第819話 意外な所に手掛かりが

「グリエル、報告だけさせてもらう。今、バザールが土を収納の箱に突っ込んでるから、満タンになり次第送り出すことができるぞ。明日には2台目を準備する予定だから、そっちはフレデリクで汚染された土を運ぶのに使ってくれ。


 一応、リアカーも準備しておくから、馬車まで運ぶのにはリアカーを使ってもらうように伝言しといて。リアカーは空の馬車に入れておくよ」


『了解しました。万能薬と散布機は、もう送り出しております。明日には稼働させられると思います。フレデリクの土壌入れ替えや街の拡張、周辺の町の壁作成は、計画書を確認してもらったらこちらで進めておきます。明日の朝までに準備しておきますので、確認お願いいたします』


「無理すんなよ……徹夜になるくらいなら、明後日でもいいからグリエルの体の方を優先してくれ。お前が倒れると俺が困る! 俺以上にガリアが泣くぞ」


『私が倒れても、育てたメンバーがしっかりと穴を埋めてくださいますから、全然問題ありませんよ』


「そういう問題じゃないっての。本当に体は大事にしてくれよ」


『これが終わったら、少し休みをとらせていただきますので大丈夫ですよ。では、他の人間と計画書を作ってまいります。では、明日』


 本当に大丈夫だろうか? グリエルといいガリアといい、ワーカホリックにも程があるよな。地球では働き過ぎと言われている日本人より、はるかに働いているのに、それでも足りないと言わんばかりに働くからな。


 といっても、こき使うのは俺だもんな、少しは押さえないとな。俺や妻たちのドッペルも手伝ってるから、前に比べれば大分負担は減ってるはずなんだけどな。


「バザール、後は任せるよ。ドリアードには話しておくから、手が空いた時に土づくりを協力してもらってくれ。じゃぁよろしく」


「また明日でござる」


 バザールと別れてディストピアの自分の家に向かう。あれ? 久しぶりに1人っきりな気がするな。ニコもハクもダマもいないなんて珍しいけど……久しぶりに1人だから、ゴーストタウンでも散策しようかな? 夕食まではまだ時間あるからな、なかなかこんなチャンス無いし楽しもう!


 行く場所といえば、中央通りにある屋台か俺の商会以外の店に行って、掘り出し物がないかの確認だな。こういうのは、マップ先生じゃ探せないからな。探すのが楽しいだけで、別に何もなくても面白いからそれでいいんだよね!


「食事は家に帰れば、シルキーたちの美味しいご飯が食べれるから、掘り出し物探しに行くのが無難だな。時間的に、1時間ほどはまだ余裕があるから、何件かまわれるな」


 1店舗目は、オーソドックスな商会なようで、ターゲット層は冒険者の集まる街という事もあって、冒険に必要なあれこれが置いてあった。武器や防具ではなく、冒険の便利グッズの専門店のような感じだった。


 そこで、気になったマジックトーチというものを購入した。俺には必要はないのだが、結構作りの良さそうな魔導具だったので、購入してから分解してみる予定だ。魔力効率もよさそうだし、魔力を使わない前衛メンバーが使っても、魔力切れをおこさなそうな一品だった。誰が作ったか気になるね。


 2店舗目は、武器防具店だった。ドワーフの作っている武器を見過ぎたためか、イマイチの印象しか受けなかった。値段も程ほどで、初心者向けというよりは、使い捨てにしてもいいような感じの武器が多くみられた。


 話を聞いてみると、武器を修理するにしても限界があるので、愛用している武器は本命に取っておくことが多いそうだ。


 話を聞くと、RPGみたいに同じ武器をずっと使ってれば、いずれ使えなくなるのは当たり前だよな。修理のあるゲームもあるけど、ずっと同じ武器なんて普通は使えない。


 面白い情報が聞けたので、買い物ではなく、ドワーフが不良品といって押し付けてきた在庫を、10本ほど押し付けてそのまま店を後にする。


 次が時間的に最後のお店だな。大通りに見難い看板が出ており、ちょっと路地に入った所にある隠れ家的な魔法薬店だった。屑品から高級品まで幅広く取り扱っており、値段も相場位だと思う。


 それより気になるのが、用心棒みたいな人がいないな……と思ったら、店主自体が結構レベルが高かった。必要が無かったので、購入せずに帰ろうとした時に、気になるものを発見した。


「店主! これって何処で手に入れた?」


「あ~このよくわからない魔法薬か。毒ではないけど、よくわからない代物だったから賑やかしでおいてるけど、情報がほしいってんなら、出すものだしてもらわなきゃしゃべれないな」


 そういって店主が指を1本たてていた。俺は収納の腕輪から大金貨を1枚取り出して店主に渡す。


「なっ! 坊ちゃん貰っておいてなんだが、さすがにこれは高すぎるんじゃないか?」


「店主、いったん店を閉めてもらってから話を聞いてもいいか? 大切な話なんだ」


 そういうと、店のドアについていた木の板を裏返して、オープンからクローズに変えて、真剣な顔で俺に向き合う。


「この薬が大金貨1枚の価値があるのですか?」


「まず始めに、俺の身分を明かしておく。この街の領主だ。そしてこの魔法薬は『魔熱病』の薬なんだ。だから、何処で手に入れたのかを知りたかったんだ。


 俺の街の1つのフレデリクでその『魔熱病』が起きてその原因を探ってる時に、たまたま見つけたから情報がほしくて金を払ったんだ。この街以外だったら捕まる可能性があるから、注意しろよ。これは俺がもらってくからな」


「『魔熱病』ですか、聞いた事がありますね、確か1つの国を壊滅に追い込んだというあれですか? そうなんですね。知らないとはいえ、そんな危ない物を持っていたとは、この魔法薬を手に入れた場所ですね」


 そういうと店主が、どこで手に入れたのかを話してくれた。

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