第15話突然の入港




きな臭い噂は聞いていたが、現実になるとは思わなかった。

俺と彼女ら5人と5家族の男性5人が、バレイ都市に急いで向かっている。

新たな村民は、まだ慣れていないし弓の訓練もしていなので居残り。

先頭を走る荷馬車には俺と彼女らが乗り、うしろの荷馬車には男性5人が続いて走っている。

ロバートは村の面倒を見てもらう為、責任者として残って頑張ってもらう。



事の発端は3日前であった。

このオーランド王国の王都に近い、サイラス貿易港に3隻の大型船が突然入港。

バラン帝国の使者だと名乗り、貿易がしたいと交渉を持ちかけてきた。


その大型船はオーランド王国の大型船の2倍もあり、船の全体が鉄板でおおわれていた。

そして嫌々だが、国としての交渉をする為に人選を国王の下で協議。

王子は異国の大型船に興味を持ち、国王に代表の1人に選んで欲しいと頼み込んだ。

政治に興味を持った事に国王は大変喜び、代表の1人に選んだ。


すぐにサイラス貿易港で交渉の場が持たれたが、バラン帝国が無理難題を最初から吹っ掛けた。

怒った交渉の代表の3人が帰ろうとした時に、バラン帝国の兵が襲い代表3人を人質にして奪い去った。

バラン兵は強く、オーランドの護衛は皆殺しされて、サイラスに居た兵が取り返す為に動いたが船からの火球によって全滅。

サイラス貿易港は甚大な被害にあい、民は逃げるしかなかった。

今は王都の兵がサイラス貿易港を包囲して睨み合っている。


その為、王国全体に緊急招集がかけられている。

俺らはバレイ領主の招集に従っている。


バレイ兵700人と道の途中で合流。

道すがら他の領主の兵とも合流。


サイラス貿易港についた時には2300人に膨れ上がっていた。

そしてサイラス貿易港には1万9000ぐらいの兵が集まっている。


しかし港の沖合いには6隻の大型船が停泊中。

1日前にやって来たらしい。


オーランド王国の軍船10隻が襲ったが、沖合いの6隻の大型船によって全て撃沈されていた。

幾度も小型船で夜襲を仕掛けたが、それもことごとく失敗に終わった。

はしごを下ろしていない為、高い船に乗り込むこと事態が難しかった。

貿易港内でも戦いが行われたが、どれも惨敗。

バラン帝国の兵に相当数の魔術士がいたのが原因。



バラン帝国は魔法を使った兵器を使用。

目撃証言で【火砲】と言う物で魔力を流す事で火球が発射せれ、射程距離は200メートル。

角度を上げて発射すれば400メートルも飛ぶが命中率は落ちる。

その兵器は重い為、船からの攻撃しかないので射程内に入らなければ安全。


人質のせいで、全軍での攻撃は控えられている。

そして領主合同の作戦会議でバレイ領主が発言。


「オーク殺しのトニーに任せては」


隣のオレン領主も、拍手をしながら頷いていた。


「その噂話は聞いたことがある。本当の事なのか?」


「間違いなく本当の事です」


「今までも何回も失敗してる。また失敗しても変わりないだろう」


「そうですね王子救出を決行してくれ」



俺にその話しが持ち込まれた時には、また丸投げかと思いつつも作戦を練った。

まずは王子の居場所を探す必要がある。


ドローンを操作する1名と警護する1名を1組として、彼女らと俺の3組で手始めに貿易港内の探索を始めた。

賑わっていた貿易港が、破壊されてバラン帝国の兵も所々に配備。


護衛にはサイレンサー付き小銃と拳銃を持たせて、予備のマガジンもバッグに入れている。


ドローンで上空から敵兵を見つけ、護衛が密かに小銃で仕留める。

次々と敵兵を静かに倒して、捜索中にようやく人質3人を見つけ出した。

窓から見た感じは無事であった。

トランシーバーで連絡を取り合う。


「教会に人質が居た。教会の裏の家に集合」


「了解」


「了解」



ようやく集まったメンバーにドローンを回収して、サイレンサー付き拳銃を渡す。

室内は拳銃の方が扱いやすいと判断をした。

敵の数10人で魔術士は4人。

紙に部屋の見取り図を描き、敵の位置と人質の位置を✖〇で書き込む。


「この位置を覚えておけ。ララとアッキーはここから入りこの3人をやれ。シナンとユナはここを攻めてこの4人をやれ。ニーナは俺とここを攻める。皆、時計の時間1時20分に合わせろ今だ。1時40分に決行する」


1人1人が頷き合い。

そしてゴーグルと防毒マスクを渡すと手によるサインで作戦が始まる。

静かに動き出した。


割れた窓ガラスに待機。腕時計が時間の合図をしらせる。

窓から笑気手榴弾しょうきしゅりゅうだんを放り込む、パシュッ部屋中に一瞬でガスが充満。

むせりながら笑いこげる敵と人質。パスパスパスと俺は敵を仕留める。

向こうでも倒れる音がする。

アッキーは笑いこげる人質のロープをナイフで次々に切って、引張ったが動かないので往復ビンタをしている。

ビンタされているのが若い人だったので、目をそらして見なかったことにする。


俺は外でバギー6台と大型ワゴンを出し、逃げる準備を終える。

やってきた彼女は人質をワゴンへ無理やり押し込み、自分のバギー乗り込むと走り出した。

俺もワゴンを引っ張りながら走り出した。



人質救出に歓喜に沸く兵達と、国王と王子の対面に涙する領主達。

これで誰もが戦いは終わったと思っただろう。



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