勇者召喚、おまけ付き ~チートはメガネで私がおまけ~

渡琉兎

第一章:勇者召喚、おまけ付き

第1話:プロローグ

「――……あぁ~……疲れた。マジでしんど~。これじゃあ二十代で過労死とかあり得そうだよ~」


 目の下にクマを作り深夜の帰り道を歩く女性――大和やまと明日香あすかは疲れた声でそう呟いた。

 毎日のように残業を繰り返しているが終わらない業務。上司からは何度も怒鳴られ、相手業者には何度も頭を下げているが、それでも一向に終わる気配を見せてくれない。こんな状態では愚痴の一つや二つ、零れてしまっても文句は言えないだろう。

 こんな時にこそ自分へのご褒美が必要だと言い聞かせ、明日香は帰り道の途中にあるコンビニへと入っていく。

 鼻から少し下がってきたメガネの山を押し上げながら商品を吟味する。


「小さなご褒美だけど、シュークリームとちょっとお高めのコーヒーでね」


 六個入りのシュークリームとカップのコーヒーを購入して外に出る。

 深夜のコンビニの駐車場には学生が四人たむろしていたが、そんな事はどうでもいい。今は自分の事で精一杯なのだから。

 横目に学生たちを見ながら歩道へ出ようとした――その時である。


「――え?」


 突如として駐車場一帯が眩しい光に包まれたのだ。


「な、なんだよこれは!」

「いや~ん、岳人がくとこわ~い!」

「何が起きたの?」

「……え、何、これ?」


 学生たちも何事かと声をあげているが、これもまた明日香からするとどうでもいい事だ。自分の身に何も起きなければ、それでいいのだと考えていたのだが――そうはならなかった。


「きゃああああっ!」


 駐車場を包み込んでいた光がさらに強烈な光を放ち始める。そして――光が消えるそこには誰の姿もなかったのだった。

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