第931話 ちょっとした失敗
森に向かって歩いたが、到着するまで何も起きなかった。先程みたいにまたシャークマンが出てくることも無かった。
湖にあった島でもそうだが、この島でも人が切り開いたみたいに、100メートル程ある砂浜を超えると急に木々が生えており、森といった様子になっている・・・
あれ? 湖の方って、ダンマスのスキルで掌握できなかった部分が、フィールドダンジョンとして残ったんだよな? 何で海岸があったんだろう? フィールドダンジョンは、隣の環境に合わせて変化する特徴でもあったりするのかな?
どうでもいい事も気にしながら、警戒して進んでいく。
砂浜と森の境界線に到着したが、俺も含めみんなの索敵に反応は無い。
「敵が少ないのか? それとも、たまたまいないだけ? もっと奥にたくさんいるのか?」
俺は独り言のようにブツブツ言っていた。いつものように俺の事は、無視してピーチが指示を出している。一先ず、100メートル程更地にするようだ。
どれくらいの期間で木が生えてくるのか? 切り開いたらさすがに俺たちがいる事は分かるはずなので、そのまま突っ込んでくるのかを調べるらしい。ちょっと過激な気がするが、森の中でいきなり遭遇するのは微妙だしな。今日は無理に進むわけでもないしそれでいいかな?
どうやって切り開くのかと思えば、魔法でなく最近活躍できていないと愚痴っていたアリスが、新技? 新スキル? の試しという事で張り切っている姿がみえる。
いつも愛用している両手剣を構える。数秒ほど止まった姿でいると、アリスの持っている剣が光り出した。久しぶりに見た魔法剣の発動兆候だ。
止まってから20秒ほどが経過した。力を貯めているのが分かるように、剣が発している光が次第に強くなっている。
30秒が過ぎる事にアリスが体制を変え、体をねじるように両手剣を左にかまえる。
次の瞬間! 剣を高速で振り抜く。どの位の距離か分からないが、アリスの位置を中心に扇状に木々が倒れていった。
「すごいんだけど、これって探索しにくくないか?」
おそらく風の魔法剣だと思うのだが、木が乱雑に倒れて進むのが大変そうだ。それに、砂浜と森の境界線で剣を振るって扇状に切り開かれたため、森の中で木が倒れている状況なのだ。
砂浜に沿って生えている木が倒れていないため、外に運ぶにしてもある程度木を切らないと運び出せない。それに木がどれくらいで生えてくるか調べるなら、切り倒した木は全部回収するなりしてどかさないといけないんだよね。
そこら辺を考えないで、ピーチもアリスに指示を出してしまったみたいで、2人そろって気まずい顔をしていた。ピーチは、いつもきりっとしている印象なので、こういった顔を見れるのは珍しいな。
気を取り直して出された指示は、木の回収だった。ただ、全部をまともに回収するのは面倒なので、裏技を使う事にしたようだ。バッハに今日の夕食に好きな肉を出してもらえるように頼むから、木を海岸に運んでほしいとお願いしていた。
ごちゃごちゃしている所で枝を落としたりするのは面倒だからな! バッハは食事がよくなると喜んで協力してくれている。
ダマとシエルも自分達も活躍できる! というアピールをして、森から木を引きずり出していた。今の飯でも十分美味いと思うけど、好きな物となると違うのだろうか? 活躍した2匹もピーチがシルキーに交渉してくれると約束したためか、大きな姿で器用に踊っていた。
2時間もすると切り開いた木の枝打ちが終わった。しまっておく必要もないので、海岸に並べておいてあるけどな。何かの時につかえばいいだろう。
「ピーチ、どうする? 夕食まで微妙に時間は残ってるけど、探索する程の時間は無いけど」
「切り開いた場所でも、切り株が残ってるから戦闘するには向いてないですね。こんな事に時間をとられるとは思いませんでした」
「たまにはそういう事もあるよ。戦いにくいと言っても、早めに何度か戦っておきたい気持ちはあるんだよな。ミリーはどう思う?」
「戦闘の時だけ切り株を埋めたらどう?」
俺とピーチは、声をそろえて「ナイスアイディア!」と言って、ミリーに向かって指まで指してしまった。
魔法組が切り株が埋まる高さまで土を盛ってくれた。湖の島では、切り開いた場所に土魔法でも石を敷き詰めて木を生やさないようにしたが、ここは単に柔らかい土を魔法で生み出して盛って均した状態だ。
ピーチの指揮のもと警戒しながら進んでいく。アリスが一撃で切り開いた距離は、およそ150メートル程かな? 思ったより遠くまで魔法剣の効果が飛んだんだな。気付いたら真っ二つとか、魔物からしたら最悪な死に方だな。
100メートル程進むと索敵にはまだ反応は無いが、索敵の外側から魔物が近付いているのが視覚で発見した。
「視界内におよそ20匹の魔物を確認。1度に襲ってくる数としては多めです。タンクは前に出て接敵直前にフォートレスを、その前に弓と魔法で単体攻撃をしてみましょう」
ピーチの指示に従って、魔法組と弓使いが攻撃する方向を瞬時に決めて、撃ち出した。
土魔法のアーススピア、氷魔法のアイススピア、雷魔法のサンダースピアをくらった魔物は、死ぬまでの差はあっても魔物を一撃で屠る事が出来た。それに対して、火魔法のファイアスピアはダメージは与えられても、倒す事は出来ていなかった。致命傷1歩手前と言った所だ。
弓の方は、頭に矢が刺さった魔物はすぐに絶命した。心臓のありそうな位置に刺さった方も絶命していた。急所に当たれば一撃で倒せるようだ。急所だから頑丈になっているとかはなさそうだ。
タンク達がフォートレスを使い魔物達の突撃を受け止める。
「平均40前後の魔物ですね。スキルもステータスもその辺のLv帯の魔物と変わりません。ただそうなると、ファイアスピアで死ななかった魔物は何なんでしょうね? 火に強い魔物だったのでしょうか?」
Lv40前後で、妻たちの魔法を受けて生き延びた事に少し驚いた。
魔物のタイプとしては、四足歩行の獣タイプの魔物が大半を占めている。フレデリクの近くにあった獣道の森と、同じタイプの魔物かな?
Lv40の魔物など、どれだけ数がいても問題にならなかった。2分もする頃には全部ドロップ品に変わっていた。
「外縁部のサメの魔物が特別っぽいですね。森の中であれば、結構低いレベルのパーティーでも問題なく倒せそうですね。ただ、囲まれたりサメの魔物に会ったら全滅しそうですが」
ミリーの評価にみんなが頷いている。
「今回は切り開いた所に集団で魔物が襲ってきたけど、普段の森の中だったら襲ってくる数は減るのかな?そこら辺は明日調べようか。サメの方も森に入ってくるのか調べないといけないし。周辺の魔物の強さは確認できたから良しとしよう!」
そう言って、今日の探索を終わりにした。
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