第29話 共犯
ディアンベル邸に着くと、可愛らしい女の子が走って出迎えてくれた。
「お初にお目にかかります、皇帝陛下。ミリア・ディアンベルと申します。」
やっと対面だ。
この物語の主人公、
ミリア・ディアンベル
本で読んだ通り、目はクリっと二重で、鼻もスっと通って唇はそれにあったような大きさで、笑顔が可愛らしい子だった。
小柄でなんとも男が守ってあげたくなるような、言うなればぶりっ子系。
「シェルお兄様!今日は泊まって行かれるんですよね!?それなら明日少し一緒に買い物にでも行きませんか?お友達を紹介したいんです!」
それに加えて空気が読めない。
シェルジオは今は元気に相手してあげられる精神ではない。
かなりダメージは大きくショックを受けているのか、顔色が少し悪く、表情が暗かった。
しかしそれを分かっていないのかわざとなのか、ミリアはシェルジオが家に入るまでずっと腕を組んで、己の話をしていた。
そんな2人を見ていると、ミリアと目が合った。
瞬間分かった。
ミリアは私を敵視していると。
あの、殺気の籠った視線、間違いない。
「申し訳ありません陛下。娘はシェルジオのことが大好きで、久しぶりの再会についついはしゃいでしまっているようです。後でしっかり言っておきますのでどうかお許しを。」
私が二人を見ていたことに気づいたのか、後ろから慌ててディアンベル当主が頭を下げて来た。
ハレルドは私の1歩後ろでその様子を静かに見ていた。
その後、みんなで応接室に行き話をすることになった。
もちろんミリアも居た。
「コールお兄様はそんなことはしません!!何かの間違いです!」
「ミア、陛下がいるんだ、少しは自重しなさい。」
シェルジオがミリアの頭を撫でてそう優しく言う。
「これは事実だ、ミリア嬢。」
私が強めに言うとミリアは今までの勢いを無くした。
「さて、ディアンベル当主。私たちがここへ来た目的は、コール捕縛と今後の関係について話し合う為だ。」
ここまで言うとディアンベル当主は焦ったように土下座をした。
「本当に申し訳ありません!愚息の行いのせいで、帝国に迷惑かけてしまいましたこと、どんなことをしてでも償う所存です!」
「そうか、シュフェル!」
「はいはい!」
私は途中からシュフェルが隠れて、あとを付けて来ていたことに気づいていた。
ダンの兄妹を探しているうちに、逃亡していたコールの奴隷集団に遭遇したのだろう。
そこに私たちがいてシュフェルは様子を伺っていた。コールが喚いている時に、建物の影にシュフェルの姿があったのを密かに確認していた。
だから、今この場にいることもわかっていた。
「シュフェル、ご苦労だった。早速だが、奴隷の数はどのくらい居た?」
「全部で500人ほど。うちの領地の民も100人ほどいた。全て、女と12歳以下の子供だった。」
そう言いながら開いた窓から軽快に入って来て、私の隣に座った。
「さて、ディアンベル当主、ここで質問がございます。」
シュフェルは目の前に座っているディアンベル当主の目をじっと見つめた。
これは、問い詰める時の目だ。
「あなた、コール・ディアンベルが反逆者になっていた事をご存知でしたね?というか、あなたでしょう?毒を手に入れてコールに渡していたのは。」
なるほど。
「そ、そんなまさか!!私は全く知らなかった!」
「では、何故、あなたから毒の匂いがプンプンとするんでしょうかね。あと、この邸にもまだいっぱい隠してますよね?だって、この邸、鼻がイカれそうなくらい毒の匂いがしますもん。」
シュフェルは笑顔を消して顔を歪め、嫌悪感を出した顔でそう問い詰めた。
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