第1276話 敵性魔物
半日ほどすると、バザールから現地で収集した情報の連絡が入る。
1つの街でしか情報を収集していないから、正確な情報か分からないが、この大陸は比較的落ち着いているらしい。大きな争いも知られている範囲では無いのだとか。
そして、この大陸には国と呼べる物がなかった。1つの街が1つの国のような役割を果たしており、特にトラブルが発生する事も無いらしい。
バザールが話を聞いて受けた印象は、地域毎にまとめ役みたいな都市がありそれが都道府県のような集合の印象で、各街が市区町村みたいな感じだとか。いわゆる平和だという事だ。この大陸ができた時に活躍したのが日本人とか?
でも人の欲は際限がないから、縛られるルールが無いのであれば必ずと言っていい程、支配しようとする人間が現れるという物だ。
街の領主の話を聞いた所、いつも「私の代わりをしてくれるのであれば、いつでも領主の座を譲ります」と公言しているらしい。だけど今の所領主希望者はいないのだとか。そんな事がかれこれ10年続いているのだとか。
それを聞いた時は、ここの領主と良い酒が飲めそうな気がした。酒ほとんど飲めないけどな。
争いが無いのであれば、召喚される可能性はほとんどないとみて、次の大陸へ移動してもらう事になった。
ここまで妻と娘たちが連れ去られて72時間……3日が経過していた。
そんな時、リバイアサンが
『危ない! 衝撃に備えて下さい!』
そう警告してきた。そういえば、お前も念話できんだったな。そんな事を思いながら、船が壊れる可能性もありそうだったので、船を包むように防御結界を3重に張った。
次の瞬間、何かにぶつかったのか慣性の法則で、体が進行方向に流れた。
完全に止まっているわけでは無く、何かにぶつかりコースがズレたような感じだ。
『目指している大陸のリバイアサンが現れました』
こういう時に限って面倒な。
「大陸までの距離はどの位だ?」
『今までのスピードで30分位かと』
「確か音速位のスピードで移動してたはずだから……600キロメートル位はあるって事か? というか、戦わないと拙い感じなんだよな? 俺たちをかばいながらだと厳しいよな?」
『厳しいです』
「俺たちをこの場において、相手をしてやってくれ」
『了解です』
そう言って、俺たちから離れていき相手のリバイアサンに向かって行った。
周りに配慮をしているわけもなく、2匹のリバイアサンが全力で動いているので、津波が起きたりしている。
そこら辺は魔法で何とか対処をできるので問題は無いが、移動が困難だな……せめてもっと離れたい。
「みんな、半分は押し寄せてくる津波の対処を! 半分はこの船を移動させるぞ! 津波はキリエとシエルを中心に対処してくれ。船を動かすのは俺が指揮する!」
そう言うと魔法が得意なメンバーが津波の方へ、それ以外が俺の方へ来た。
「よし、まずはリリー、操縦室に行って操作しろ。リバイアサンから一番離れる方向へ。残りのメンバーは、破損個所がないか船内に散って確認作業を! 俺は魔法で船を回頭させる」
俺は魔力を練り上げ渦を作るイメージで海の水を動かす。リバイアサンの所為で海面がうねり、イメージを伝えにくくなっているが何とか回頭させる事に成功した。
リリーが操縦室に付き、エンジンを回しリバイアサンから離れる。それに合わせて俺はさらに魔力を練り上げて海流を起こす。とにかくここから早く離れるためだ。
30分程かけて100キロメートル程は離れただろうか? 魔力をかなり消費してしまっている。俺は、DPで召喚した最高ランクのマナポーションの瓶を咥えてリバイアサンがいる方向を見る。
姿は見えないが、時々水柱が上がっているのは見える。どんだけだよ……スキルで目がいい事を踏まえても、この距離で水柱が見える状況ってかなり危険だよな。
「ここまでくれば、一先ず安心かな? みんなはここで待機。グレン、俺を乗せて飛べるか?」
『魔力さえあれば、何の問題も無い』
「ん? お前の魔力だけだと足りないって事か?」
『否、自重以外が加わると、魔力を消費する。魔力がある限り問題ない』
「そう言う事な。了解。じゃぁ試作品だけど、クリエイトアンデッドに使っている魔力補充機能を応用して作ったこれを装備させるよ。後、魔力が半分切ったら知らせてくれマナポーションを飲ませるから」
そう言って、俺たちはすぐに出撃準備を整えて出発する。
生身だったので止められたのだが、性能の低いドッペルゲンガーだと対応しきれない可能性があるので生身である。それにこの体、改造してからも成長しており、シュリの身体機能をすでに上回っているのだ。
グレンは調子を確かめるようにリバイアサンのいる方向へ飛んでいく。
『この道具良いですね。魔力が使った端から回復していきます。音速位のスピードでしたら回復量の方が上ですね』
おぉ、Sランクの魔石を複数使っているだけあるな。どれだけ魔力を消費しているか分からないけど、音速で移動し続けても俺に全く負担がない。慣性まで完璧に制御している。
「よし、リバイアサンに近付いてくれ」
怪獣大決戦が視認できる範囲に到着する。
相変わらずおそろしい光景だ。正直リバイアサンに水の中で勝てる気しないからな。それに、あいつらって肺呼吸でもエラ呼吸でもなく、皮膚呼吸で地上も水中も関係ないんだよね。おそらく空気の無い所に行けば死ぬだろうけど、地上なら魔法で水を作っちまうからな。実質無敵じゃないか?
まぁその無敵同士が戦うとなると、すごい光景なのだが……
体に噛み付いて肉を削り喰らっているけど、すぐに水が集まり体を回復しているんだよね。どういう原理か不明だが、水を使って体を治しているのだ。水魔法の回復魔法なのかな?
レーザーみたいな高圧水流で攻撃すれば、表面の皮膚は切れているのだろうがすぐに直ってしまうため、どっちも効果的な攻撃をできていない。
「リバイアサン、手助けは必要か?」
『してもらいたい所ですが、見ての通りお互いの攻撃が有効打になっていません。ご主人様でもこいつを殺し切る事は難しいのではないですか?』
確かに……言われてみれば、こいつに有効打を与えられるのだろうか?
『隷属魔法ですかね?』
悩んでいる所にグレンがアドバイスをしてくれた。
「さすがにリバイアサンの方がレベルが高いし、あれって接触しないと無理だから使えないけど……俺のダンジョンに引きずり込めば、掌握できるはずだ」
問題は、この何もない海原でどうやってダンジョンを作るかる? 大量の土を召喚して陸地を作るか? 北極みたいに氷しかない所でもダンジョンを作れるのか?
考えていてもしょうがない。ダンマスのスキルで、四国程のサイズの氷の塊を召喚する。ダンマスのスキルは、俺が起点になるから便利だよな。
「グレン、あの氷の上に!」
召喚したダンジョンコアを突き立て掌握してみる……成功した!
「うっし、問題ない!」
氷の島をドンドン掌握していき、全域を掌握する。そして、リバイアサンたちが入れる横穴を海の中に作る。
「リバイアサン、この氷の穴に突っ込んでくれ!」
そう言うと、絡みついているのか絡みつかれているのか分からないが、お互いに噛み付きあい氷の島のダンジョンに入って来た。
全身が入った所で、ダンマスのスキルを使って敵性リバイアサンを掌握する。
天変地異を起こせる化け物が2匹に増えちゃったな。
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