第809話 久々の生産活動
「あー楽しかったの」
昨日の夜の事だが、年少組の話を聞いていると、軍曹式軍事訓練が終わったようだ。兵士たちは結構ヒイヒイ言ってかなり辛そうだったはずなのに、楽しかったですませてしまっているこの娘たちに、戦慄を覚える……土木組も含めて逞しくなったな……なんて思ってしまった。
ドワーフたちには鎧の発注をしているので、鍛冶工房の並んでいる地区では日夜トンカントンカン、槌が振るわれる音が聞こえてきている。
今回発注した鎧はフルプレートタイプではなく、パーツを革のベルトで留め合わせていくようなタイプなので、あまり体の大きさを気にしないでも、量産できるので助かっているとのことだ。ディストピアの正式装備みたいに採用されたようで、ディストピアの紋章が入っている。
そういえば、レッドドラゴンの鱗とかどうなったんだろうな? スカルズとケモミミ3人娘がポップするたびに倒して、結構な数揃ってきているはずだけど……そもそもどこで管理してんだっけ?
「ピーチ、レッドドラゴンのドロップ品って、今何処にあるんだっけ?」
「えっと……確か、全部ディストピアに運ばれてきていると思うのですが」
「それなら、ドワーフの所かな? 朝食たべたら行ってみるかな」
「ダマもいますし気を付けていってきてください。ダマ分かってますね」
部屋の隅の方で従魔たちと一緒にご飯を食べているダマがこっちを向いて、右手を頭に当てて敬礼のようなポーズをとっていた。相変わらず、しっかり調教されてるな。今日もダマと一緒に散歩するか。多分ハクはついてくるけど、ニコはどっかに遊びに行くんだろうな。
朝食が終わってダマを連れて鍛冶工房のエリアに行こうとすると、予想通りにハクが俺の元に飛んできて腕の中におさまった。予想外な事に、ニコがスライムを連れて俺の後をついてきた。だからと言って問題があるわけじゃないので、そのまま放置した。
「じっちゃんども! いきてっか!」
「坊主! 毎回ワシらを殺そうとするな! この通りピンピンしとるわい! それで今日は何の用だ? さすがにまだ防具はできとらんぞ!」
「半分死んでるんだから気にすんな! 急いで作らせてるけど、無理する必要はないから自分のペースで作ってくれ。で、今日来たのは、レッドドラゴンの素材がどこあるか聞きに来たんだけど、何処に置いてある?」
「んあ? レッドドラゴンの素材? 誰か知ってるか?」
全員が首を振っている。
「すでに耄碌していたのか。それじゃあ聞くだけ無駄だな、すまんな。自分で探すわ」
「「「「「耄碌しているのはそいつだ!」」」」」
老ドワーフ共が違う老ドワーフを一斉に指をさした。
「まてまて、じっちゃんたち誰も知らんかったじゃねえか! 人のせいにしてる場合じゃねえだろ!」
そんなくだらない言い争いをしていると、ニコが近寄ってきて俺の裾を引っ張ってきた。何かと思ったら、後ろからついてきたスライムたちが、レッドドラゴンの素材を持ってきていた。
「おぉ、耄碌じいさんより、お前たちの方が数倍役に立つな。よしよし、なでてやろう! うりうりうり」
「「「「「ちょっと待て小僧! スライムより下とは聞き捨てならん!」」」」」
「仲いいな……レッドドラゴンの素材のありかが分かったから、勝手に持ってってもいいか?」
「鱗と牙を10個ずつ置いていってくれれば十分じゃ。基本的に使う事はないが、気分によっては武器を打つ時とかに添加するからの」
「了解。兵士たちの装備で結構無理言ってるのは分かってるけど、よろしくな!」
「それなら、「後で、酒と飯を持ってこさせるから頼むわ!」分かってるじゃないか! 楽しみにしておるわい」
ニコに誘導してもらってレッドドラゴンの素材を取りに行く。
『主殿、何でレッドドラゴンの素材が必要なんですかにゃ?』
「別に必要ってわけじゃないけど、ちょっと試してみたい事があってね。多分いくつもダメにすると思うけど、使ってないからいいかなってな」
『そうなんですか。贅沢な無駄遣いですにゃ』
「確かにな。余ってるんだから実験しても問題ないだろ? ちょっと気になってた工具を出したから、試運転を兼ねて鱗とか加工してみようかと思ってな。ドワーフたちに見つかったら、『なんじゃこれは! 使い方を教えろ! わしらの所にも出せ』って言いだすだろうけどな」
『そんな便利な物なんですか?』
「加工するって意味では、かなり便利な道具なはずだけどな。俺の工房に戻ったらどんなものか分かるから見るといいよ」
『主……歩き疲れたにゃ』
ダマがそういうと、後頭部に軽く衝撃が走った。子供の肩車みたいに肩に後ろ足を乗せ、前足は頭に抱き着くようにまわされていた。
「歩くのが面倒になったのか? 俺の従魔たちはなんで楽をしたがるのかね?」
『主に似たんじゃないですかにゃ?』
くだらない話をしながら、自分の工房に戻って新しく召喚した工具? と言っていいのだろうか、ドリルの前に立つ。レッドドラゴンの鱗を取り出しセットして、穴をあけていく。
「え~……このドリル、鉄とかも穴をあけられるのに鱗はダメなのか」
ドリルの刃を下ろして鱗に穴をあけようとしたら、ドリルの刃の方がすり減ってしまい表面を少し削った程度で、使い物にならなくなってしまっていた。
「刃も準備しないといけないんだな……どうせならアダマンタイトで作るか」
アダマンタイトの棒を取り出して、ドリルの刃と見比べて加工していく。加工が終了したら機械にドリルの刃をセットして、今度こそ鱗に穴をあけていく。
『鱗に穴をあけるだけですかにゃ? それに何の意味があるんですかにゃ?』
「ダマ、レッドドラゴンの鱗の特性は何か分かるか?」
『ん~金属より軽くて、鋼鉄より硬い硬度……後は火耐性がある……ですかにゃ?』
「正解。でも金属より軽いっていうのはちょっと違うな。ミスリル合金の方が軽いんだよね」
『でも穴をあける意味はなんですかにゃ?』
「穴をあけた後に、ミスリル合金で穴を埋めてコーティングしたら、どうなるか気になってね」
『穴をあけずに、鱗をミスリル合金で挟めばいいのではないのですかにゃ?』
「それは試したことがあるんだ。片面だけでもレッドドラゴンの特性である火耐性が半減しちゃってね。どこまで穴をあけると効果が下がるのかと、ミスリル合金の使い方では、特性がフルに生かせないかなって思ってね」
『そこまでして、ミスリル合金をくっつける意味があるんですかにゃ?』
「鱗の場合だと魔力の特性が強すぎて、魔力の伝導率が悪いんだよ。だから体を守るだけなら鱗だけでも十分なんだけど、腕や足、頭のような場所に使うにはちょっと使いづらいんだ。だから、特性を生かしたまま使えないかなって言う実験だ」
『ほへ~色々あるんですにゃ』
鱗にどんどん穴をあけたり、カットしたりして特性が失われていないか確認していく。
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