第942話 思うように進めない

 昨日に引き続き、西北西のスペースのある所へ来ている。俺が予想した通り、ここにもやはりダンジョンの入口があった。


 昨日、東側のダンジョンで召喚したウィスプがマッピングした地図が、この入り口の中に入っても作動したので、東側のダンジョンとも繋がっている事の確認が取れた。


「う~ん、この様子なら南側にあるダンジョンとも繋がってるんだろうな」


 なんて言ってるとフラグになってしまったようで、


「このダンジョンの入口だけ、他の入口と繋がってないとは……あんな事言うもんじゃないな」


 フラグになったとはいえ、言わなかったからこの結果が覆るわけもないのにそんな事を思ってしまう。


 さすがにこのままダンジョンアタックとはいかないので、中央に戻る事にした。どういう風にするか悩む問題だな。まぁ全部繋がっていて、下層に行くにつれてフロアが繋がっていなかったりしたら、それはそれで面倒なのだが。


 慣れたせいか、昨日より中央に戻ってくるのに時間がかからなかった。夕食までの時間を使って一応話し合いをする事になった。色々な意見が出るが、決定的なモノはなにもない。そりゃそうだ、情報が少な過ぎて、判断できるわけがない。


 まぁ、広い方か狭い方か2つに1つなんだけどね。1階が繋がってないだけで、先の方では繋がっている可能性だってあるけどな。ダンジョン自体が繋がってなくても、横穴があったりする可能性はゼロじゃないしな。


 こんな事がなぜわかるかと言えば、神のダンジョンを攻略した時に、横穴を作って出たけどその時に別のダンジョンが物理的には繋がってても、ダンジョン的に繋がってないと検索できなかったからな。


 決めろって言われても困るから、この際多数決でいいんじゃないかな? なんて思わなくもない。


 しばらく時間が経って、ボーっとしながらお腹空いたな~って考えている所に、


「……人様! 御主人様!」


 ん? どうかしたのか周りを見てみると、呆れた顔で俺の方を見ていた。


「判断材料が少なくて、結論が出ないのでどうしましょうか?」


 とピーチが言ってくる。


「俺も分からないから、みんなで多数決でいいんじゃないか? どっちになっても恨みっこ無しで! あ、俺は参加しないからね。俺が手をあげた方に人が増えそうだからな」


 妻たちが全員納得顔で頷いていた。俺と同じ方にあげる気満々だったのかよ!


 厳正なる多数決の結果、圧倒的多数で狭い方のダンジョンになった。俺も、1つだけ他のダンジョンと繋がっていないのが気になっていたので、これでよかったと思う。まぁ間違っていたらもう片方のダンジョンに潜ればいいだけだしな。


「という事で、明日からはダンジョンに潜ろうか。シルキーはどうするのかな?」


 料理を配膳中のシルキーに聞いてみると、ここに残っても暇だからついていくとの事。確かにここでは家事仕事が今のとこ料理位しかないからな。シルキーにとっては、ここで無為に時間を過ごすのは精神衛生上良くない可能性が高い。


 明日の行動も決まり、夕食を食べのんびりとした時間を過ごし、日が明けた。


 今日はあいにくの天気だが、進まないわけにはいかないので足を進めるが、雨が鬱陶しい。


「ご主人様。この際、通路を作りながら進むのはどうですか?」


「あっちの島みたいな通路だったら、結局敵がいっぱい来て面倒じゃないか?」


「いえ、通路と言っても床を敷くだけじゃなく、上下左右を囲った通路を一直線に作ってみてはどうでしょうか?」


 造るのは面倒だが、次回以降の移動は楽になるか? 島に不自然にある石の列、魔物たちに壊されないかな? まぁ、多少でも鬱陶しい状態から解放されるならやりますか!


「刈り取らないといけませんね。ライムお願いします」


 前の島で使ったような大規模な物ではなく、通路の分だけを綺麗にするような圧縮された火魔法が放たれた。縦に発生する竜巻が細くなって横になって、更に炎の竜巻になって進路方向の木々を焼き払っていた。


「おぉ……結構えげつない魔法だな。んな事言ってる場合じゃないな。今度は俺の番!」


 イメージするのは、遺跡型の綺麗にレンガなどで通路が造られたダンジョンのような通路!


【クリエイト・コリドー】


 魔法名は、効果そのままの英語にしてみた。イメージしやすいのがいいっていうからな! 通路を作る魔法、ほんとそのまんまだな。


 広さは縦横4メートル位だろうか? 大分広めに作ったから、結構余裕をもって歩けるサイズにしてある。もしかしたら馬車を使うかもしれないと思って、このサイズにしている。距離はおよそ1キロメートル位先までは、造ったつもりだけどどうだろな?


 思ったより魔力を使ったが、他の皆に同じことをやれと言っても、いきなり大きさをあわせて作れるわけがないので、俺が一人でやることになるだろう。覚悟を決めて進んでいく。


 どの位の距離を造れたかはっきりとは分からなかったが、1キロメートルは造れたのではないかと思う。それより、ライムの使った魔法は、まだまだ先まで届いているようだ。少なくとも、クリエイト・コリドー2回分位はありそうだ。


 雨に濡れることなく進む事は出来ているが、魔法を使う際にちょいちょい襲ってくる魔物たちがうざい。そして、半分くらいまで通路を作って気が付いたが、この通路はダンジョンじゃないから空気穴が必要だという事に今更気付いた。


 さすがに戻るのは面倒なので、これからは進みながらみんなに空気穴をあけてもらう事にした。あまり大きいと、ヘビが入ってくるかもしれないので、小さめの穴をそれなりに多く確保する事にした。


 途中に昼食休憩を挟んで進む事5時間、やっとダンジョンの入口に到着した。ダンジョンの入口にそのまま通路を繋げるのも良くないと思い、入口の周辺を綺麗に掃除してから壁と天井を造ってからおやつ休憩に入った。


「ご主人様、今日はこのまま進みますか?」


「いや、さすがに魔法をずっと使ってたから疲れたよ。できるなら今日はもう休みたいね」


「了解です。でしたらこのまま野営の準備を始めますね」


 ピーチがそう言うとみんなが一斉に野営の準備を始めた。シルキーたちは、すぐにキッチンを準備してそのまま調理に取り掛かっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る