砂上を歩く

天音

第1話 プロローグ

 足に白い波がかかる。

 9月の海は少し冷たかった。

 自分が入ってみたいと言い出したのに、いざ足をつけてみるとその冷たさに悲鳴を上げる彼女を見て、声に出して笑う。拗ねた顔を向けられて、沁みるように好きだと思った。

 砂浜を見れば、自分たちが立っているところまでしっかりと足跡がついてきていた。

 陽の光を反射する海が眩しい。少し足をつけて満足したのか、もう海から上がっている彼女を追って名前を呼ぶ。

 そして、今度は自分から手を差し出した。

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