第938話 謎が深まる

 ふ~とんだ目にあったぜ。油断して危機に陥ったけど、その後の方がよっぽど大変だった。3時間も説教されたら、さすがにね……


 その上、年少組まで説教の輪に入ってきて、あーでもないこーでもないと言い始めて、カオスな状態で説教を長時間されたのだ。少しくらいは休ませてくれよ。


 あっ、ちなみに今はお風呂の最中です。俺を1人にして置いたら何をしでかすか分からないと言われたので、ダマやニコやハクに監視させれば問題ないんじゃないかと言った所、


「その3匹ではいざという時に役に立ちません。ここは私たちで監視をさせてもらいます!」


 と、全員で息の揃った返答をもらった。練習してたんじゃないかと思う位、自然に声が揃っていたのには驚愕したけどね。


 で、今はみんなからご奉仕という名の洗身をされている。自分で洗えるのにそれをさせてもらえない。言い訳をしようものなら、ベッドにでも縛り付けておこうか? 等という怖いフレーズまで聞こえてきた。


 なので、みんなの気が済むように身をゆだねている所。


 そういえば、最近は裸でも問題なくなっている。別に妻たちの裸を見飽きたとかそういう事ではない。そういう事を意識していないと、問題が無くなったのである。あっ、でも触られると敏感な所なので大きくなってしまうから、そこだけは死守して自分で洗う事が出来た。助かった。


 お風呂をあがって、そのままみんなでベッドに向かって寝る事になった。


「さて、どうしようか? 今日は何をするところから始めようか?」


 ダンジョンの入口を探すのが重要な目的ではあるが、やみくもに探しても見つかるわけがないので、方向性を決めようという事だ。


 昨日と同じで周囲には魔物の気配がなく、同じラインまで敵が出てこないとしたら周囲約2kmには魔物がいない可能性が高いのだ。


「最短距離を進んできたんですよね? そう考えると、東西のどちらかに進むのがいいと思います。なので、今日は東西とここに待機する3チームに分かれてはどうですか?」


「シュリ、東西に分かれるのは良いけど、待機組はシルキーたちって事?」


「シルキーたちもそうですが、ご主人様もここにいてもらおうかと」


 シュリがピーチの質問に対してそう返すと、みんなが納得した様子を見せる。


「っと、まてまて! 昨日の事は謝るってるじゃん! それに、みんなだけを危険な所には、絶対行かせないからな! 俺もどっちかに参加するぞ!」


 30分程言い争い、何とかここに残らないで済むようになった。待機組には従魔たちを残して、何かあった時のためにシルキーの護衛をするようにお願いしている。


 残りの俺たちは2チームに分かれて、防御力の高い俺とシュリが別れる事になった。後はバランスよく配置されていく形だ。それと、俺の監視役として三幼女が俺の近くに常にいる事になった。この3人がいれば、俺が無茶しないだろうとピーチが考えた策だ。


 それに俺のチームは、俺が指揮する事によって前に出辛い状況にして、回復の要であるヒーラーもネルしかいない。それは、俺にもヒーラーとしての立ち位置から指示しろとピーチが暗に言っている。


「そっちのみんな、もしご主人様が無茶したら簀巻きにしてここまだ戻ってきてくださいね」


「昨日の事があるから信用ねえな。とりあえず、2~3日は日帰りで行けるところまで行って魔物の強さの変化を確認する形でいいんだよな?この地図に大体の強さを書いていけば問題ないかな?」


 という事になった。


 そして俺たちは、方向と距離が分かる魔導具の片割れをここにセットして、東西の門から出発する。


「とりあえず、魔物が出ると思われる所まで走ろうか。途中に何回か【クライ・オブ・ザ・バンシー】を使いながら道中に敵がいないか確認しよう」


 2キロメートル程走りながら、何度か魔法を使っているが魔物の反応は無かった。


「みんなストップ! 魔物の反応が出てきた! ここから40メートル程先!」


 どうやら魔物の反応があったようだ。


「ご主人様、やっぱりこれって何か変だよね! 魔物がいる場所といない場所に、境界線みたいなのがあるの! おかしいと思うの!」


 近くにいたネルが、おれにそう主張してくる。ん~確かにおかしいんだけど、何がおかしいのか証明できないから困ってるんだよな。


「砂浜と森みたいにここにも境界線があるのに、内側には魔物がいないのって変なの!」


 そう言われれば昨日は気付かなかったけど、ちょうど反応のある境界線付近の内側と外側の木が違っているのが分かる。昨日はあの2匹のオオカミがいたから敵がいないエリアができていると思っていたが、改めて考えると、ダンジョンとしては明らかにおかしい。


「もしかして……イリア、ここに穴を掘ってみて」


「え? ダンジョンの中じゃ穴なんて掘れないよ?」


「出来なくてもいいからやってみてくれ」


 俺がそう言うと渋々といった感じで、土魔法の【ピットフォール】を発動した。何で使った魔法の種類が簡単に分かったかと言えば、


「やっぱり穴が掘れるな」


 魔法によって穴があけられたのだ。妻たちは驚いているが、可能性として考えていた俺は、そこまで驚く事はなかった。嫁達が混乱して俺に聞いてくるので説明をする。


 魔法で穴を掘れたという事は、ここがフィールドダンジョンでないという事だ。その可能性で導き出される答えは、この島は元々フィールドダンジョンではなく、ただの島だった可能性が高いという事だ。そして、昨日たおした2匹の狼の縄張りだったのではないかと予想できた。


 ダンジョンの外からダンジョンに入る魔物はいるけど、ダンジョンマスターの命令無くダンジョンの外に出る魔物は、ほとんどいないのだ。それを考えると、2匹のオオカミはダンジョンの魔物では無いという事だ。


 そして、人がいる所にはダンジョンを造れない。エリア掌握だけではダンジョンにならないのだが、自然発生のダンジョンは、エリア掌握しないでそのままダンジョンになっている可能性があって、2匹の強い狼のいるこの半径2キロメートルの円内を、ダンジョン化できなかったのではないか? という所だ。


「……だと思う。でも、これは俺の予想だからな。ただ、ここがダンジョンじゃないのなら、する事は1つだろう。飛び地になるから、ダンジョンコアを用意して、フィールドダンジョンにのみこまれる前に掌握しておこう」


 ダンジョンマスターのスキルを使ってダンジョンコアを召喚してここら辺一帯を掌握する。


「やっぱり、直径4キロメートルのほぼ円状だな」


 よくわからない謎が増えたが、もしここに休憩エリアなり人の集まる場所を造るなら、ちょうどいい場所だな!

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