第963話 まさかのラスト

 あれは……うん、俺がよく知っているイエティだ。でもな、想像していたイエティじゃないんだよ!


 俺が想像していたのは、雪男みたいなごっつくてゴリラの進化系みたいなやつで、それなりに頭も良くてそれっぽい物を想像してたんだよ!


 それが現れてみれば、丸い胴体に手足がついてる。ドラ〇エに出てくるイエティだぜ? 普通は驚くよな? しかもそれが体長3メートルを超えるような魔物であればなおさらだ。しかも、その体でよく木の間をスムーズに動けるものだ。


 あいつらの頭が悪いわけじゃないだろうけど、いいとは思えないビジュアルなんだよな。それなのに空を飛んでるグレンや、俺たちに向けて的確に投擲してくるんだぜ? あの見た目って……どうなのよ!


 なんて言っていたら、イエティに先制攻撃をくらってしまった。


 現れたイエティは全部で10匹。その中の3匹がブレスを吐いてきて、残りの7匹がどこから取り出したのか、氷の塊を両手で連続投球してきたのだ。


 メルフィとサーシャが前に出ており、2人が突然の攻撃だったがフォートレスを張って攻撃を防いでくれた。


 迎撃部隊は俺たちと合流をしないで、横を抜けてイエティを擦り付けた後、大きく迂回してイエティの後方に回り込んでいた。その中からシェリルが飛び出して、殴りつけた。スキルもなのも無いただ全力で殴りつけた攻撃だ。


 クリーンヒットしたはずなのに、イエティは多少ダメージを受けたかな? と思えるような動きにしかならなかった。タフというのは本当らしい。


 すぐに迎撃部隊に戻ったシェリルを襲う様に、ブレスが放たれ氷の塊を投げていた。どうやら、投擲に使っているあの氷の塊は魔法によって作り出した物らしいが、向こうにはシュリがいるのだ。あの程度の攻撃ではどうにもならん。


 問題なく対処していた迎撃部隊は、シェリルの攻撃によってイエティのヘイトを高めていた。ダメージはあまりなくても、ただ殴っただけでダメージを与えたのだ。そこに危険を感じたのだろう。


 っと、俺たちへの攻撃が緩くなっている今、攻撃のチャンスだよな? 魔法を使おうとして違和感に気付く。先頭に立っていたメルフィとサーシャの姿が見当たらない。


 近くにいたピーチに確認をしようとした所、次の変化が起きた。


 シュリの位置から見て一番遠くの氷の塊を投げていた2匹のイエティが、急に前に転がるように倒れたのだ。倒れたイエティに気付き仲間のイエティが振り返る。俺も一緒になってよく見てしまった。


 イエティの巨大な体の陰からメルフィとサーシャが現れて、俺の近くに戻ってくる。


 苦しんでいるイエティが動かなくなりドロップ品に変わる。仲間が倒され、残ったイエティが怒り狂ったかのように暴れ出した。


 今まで遠距離で戦っていたこいつらが、わき目もふらずに俺たちに向かって突っ込んできたのだ。


 打撃に強いように思われていたイエティは、浸透勁の前では無意味であった。鈍器の攻撃にはやはり強く、鈍器メインのリンドは両手鈍器から片手鈍器と盾のスタイルになりタンクをしていた。


 後、毛が堅いのか皮膚が柔軟なのかよくわからないが、斬撃による攻撃も思うように効いていない。ただ、突きによる一点突破は有効なようで、槍や剣による突き、使う事はあまりないと思っていた重死鉱石から作った矢も効果的だった。


 重死鉱石は、死がついているから危険なモノではなく、精製して使うと硬く頑丈で壊れにくいのだが、とにかく死ぬほど重いのだ。なので、力の強い戦士が斧や鈍器に使う金属らしい。アダマンタイトの2倍は重たいのでかなりの重量だ。


 それで作った矢があったのだが、矢としてはあまりにも重いため弓での使用は諦めて、ボウガン用に再加工してあった物を今回使っている。射程距離が短いので魔法付与なんかで頑張って伸ばしても、20メートルがせいぜいだった。


 まぁ近付いてきているイエティは、ボウガンにとっては良い的になっただけだな。弓は効果が薄いと判断してボウガンに持ち替えていたメアリーとマリア、グッジョブだ!


 魔法組は、イエティが近くて迂闊に魔法を使えないので、弓に変わって上空の警戒をしている。今もイエティの攻撃に合わせて木の上にでも隠れていたアイスバードが、俺たちに攻撃を仕掛けてきているが魔法組のメンバーに撃ち落とされている。


 飛べる魔物の弱点は、素早い代わりに撃たれ弱い魔物が多いので、範囲を広げた火魔法につつまれて次々にドロップ品に変わっている。


 イエティの方も残り4匹。その残りも、シュリの無情な投槍が何本も刺さっており、動きが取れなくなりつつある。よく足や腕にピンポイントで当てられるもんだな。


 あれ? 4匹の魔力が高まってないか?


「ピーチ、何かヤバい気がするぞ!」


「みんな、一ヵ所に集まって!」


 俺とピーチの声が重なった。俺の警告を聞く前にみんなも行動に移していたので、俺だけではなく全員が危ないと感じていたのだろう。


 初めは動けなくなってきたから、強い魔法でも使うのかと思ったが、魔力の高まり方が俺らが強い魔法を使う時の感じと全く違い、強引に魔力を体の中に圧縮しているような感じだったのだ。あれでは魔法が放てない……と思う。


 何が何だか分からないが、俺は普段使わない大盾、趣味で作った装飾過多な盾だ。飾っておくのにはいいかな? と思って収納の腕輪の中に放置していたのを、思い出して取り出したのだ。


 普段なら忘れてて思い出しもしないのに、危険を察知した時の人間の底力ってすごいな。


 みんなの前に出て大盾を両手で構え、全力でフォートレスを張っていた。隣ではシュリも俺と同じようにフォートレスを張っている。


 イエティの魔力が高まりが最高潮に達した……と思う。全身から何やら光があふれている。次の瞬間、

爆発した。


 フォートレスを襲う強力な衝撃に驚きながらも問題なく耐えきることができた。だけど目の前の惨状を見て肝を冷やす事となった。


 フォートレスで防御した外側は、何と表現したらいいのか。イエティたちを中心に無数の氷の槍が、全方向に咲き乱れたとでもいえばいいのかな?


 あ! 地獄にあるって言われてる針山みたいなのが氷で作られた感じかな?


 これ直接くらってたら結構ヤバかったんじゃないか? それにしても自爆する魔物が寒い地域にいるとは。


 無駄に動けないようにする前に止めを刺していくべきだな。浸透頸か心臓や致命傷になる攻撃をする必要があるな。


 雪山での初戦は終わった。

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