第933話 探索!

 昨日判明したことは、外縁部の砂浜にいるシャークマンは、外周の森の中の魔物よりLvが圧倒的に高い。そして、現時点では森に入ってこないので、一方的に攻撃が可能だった。


 フィールドダンジョンのルールが変わったら、入ってくる可能性があると考えている。何処まで神がルール変更をできるか分からないが……


 森の中、約4キロメートルは魔物のLvが40前後であり、中級冒険者たちには結構いい狩場になりそうな予感。森を切り開いた時は、20匹ほどまとまって攻撃を仕掛けてきたが、切り開かない状態で進んでいくと散発的に1~3匹の襲撃があっただけだった。


 無理をしなければレベル30台の冒険者でも、6人パーティーなら余裕をもって倒せるのではないか? そしてフィールドダンジョンなので、レベルやスキルの上がり方が早いはずなのだ。戦力の底上げには向いてそうだ。


「さて、今日はもう少し島の中心に向かうか?」


「そうですね。あっちの島みたいに道を造ると集団で襲ってくる可能性があるから、道を造りながら進むのは無しですね。後は、拠点になる所だけ切り開いて広場にしておきますか? 森の中で休憩できる場所が無いと面倒ですし」


 ピーチと話しながら砂浜に降り立っている。今日から島の中心に向けて移動を開始するのだが、シルキーも付いてきている。残るのは一緒に連れてきたブラウニーの2人である。この2人は、船の管理と亀たちの世話をまかせている。念のためシエルはこっちに配置している。


 森の中を進むのは、俺と妻たち、シルキー、バッハ、ダマ、俺の従魔6匹、ミリーの従魔4匹の大所帯である。森の中に強い、ダマを中心にウルフ系の従魔4匹が先行しながら進む形だ。


「さて、今日もあいつらでてくるかな?」


 昨日も一昨日も、ある一定時間が経過すると、砂煙をあげて接近してきていたから、今日も砂浜の真ん中付近で一時的に止まって、現れるのを待っていた。しばらくすると、


「砂煙が上がりました!」


 東の方を見ていたメンバーから声が上がり、すぐに森の中へ駆け込む。


「やっぱり、森の中には入ってこないな。集団になっても入ってこないのかな? ピーチ、試してもいいと思うか?」


「問題ないでしょう。シュリ、前に出てください。みんなフォローできるように攻撃準備。あまり重たい一撃は無しでお願いします」


 そう言って、シャークマンとの戦闘が開始された。戦闘と言っても、蹂躙戦に近かったのでシャークマンは何もできずに、初日と一緒で死ぬ間際に叫んで仲間を呼び寄せた。


「んー森の中からの攻撃だと叫んで仲間を呼ばないのに、砂浜でガチバトルすると仲間を呼ぶんだろうな?」


「その考察は後にしましょう。みんな、森の中に。タンクは前面に出てフォートレスを、突っ込んでくる前提で展開してください。魔法組は船に当たらないように広域殲滅出来る魔法の準備をお願いします」


 接近までにまだ少し時間がある。魔法組は集まって相談を始めた。10秒ほどで発動する魔法を決めたようだ。魔法陣を展開したのはイリア、初日に使った精霊の樹魔法を放つのだろう。残りのメンバーがイリアの近くに待機していつでも魔力を注ぎ込めるような体勢になっていた。


 あっ! そういえば、魔法陣の事について聞いてなかったな。まぁ今じゃなくてもいいか。


「それにしてもこういう結果になるとはな。フィールドダンジョンのルールが変わらなければ、パワーレベリングが簡単になっちまうな。この世界のルールとしてどうなのだろうか? 魔物から見れば理不尽な状況だけど、いいのかな?」


 この世界は、一方的にどちらが有利という状況は基本的に無い。まぁレベルによる上下はあるが。


 むやみやたらに推奨しなければいいかな? もし森の中に突っ込んできても、冒険者だから自己責任という事で問題ないよな?


 って、そんな事は今はどうでもいいか。そんな事を考えている間に、森からの一方的な攻撃で追加で現れたシャークマン7匹は、ドロップ品に変わってしまった。


「予想通りと言えば予想通りでしたね。少し困る魔物ではありますが。さて、気を取り直して進みましょう。ダマ、先導頼みますね。斥候のメンバーも前に出て索敵をお願いします」


 当初の目的通り島の中に向かう事になった。


 シルキーは魔物が弱いと分かって余裕なのか、ダマが指揮するオオカミの従魔4匹に分かれて乗っている。久しぶりの前線での行動なためか、テンションが高い。もう少し静かにした方がいいぞ。


 襲撃してくる魔物の数が1~3匹では、ウルフ達に一撃で沈められている。それにしても、倒すのに時間がかかっていないのに、ドロップを拾うのに時間がかかっているってどういうことだよ。


 3時間程で昨日の倍の距離、8キロメートル程進む事が出来た。多少蛇行している事を考えれば、時速3km以上で森の中を魔物に警戒しながら倒して進んでいる。


「お昼の時間になるし、ここら辺に休憩スペースでも作ろうか」


 どの位利用する人間がいるか分からないが、俺たち全員が余裕をもってくつろげる広さにしておけば、問題ないかな?


 半径15メートル程の範囲の木を燃やした。火がうつらないように、先に壁を作ってから燃やしたけどね。壁の中に入ろうとしたがさすがに熱すぎて危険だったので、水魔法で冷やしてから中に入っている。


「このままだと、また木が生えるだろうから、石床を作ってしまおうか!」


 魔法を使って石を敷き詰める。


「シュウ君、これだと普通の冒険者が持ってるテントとかが建てられないと思うわ」


 そういえば、この世界のテントは地球でキャンプに使う三角テントみたいなのが基本になるので、棒2本、グランドシート用の布や魔物の皮、親綱、ペグで簡単に立てられるタイプだ。壁とか洞窟内、ダンジョン内でも使う事を考えて、色々な固定具が売られているそうだ。


「じゃぁ、この上に土を盛るか? 石床の上に直接土ってあんまりよくないよな? 適当に石とか砂利を敷き詰めて土を上に盛るくらいでいいか。金とって何かをするわけじゃないしな。後は、水の確保ができるようにしておいた方がいいか?」


「それだと、物によっては壊して持っていこうとする冒険者も出るんじゃないかしら?」


 ミリーに言われて、納得してしまった。品行方正な冒険者ばかりじゃないからな……


「と言っても井戸は掘れないし……いや、掘れる事は掘れるけど、水が出てくるか分からないし、管理が大変か」


「ご主人様、考え過ぎです。ここまで来るのであれば、水の確保が自力でできなければダメです。もし水が確保できないのであれば、ここまでくる資格はないです。比較的安全に休憩できるエリアがあるだけ感謝するべきです」


 バッサリと切って捨てたのは、アリスだった。アリスの剣技みたいに見事に切り捨てたな。


「シュウは気付いてないだろうけど、井戸が無ければ、水はある程度お金を払って得るものですよ。ディストピアやゴーストタウンで、水がタダで使えるとか異常なんです。なので、拠点でも水を提供するのであれば、それなりのお金をもらうべきよ」


 カエデがそんな事を言っていた。


 俺は魔法や魔導具、ダンジョンマスターのスキルで水に困った事が無かったから、気にしたことが無かったが、水は生きる上で必要不可欠だもんな。もう少しこの世界の常識を知らないといけないかな?

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