第05話「推しへの誓い」
困ったことになった。一体どうすればいいのだろう。
奈津美ならばゲームの知識を活かして、破滅に繋がりそうなフラグを回避していくこともできたのかも知れない。
しかし残念ながら私には、あの悲劇的なラスト以外の情報がほとんどなかった。
奈津美の話を聞き流していたことを、今さらながらに後悔してがっくり肩を落とす。
「あっ……あの、エリシャ様、どこかお加減よろしくないのでは……」
整った眉をキュッと寄せ、青みを帯びた灰色の瞳を曇らせて、本気で心配そうな顔。
「ありがとう、でも私は元気だから心配しないで」
無理やりの笑顔で答えたものの、ますます表情を暗くする彼女の様子を見て、失敗したことに気付く。
感謝とか気遣いとか、普段なら絶対に口にしない言葉をかける私に、もしかしたら不信感を抱かせてしまったかも知れない。
「ええと……私、どこか変?」
直球で聞いてみた。
すると彼女は何かを口にしかけて言い淀む、ということを五回ほど繰り返したのち、ひとつ大きくうなずいて、壁に据え付けられた大きな
私はその前に移動して、
陶磁器のような白い肌に、はずしたナイトキャップから溢れる長く
上品に整った顔立ちを際立てるシャープな柳眉と、猫みたいなアーモンドアイのなかで紫色に輝く瞳。
──これが自分だとは到底思えない、
あー、このまま日本に戻れたら、アイドルから女優になって特撮出演のオーディション受けまくってやるのに。
それと同時に、違和感も感じていた。
その顔が衿沙でないのは当然なのだが、エリシャとしてもなにかが違う。
もちろん、きのう見たゲームやアニメにおける
「……なんだろ、表情かな……」
目元あるいは眉根にピンと張り詰めていた糸が、ふわりと緩んだように見える。
エリシャとしての記憶をもういちど丁寧に辿ってみる。
彼女は五年前、十歳で母親を失ってからずっとダンケルハイトの家名を守るため、誰からも侮られないよう精一杯に強がって、虚勢を高く高く掲げ生きてきていた。
けっして、誰にも心を開かずに。
鏡の中で胸元に輝いている小さな
対する衿沙も、ただのほほんと生きてきたわけではない。
十代のころに両親が離婚して、母親とはすっかり疎遠だし、父親の再婚相手とも馬が合わず何年も実家に帰っていない。
大人になって、人並みの恋をし手痛い失恋もした。
仕事にやりがいはないし、グレーゾーンを巧みに突いてくる上司のパワハラ兼セクハラにもうんざりだ。
でもまあ、それらは我慢できないこともない。
自分さえ我慢すれば波風立たないのだから、それでいいのだ。
幸い
エリシャの心を五年間でがんじがらめにしていた糸が、そんな
その結果、表情がまるで別人のように柔らかに変化したのだろう。
結局のところ、
ただ、ひとつだけ決めたことがある。
自分自身の運命だからという以前に、
特撮から学んだ
心の中で私は、そう
──気付けば、鏡の中の私の瞳からは、
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