第1258話 ホモーク・ホモゴブリン参上

 精鋭たちは、襲撃された時の訓練と言った感じで対応していた。


 襲撃があった時は、あれだけ歓声の声を上げていた罪人共は、今は一転して使えない! だの、もっと気合を入れろ! だの、死んでも助けろ! だのと言いたい放題である。


 精鋭もさすがにイラッとしているのか、襲撃者の処理をする前に、命を懸けてすくいに来てくれた騎士に向かって罵声を浴びせていた罪人に、黙れ! といって馬車の中に入り鉄拳制裁をしていた。


 罪人は、パワーレベリングでもしているのだろう。体型や動きからは想像ができないくらいレベルが高い。それなりに鍛えているフレデリクの街の騎士団長が、大体120超えたくらいだったのに対してこいつらは、100近くもレベルがあったのだ。


 養殖とはいっても、自分で戦闘をしてレベルを上げていたのであれば、さすがにもっと動けるはずだ。それに、スキルが全くといっていい程無い。あるのは、犯罪の称号ばかりだ。


 まぁ、顔が陥没してもレベルのおかげで死ぬ事は無いので、精鋭も容赦なく殴って黙らせている。さすがに脳にダメージが入るとそういう訳にはいかないので、大体が鼻がぺしゃんこになるくらいで済んでいるが、それでもうるさかった奴は、手足を1~2本折られていた。


 静かになった所で馬車の修理を開始した。もともと壊す事を前提としていたわけでは無いが、簡単に車輪や軸を交換できるようになっていたため、30分もしない内に10台あった馬車の修理が終わる。


 そして罪人は、運命の場所へと運ばれていく。


 ホモークのエリアに到着した罪人は、この中では一番罪の軽かった者たちだ。そして、ホモークを見た罪人は、噂で聞いていたのかここだけは嫌だ! と騒いでいる。


 今俺は、ダンジョン農園の一画にある監視室へ来ている。そこで様子を見ている形だ。ゴーストタウンは全体がダンジョンの中にあるので、この部屋からならどんな角度からでも見る事ができるのだ。


 それで様子を見ていたのだが、本当にここ以外に行きたいのだろうか?


 疑問に思ったので、レイリーに連絡を入れて『ここが一番軽い罰なのだが、もっと厳しい罰の所に行きたいのか?』聞いてもらう事にした。


 そうすると、半数程がここは嫌だ! と言って、1ランク上の罰を自ら選択した。


 上の罰の奴らも明らかにホッとしている様子だけど、お前らの行く場所はそんなに甘くねえぞ? 特に精神的に追い詰められる、ある魔物の場所は天国のような地獄とでも表現すればいいのだろうか? 正直、何であんなに悪意のある魔物が生まれたのか謎過ぎる。


 ホモークのエリアに関しては、被害女性やその他一部の趣向の人の発散エリアになっているので、それなりに人がいるんだよね。今では時間を決めて、ショーみたいに行っているんだよな。


 ホモークに羞恥心は無いのか? と思ったが、ホモークからすると人間は、俺たちでいう所の蟲や魚みたいな認識らしい。そのままの意味では無いが、人間が虫や魚に見られていても何も思わないのと一緒で、ホモークからすれば人間の視線はその程度なのだとか。


 ホモークの中には、泣き叫ぶ相手を可愛がるのが好きで、その様子を見られていると興奮する……という変態じみた奴もいるけどな。まぁ、相手がいなくなる事がない上に、女性が対象にならないので安心して街の中を歩かせられる。


 ホモークに掘られたのであれば、100パーセント現行犯なので言い逃れは出来ない。ただ、新しいおもちゃ? を得るために、警備の手伝いをして犯罪者を探すのはどうなんだろ?


 犯罪者がホモークのエリアに入れられた。次の瞬間! 服は破かれ素っ裸にされていた。だらしない体を妻やスプリガンに見せるのも可哀そうなので視点を切り替える。


 そういえば、ホモークのエリアに3ヶ月も居ると無駄な贅肉が無くなって、かなり見た目の良い体になる。半年過ぎる頃になると、骨格でも変わったと思う程筋骨隆々になってそちらの道に目覚めているのがほとんどだった。


 悪夢だ。


 続いて罪人を乗せた護送馬車が向かった先は、ホモークエリアの隣にあるが、入場には許可が必要になる特別エリア、ホモゴブリンのいるエリアだ。


 ホモゴブリンについてはよく分かっていないのだが、ある程度は判明している性癖というか特性とでもいうべきものが、残虐性である。


 ホモークの変態じみた奴は、ただの性癖という意味の変態だが、ホモゴブリンはサイコパスという意味に近い変態だ。


 なんというか、肉体的に損傷を負わせたり、殺す寸前まで痛めつけたりするタイプの、超のつくドSと言う感じだろうか?


 なので、今回の一物を切り落とすと言った命令に関しては、嬉々として従ってくれる最高の人材と言えるだろう。


 ゴブリンは元々の性質上、残虐性の強い魔物だ。女性を捕まえても、生きていれば問題ないという認識で、当たり前に手足を切り落として逃げれなくするのだ。それに邪魔だと感じれば、乳房を切り落としたりもするらしい。


 そんな残虐性を持ったゴブリンの進化種であるホモゴブリン、知性が高くなり更に残虐度が増しているため特別エリアに指定された場所に入れられている。俺の支配下にある魔物で良かった。俺や権限のある者から指示されると、逸脱した行動をしないのが救いだ。


 その中では既に作業中のホモゴブリンがいて、罪人が苦しんでいる。もちろんホモゴブリンもホモーク同様の性質を持っているので、現在傷めつけている奴や痛めつけ終わった奴に相手をさせている者もいた。


 この惨状を見て、連れてこられた罪人は、ホモークから逃れた安堵が吹っ飛び顔が引きつっていた。悲鳴も上げられないくらいだ。


 とはいうけどさ、一番重い罪の奴らは、今ここで行われている事より残虐な事を平気でやっていたはずなのに、どうして今更顔を引きつらせるんだろうな?


 一番軽い罪でホモークは嫌だと言っていた奴らも、さすがにここはもっと嫌だったようで、初めに別けられた一番罪の重い奴らだけが中に入れられる。


 画面を切り替えて音量を消そうとしたが、それより早く悲鳴が聞こえて来た。失敗したぜ。年中組や年少組はいないからまだいいかもしれないが、それでも聞かせたくは無かった悲鳴だ。いわゆる『アァーーーーーーッ』的なあれだ。


 そして、最後のある魔物のいるエリアへ護送馬車が進んでいく。

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