第818話 専用馬車と馬を作ってみた
「バザール、ここに来てもらって悪いけど、入れ替え用の土の準備してもらっていいかな? 何が必要になる?」
「そうでござるな。主殿が前に使っていた、馬車みたいなのがあると助かるでござる。積み下ろしはできなかったと思うので、馬車の荷いっぱいの大きな収納箱とかできるでござるか?」
「馬車の荷いっぱいの収納箱か……お! 出来そうだな。馬車も工夫しないと土を入れにくいよな? 馬車を横倒し出来るような感じにしておいた方がいいか? 箱を積む苦労を考えたら馬車自体が自力で起き上がれるようにすれば便利か?魔導列車の貨物にそのまま詰めるサイズが便利だな」
「横倒しに出来るのでござるなら、積み込みが楽でいいでござるな。いや、下ろす時も楽でござるな」
「馬車の準備ができたらバザールの畑にもってくから、そっちの準備をしておいてもらっていいか?」
「了解でござる」
バザールが工房から出ていくと、俺は馬車の構想をねるために思考の海に沈んでいく。
「ん~、人が乗る事を前提にしなくていいからそこまで難しく考えなくてもいけるか? 起こしたり倒したりするのに一番ネックになるのが車輪か? 軸を通した車輪はさすがに今回は難しいか? って事は、片車輪ずつ独立したタイプの車輪が作りやすいかな?」
言葉にしながら、考えをまとめ構想をねっていく。
「車輪を収納したりするために、馬車自体が自力で持ち上げる事が出来るようにしておけば、車輪の出し入れが楽になるかな? 後は、転ばした時に起こす機能があれば、大丈夫かな? とりあえず、作ってみるか」
まずは、馬車の荷台ほどのサイズの収納の箱を召喚する。
「しまった! 俺1人じゃ持ち上げられないジャン!」
手伝いをさせるために、人造ゴーレムを準備するか。綾乃に連絡を取ると、整備済みの人造ゴーレムが6体あるとの事で、綾乃の工房へ取りに行く。
綾乃はなんで自分の工房に戻ったんだ? 人造ゴーレムを取りに行ったついでに聞いてみると、頭に拳骨を落とされてしまった。女の子的な何かで自分の工房に戻ったらしい。デリカシーの無い事を聞いてしまったな。反省反省。
気を取り直して、作業を開始する。馬車の枠組みを作るために木材を準備して、収納の箱にサイズをあわせる。クリエイトゴーレムで床になる部分をくっつけて、その上に収納の箱を乗せ更に屋根以外の枠組みを組み立てる。
「さて、収納の箱のふたの上に屋根をつけるべきだろうか? 収納の箱のふたとくっつけてしまえばいいか? それで、つっかえ棒をすれば、横倒しの状態でも蓋がひらきっぱなしになるし、簡単な雨避けみたいにもなるか? その線で行ってみよう! ダメだったらまた改造すればいいだけだからな」
見た目は、ただの大きな木箱みたいな見た目の馬車になってしまった。見た目なんて気にする必要もないから一先ずこれでいいだろう。
人造ゴーレムにもう一度持ち上げさせて、下に潜り込み車輪の格納システムをクリエイトゴーレムで作成していく。
ミスリル合金の車輪を作り、イメージは映画のバッ〇・トゥー・〇・フィーチャーのデロ〇アンのタイヤが横向きになる、あれをイメージして車輪がしっかりと中に納まるように設計する。4輪とも全部が独立しているので、その場で回転させることが可能だ!
最後に起き上がり機能と言うか、起き上がるためだけのシステムをゴーレムで作成する。
「ん~相変わらず、クリエイトゴーレムは便利だな。工業化が進んで機械化したら、さすがに作業効率は負けるけど、手作りのワンオフなら地球より高性能の物を作り出せるな。
ゲームとかは無理だけど、単純な機械であれば、燃料いらずで整備不要の上自己修復までしてくれるんだからな。っと、これで一応完成したからバザールの所に持ってくか」
ダンジョン農園にある俺専用のホームに馬車を、人造ゴーレムで運び積み込む。バザールの農園までひとっ走り!
「主殿、すごくシュールな光景でござるが、これはどういう状況でござるか?」
バザールの農園について馬車を動かしていたら、バザールにこんな事を言われてしまった。人造ゴーレムが馬車を引いてるんだから、そういう風にききたくなるよな。
「馬車タイプで作ったまではよかったけど、馬を準備してなかったから、力仕事を手伝ってくれていた人造ゴーレムを使って運ばせてきただけだ!」
「そんなドヤ顔で言われても困るでござる」
「文句は受け付けない! ということで、使い方なんだけど、1番のボタンを押すと車輪が格納されて、続けてこっちの2番のボタンを押すと馬車が、右側面に向かって倒れる。最後に3番のボタンを押すと屋根がひらいて中に入れやすくなる。
自動でつっかえ棒が出るようにしたから、間違って挟まる事もない! 戻す時は、逆の手順でOK!」
「短時間でつくったにしては、うまく出来ているでござるな。スケルトンたちを使って収納の箱いっぱいに、土を詰めてくるでござる!」
「助かる。それで、土を新しく作り直す時は、ドリアードの力を借りてくれ。後、ワームたちも最近暇してるみたいだから、手伝ってもらうといいぞ」
「おぉ! それは楽しみでござる! 張り切って土を送り出すでござるよ!」
「俺は、その馬車にあった人造ゴーレム馬でも作るかな」
バザールの農園だが、本人の了承を得ずに勝手に簡単な工房を作る。その中に入って、馬の体の構造という本を召喚して、骨格を作成し、マッスルメタルを実際の馬の筋肉に似せてつけていく。思ったより内臓の部分が大きいな。
人造ゴーレムを作った時にも思ったが……緩衝材を入れて、空洞にしておけばいいか? 肺はしっかりと作って呼吸しているように見せて……それなら、外面も馬っぽくしようか!
加工しやすいミスリル合金に栗毛をイメージした色になるように、金属を混ぜクリエイトゴーレムで体毛まで再現してみたが、途中で魔力が尽きそうになったため、魔力回復ポーションを飲んで無理くりに再現した。
「おぉ! これはさすがに、才能の無駄遣いだな。でも、楽しかったからいいか。バザールに見せてやろう!」
バザールの所に人造ゴーレム馬を連れていく。
「工房を作って何をしてるかと思ってたでござるが、才能の無駄遣いをしたゴーレムを作っていたのでござるな。本物と見間違えるほど精巧にできてるでござる。手触りは……さすがに毛はちょっと硬い気がするでござる」
「……え? お前って、骨なのに触覚があるのか?」
「主殿! 失礼でござる! 味覚以外の感覚はあるでござる! 嗅覚だってあるでござる! 不要な時には感覚をカットできるから便利でござるよ!」
「えぇ……ノーライフキングと言うか、バザールが特殊なのかな? まぁ、これで馬車を運ぶ馬もできたし、土が入ればいつでも送り出せるな!」
バザールと一緒に夕食になるまで、スケルトンたちの流れ作業をながめた。
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