第808話 兵士たちの今!
「そういえばレイリー、そろそろ訓練期間が終わるよな? どんな感じだ?」
「そうですね。肉体的なレベルアップはないですが、連携や技術力の向上は見られています。おそらくですが、精神的にも鍛えられているせいか、動きは格段に良くなっていると思います。
集団でこういう訓練するのは、効果的かもしれませんね。同じ辛さを味わっている事もあると思いますが、一番大きいのはシュウ様の用意してくださった、この手帳のおかげだとおもいます」
この世界でも、軍曹式軍事訓練は有用なんだな。
「この訓練は本当に面白いですね。初めは、こんなに無意味に罵る意味があるのか不思議でしたが、やっているうちに参加している兵士全員が、不思議と一致団結をし始めるんですよね。
今までもしっかりと意思の疎通など問題なくできていたのですが、質が変わったとでも言えばいいのでしょうか? 今なら、同規模で同レベル程の相手でも、2割未満の損失で文字通りの全滅をさせる事ができると思います」
「マジか? 文字通りっていうのは、言葉の意味通り100パーセントって事だよな? 戦争とかで言う3割の損失では無くて?」
「その通り、文字の意味のままの全滅ですね。それでも、格上となると対応できなくなるのは、この世界の理なのでしょうな。正直な所、シュウ様や孫を含むシュウ様の奥方様には、手も足も出ないですがね。それよりも、土木組にも勝機は薄いでしょうな」
「そこらへんはしょうがないんじゃないか? レベルの差だからな。それに兵士にやってほしいのは、治安維持や外敵……魔物からディストピアを守る事だからな。俺の国では、戦争は志願した兵士や冒険者がやるもんだしな。大半は俺たちが戦闘するから、人数合わせみたいな意味合いが強いけどな」
「シュウ様がお優しいのは分かりますが、そろそろ兵士に全部任せてみるのはどうですか?」
「ん~それはちょっと難しいかな? フレデリクにいた時に参加した戦争……ウォーゲームなら相手次第では、やってもらおうと思うが、本当の意味での戦争……殺し合いになるのであれば、基本的には俺が先陣を切る事になるだろうな。
まぁ武勲をあげたいとかいうのであれば、ディストピアにいる以上は難しいと思うけどな」
「そこらへんは、シュウ様の考え過ぎだと思いますね。兵士の皆さんは武勲なんかよりも、シュウ様に傷付いてほしくないんですよ。シュウ様も覚えていないですかね……
以前の戦争の際に参加した兵士や冒険者の親や家族、奥様等に『あんたは死んでもいいから、シュウ様に傷一つ付けさせちゃいけないよ』みたいな事を言われていたのを覚えていませんかね?」
「そういえば、そんなこと言っている人たちがいたよな」
「この街に住んでいる人は、全員シュウ様が1番大切なんです。本当の意味で家族よりも大切な存在なのですよ。そんなシュウ様が先陣を切るのは……と思うのですよね」
「ん~、もし戦争をしても損害に死亡者がゼロになるなら考える。戦争で亡くなった人の家族とかに報告するのは嫌だ。もし亡くなった人が出れば、その人の家族を手厚く援助するけど……それならそういったことがない方がいい。
そもそも俺にとってウォーゲームや戦争は、勝って当たり前だと思ってる。もし事前の情報で勝てないと分かっているなら、勝てるように暗躍するか、そもそも戦争をさせないように動くね。もしトリプルの冒険者が出てくるなら、リバイアサンでも何でも使うさ」
「了解はしたくありませんが、このままだと平行線ですね。だからと言ってこの訓練が無駄になるわけでは無いですからね。
自分たちの得意な武器をしっかりと理解して、隊列を組んで戦えるようになったので、格上の魔物でもある程度なら問題なく倒すことができるようになっていますね。実際に、20人単位で隊列を組んで、Lv200程の魔物も倒すことができていますね」
レベル差にして、100位ある魔物を倒せるんだな。いくら20人という数でも、100も離れている魔物を倒せるのはすごいな。魔物の召喚をしてるって事は、ノーマンやガルドも協力しているだろうけど、下手したら死人が出るじゃねえか? 心臓に悪いからやめてほしいな。
「そんな顔をされなくても、安全に配慮してやっていますよ。そのために私が監督しているのですから」
どうやら変な顔をしていたらしい。それもそうか、レイリーが目の前で兵士が死ぬ姿を、だまって見てるわけないよな。レベル差があるのに、未だに訓練で勝ち越すことができないんだからな。
確かに他の人より強いのはわかるんだけど、レベル差が200近くあるのに負ける理由がよくわからんのだよね。レイリーと同じレベルの人間に負ける気はしないけど、レイリーには勝ち越せない。
レイリーもこの世界の理の外にいるのかな? 俺みたいなダンマスや勇者達と同じ規格外? でもそれなら、奴隷になっていた理由が分からんよな。神たちの誰かが面白半分に加護を与えてたりして……ん? 思いついた事を適当に言ったつもりだけど、今までで一番しっくりくるな。まさか……まさかな。
「そういえば、この訓練は何度もやるつもりか?」
「もちろん。次は、合格していない人達を中心に参加してもらう予定です。肉体的についていけない兵士がいるのが分かったので、そのラインを見極めてから、次に体づくりをしていこうかと考えています」
「まぁ~なんだ。レイリーも無理しないようにな。後、ちびっ子たちに早く帰ってくるように、言っといてくれ。ご飯の時間に遅れたらスカーレットがうるさいからな」
「おっと、それは怖いですね。私はこちらでブラウニーが作ってくれる食事を、訓練が終わってから兵士とするので問題ないですが、あの子たちは家まで帰らないといけないですからね。早めに声をかけておきます」
「ありがとさん。あと、この訓練課程を卒業出来たら、そのメンバーには新しい装備を作るって言っておいてくれ。エリートって言ったら違うけど、それだけつらい訓練をしてるからそのご褒美? 違うな、卒業の証っていうのが一番しっくりくるな。
専用装備だと思ってくれればいい。この前、ドワーフたちが暇だ! って言ってたからちょうどいいだろう」
「おぉ、それはいい考えですね! 他にも色々訓練を作って、それぞれに専用の何かを用意しませんか? 指揮官クラスになれるか、見極める訓練とかどうですか?」
「それもいいな。勲章なんて正直腹の足しにもならんから、実用品があるのは良い事だな。装備の色とかも考えたら面白いかもな! 訓練の内容は、俺にはよくわからんから、レイリーやわかる人間で決めてくれ。装備に関しては、こっちで準備するから!」
面白い事を見つけた! と言わんばかりの笑顔をしているが、シュウが準備すると言った武具が、戦争で使われることはまずないだろう。
それでも、ディストピアの周りの魔物を狩る時には、活躍できるので、兵士がこぞって参加するようになった。兵士たちの揃った装備が羨ましくて、志願する子供たちが増えたのは誤算だった。
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