第1949話 明日はいい日になるといいな

「今日はどうだった?」


「某は、14でござる。最近来たばかりの人間が、比較的多かったと思うでござるよ。地球から来た方は、ある程度情報を持っているようで、すぐに戦闘態勢に入ったでござる。神共のゲーム盤から来た方は、情報を求めて戦闘より会話を優先していたでござるな」


「えっ、すいません。とにかく数をこなすために、有無を言わずに強襲してました。バザールさんの言う通り、今日は1人でいるのが多かった気がしますね。すぐに戦闘態勢に入ったのが、半数ほどでしょうか? 18人は処分できたので、良かったと思いますが……ダメでしたか?」


「気にする必要はないよ。ライガは俺の注文に答えてくれていただけだからな。俺だって、情報収集より先に殺してたから、問題ないさ。バザールは、自分で必要だと思った事を、自分の考えで実行しただけだから、良い悪いのは無しじゃないしな。そのおかげか、俺は後4人だな」


 2人に早いと驚かれたが、ウルのためと分かれば苦笑していた。


「後4人殺したら、その場で送り返すことになるかもしれないから、念のため2人殺した後は、拠点に連れ帰ってこようと思っているんだけど、バザールはどう思う?」


「そうでござるな……急に送り返されるのは、本人もビックリするでござろうな。連れ帰るのであれば、多めにシュウ殿につけておく方がいいでござるか?」


「よろしく頼む。ライガも、50にならないように調整して、残りは連れ帰ってくれ。もし間違って50になった場合は、ロジーを返すようにしてくれ」


「了解しました。自分は後9なので、念のため5~6で止めて残りは連れ帰ります」


「バザール、明日は、ギリースーツの奴の監視を厳に、拠点は俺たちが出発した時点で、一度出入り口を封鎖してくれ。そうすれば、拠点に置いておくサイレントアサシンが減るだろ、大変かもしれないけどよろしく頼む」


「了解でござる。後で綾乃殿にも話しておくでござるよ」


「あ~、それは俺がヤルわ。綾乃を送り返したときに、妻たちに伝えてほしいことがあるから、こっちで話しておくわ」


 夜の話し合いは終了する。ここからは、食事をして風呂入って寝るだけだな。


 綾乃に話をしないとな。ウルをどうするか……よし、ロジー、ちょっとこっちこい。


「何か用なの? 私これでも忙しいんですけど」


「お前、食っちゃ寝してるだけじゃん……まぁ、今回はお前に最適な任務を用意した。もし嫌なら、断ってくれてもいいけど、どうする?」


「……何をさせる気?」


「ちょっと、気を引いてほしいんだ。気を引くのに、デザートをいくつか一緒に食べて良いから、頼まれてくれないかな?」


「まじで!? 何でもやっちゃうよ! 食料庫にある奴なら、何でもいいんだよね!? うをおおおおおおお、たぎってきたぁぁぁぁぁ!!」


 オーラが見える。デザート1つで、何がこいつを駆り立てるのだろうか……気を引いてくれるのは助かるから、気にしないことにしよう。


 ロジー、お前の任務はお風呂の後だからな! ウルと一緒に何を食べるか考えてくれよ。


 ウルとお風呂に入っている時に、


「今日は、お風呂の後にロジーとデザートを食べて良いからな。ウルは明日の夜には帰れると思うから、今日は前祝いみたいなものをしよう。ロジーと一緒に、俺や綾乃の分まで選んでくれ。その間に俺は、綾乃と話があるから頼むね。食べたいものが無かったら、ライガに頼んでくれ」


 デザートという言葉に、ウルは大喜びだ。こういうところは、子どもみたいなリアクションをするんだな。ゆっくりとお風呂に浸かった後に、ウルはロジーを連れて食料庫へ走っていった。


 綾乃が呼び出しに応じて、リビングスペースに来てくれた。


「シュウ、話したいことって何?」


「多分、明日でウルを帰すことができると思う、一緒に綾乃も帰れると思うから、妻たち……ミリー、カエデ、リンドの3人に伝えてほしいことがあるんだ」


「もう帰れるんだ。まだ先かと思ってたわ。伝言を頼むってことは、ウルちゃんの事かな?」


「そういうこと。こっちに来てから、ウルの様子がおかしいのに気付いてると思うけど、本人は気付いていないと思うんだ。精神的な……心の問題だと思う。


 辛い経験をして俺が引き取って、ミーシャたちのお姉さんになって、成長せざる負えなかったんだよな。その反動か、子どもっぽくなってしまっているんだよね。歳を考えればそれが悪いとは言わないけど、心に傷が出来たら困るから、そこら辺を伝えてほしいんだよね」


「今までが大人っぽかったけど、急に子ども返りをしちゃったから、色々心配なのね。他の奥さんたちには話さない方がいい? 私が気になったことも伝えて良い?」


 両方とも問題ないことを伝え、俺からの伝言を頼む。


 5分ほど話し込んだところで、ウルたちが戻ってきた。


「シュウ! 私はこれとこれね!」


 ロジーが俺に突き出してきたのは、高級アイスのチョコチップとバタークッキーだ。突き出しても俺は食えないのだが。でもさ、そのアイスの美味しい食べ方って、冷蔵庫に1時間くらい置いてからが食べごろって、何かにかいてあった気がするぞ。


 冷凍庫から出した状態だと、まるで鈍器みたいに硬いけど、どうやって食べるんだ?


「ふっふっふ、あんた、今、どうやって食べるんだ? とか思ってるでしょ。私は、冷凍庫から出したこれを食べるための、魔法を開発しているのよ!」


 つるペタの胸を張って言い放った。まさか、アイスを食べ頃にするために、魔法を開発したのか……って、俺たちの事を考えれば、その程度は普通か。


「ある程度、硬さを調節できるから、今回は柔らかめにして、バタークッキーにつけて食べるのよ!」


 なるほどね。クッキーにアイスをトッピングするわけか。確かにそれは美味しそうだけど、バタークッキーにアイスって会うんだろうか? まぁ、ロジーが食べるんだから関係ないな。


 ウルが俺に持って来てくれたのは、ロジーと同じでアイスだけど、俺の好みを把握しているので、爽やかな方の抹茶味を持って来てくれた。シルキーやブラウニーたちの作ってくれるアイスの方が美味しいが、あいつらの作るアイスを地球で食べようとすれば、万札が飛ぶかもしれない……


 そんなのと比べると申し訳ないが、変わらない品質で大量に生産できる日本の企業……半端ないと思う。


 全員にデザートが渡ったところで、ほのぼのとした会話をしながら食べ始めた。

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