな武器でなくてはならないからよ」


兵B「な、なるほど」


フィスト「そして、レイピアのもっとも効果的な攻撃方法は、突き!レイピアの切っ先を活かして、このように一気に突く!」


ドゴォォォォォォンッ!


フィスト「」


兵AB「」


フィスト「……まぁ今回は向こうの廊下まで突き破ってしまったけど、気持ち的にはこれくらいでいいわ」


兵A(この人、レイピアいるのかよ)


兵B(素手の正拳突きで戦えるだろ)


カラン


フィスト「ん?なにこれ?箱かな?綺麗……」




**********

第3話

3人目の少女 魔女の弟子サリー



サリー「召喚術……成功しました」


魔女「うん……うん、バッチリだね」


サリー(よかった……できた)


仲間A「サリーって、やっぱりすごいね」


仲間B「ねー!あんな難しい術、簡単にこなしちゃって」


サリー(すごくない……全然、簡単にこなしてない……自信、まだない……)


虫「」カサカサカサ


仲間A「ギャー!虫ー!」


仲間B「キモーい!!無理無理無理!」


サリー「」バシンッ


虫「」


サリー(はぁ……すごくならなきゃ……)


仲間A「サリー……」


仲間B「すごすぎ……」


カラン


サリー「?なにこの箱……綺麗……」



**********

第4話

4人目の少女 冒険家マリン



敵船「出たぞー!女海賊のマリンだー!」


マリン「誰が海賊よ!!沈めるわよ!」


敵船「」ブクブク


マリン「はぁ……結局沈めちゃった……」


マリン(世界が見たくて船乗り始めたら、意外に侵略船が多くて戦ってるうちに『海賊』なんて呼ばれるようになっちゃうし)


船員「おかしら!敵船の連中どうしますか?」


マリン「やめてよね!あんたたちが『おかしら』なんて呼ぶせいよ!」


船員「す、すみません」


マリン「…………」


船員「…………」


マリン「なにしてるのよ!早く助けてあげなさい!」


船員「は、はい!」


マリン(はぁ……なんであたしが海賊なのよ……外国行きたい……世界中の麺類を食べつくしたい……)


コツン


マリン「ったぁ……なにこれ?箱?空から?」




**********

第5話

5人目の少女 吸血鬼一族の姫ブラド



ワー!ワー!キャー!キャー!


使い魔A「姫さまー!次はなに弾いてくれるの?」


ブラド「城のオルガンでも結構弾けるもんなのねー♪次の曲、何がいい?」


使い魔B「えっとねー」


吸血鬼「……ブラド」


ブラド「なに?パパ」


吸血鬼「吸血鬼の姫が使い魔と仲良くしすぎるのは、どうかと思うぞ。昼でも活動できるほどに血が薄くなったとは言え、お前は吸血鬼なんだ」


ブラド「大丈夫よー私夜型だもん」


吸血鬼「それは単にだらしないだけだ」


使い魔A「あ、YOASOBIがいい!」


ブラド「お、いいねー!ん?何この、変な色の箱?こんなのあった?」


使い魔B「?知りませーん」




**********

第6話

6人目の少女 貴族の令嬢ローズ



侍女A「おやすみなさいませ、お嬢様」


ローズ「おやすみなさい」ガチャ…パタン


ローズ(なんなのかな?この不思議な色の箱……朝起きたら枕元にあったけど)


コンコン


ローズ「どうぞ」


侍女B「し、失礼します!お嬢様!今知らせがあり、邸内に不審者が侵入したと……」


ローズ「え!そうなの?」


侍女B「は、はい!」


ローズ「……………………」


侍女B「……あの?……なにか?」


ローズ「あなた、いつからここでお勤め?侍女は200人いるけど、あなたに会ったのは初めてだわ」


侍女B「フッ……使用人の顔を全部覚えてるなんてね……油断させて人質にしようと思ったけど、ぼーっとしてるだけのお嬢様ってわけじゃないのね……いいわ!正体見せてあげる!」




**********

第7話

7人目の少女 トレジャーハンターキャッツ



キャッツ「変装解いてビビるなよー!あ、やだ服が引っ掛かって」ツルッゴンッ


ローズ「だ、大丈夫ですか?……やだ、動かない……」


5分後


衛兵「お嬢様!お怪我は?」


キャッツ「…………イテテ……ん?ちょっと何よこれー!ふざけんなー!このトレジャーハンターのキャッツ様をあっさり捕まえてんじゃないわよー!」


ローズ「え?自分で捕まえたらダメだったかしら?」


衛兵「い、いえ、大丈夫ですよ、お嬢様。でも、よく縛り方なんかご存知で」


ローズ「本で読みましたから」


キャッツ「捕まえることないじゃん!ちょっとくらい、こそっと食料もらってもさー!減るもんじゃなし」


ローズ「え!?減らないんですか?」


衛兵「いえ、減りますね」


コツン


キャッツ「ったぁ!なにぶつけてんのよ!こんな固い箱投げんな!」


ローズ「な、投げてませんよ!……それに、その箱、私のと、同じもの?」



**********

第8話

8人目の少女 孤児院のシスターマリア



子どもA「シスターマリア!ご飯できた?」


マリア「ええ、できたわよ!みんなー!ご飯よー!」


子ども達「」ワー!ワー!


マリア「それじゃ、お祈りからしましょう……手を合わせて、目をつぶって……」


子ども達「はーい!」


マリア「お当番さん、お祈りの言葉を…………」


子ども達「…………」


マリア「…………」


子ども達「…………」


マリア「……今日のお当番は誰?」


子どもA「シスターだよ?」


マリア「え!?ホント?ごめんなさい!」


子どもB「シスターぼけすぎー(笑)」


子どもC「今のなんの時間?(笑)」


マリア「あぁ、主よ、お許しください……(コツン)あいたっ!」


子ども達「天罰だー!(笑)」


マリア「こら!あなた達!まったく……なにこれ?箱?」






**********

第9話

9人目の少女 エルフの娘リーフ



リーフ「はぁー……指、疲れた」


小鳥「弓矢の練習?エルフは大変ね」


リーフ「そう。苦手なの。動物とお話するのは得意なんだけどねー」


兎「なぜ弓矢の練習をするの?エルフは動物を食べないのに」


リーフ「必要以上に動物を狩る人間を追い払ったりするんだって。私はまだしたことないけど」


モグラ「リーフは人間に会ったことある?」


リーフ「あるわよー。私は長老たちみたいに、人間、嫌いじゃないの。嫌なこと、されたことないから。何なら、いつか人間の住む町に行ってみたいわ」


ヘビ「僕は人間、怖いな」


キツネ「お前の方が人間から怖がられてるだろ(笑)」


カサッ


リーフ「ん?なにか落ちた?」


モグラ「うん、こんなのあったよ。箱かな?」




**********

第10話 虹の光線



虹のカケラが9人の少女の元に舞い降りました。

立場も種族も違う彼女達は「世界をひとつにする」という大きな使命を負ったのです。


ある少女は箱を一日中眺めて過ごし、ある少女は肌身離さず持ち、またある少女は机の引き出しにしまいました。


でも9人の少女の思いは同じでした。


「私は何かしなくちゃいけない」


ある日の朝、虹のカケラがひとすじの光線を放ちました。

それは野を越え、山を越え、海を越え、城へと差し込みました。


少女達はそれぞれ、その光の先、お城を目指します。

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