第784話 いろんな実験
昨日は一日、改良型人造ゴーレムの性能実験と、その改善点の話し合いでつぶれてしまった。途中から、バザールも呼んでロボットのロマンとかも話したから、一日が潰れてしまったんだけどね。
そして、呼んだバザールがけったいな実験をしていて、ある程度成果が出た! と俺の所にその作品? を持ってきたせいもある。
バザールが持ち込んできたのは、骨で作られたゴーレムだったのだ。いや、ただ骨で作られたゴーレムならまだよかった。スケルトンとしての特性と、ゴーレムとしての特性を持っていると言えばいいのだろうか?
俺も初めに話を聞いた時には、「何言ってんだこいつ?」って思ったけど、実際に実演されて驚愕した。
俺が驚愕した事実は、スケルトンと言うよりはゴーレムとしての特性に近いのに、バザールのアンデッドを操るスキルが適応されている事だった。人によっては、大したことが無いように思えるが、日本人というか俺たちにとっては、かなりの衝撃だった。
俺たちがクリエイトゴーレムで作るゴーレムも、魔物としてのゴーレムも自分で思考して動く事ができるのは普通だ。クリエイトゴーレムの方は魔核を使って、知識を憶えさせることができ、魔物としてのゴーレムは、脳と言うべきものが存在しているのだから当たり前と言える。
それに対して、バザールの持ってきたスケルトンゴーレムは、2つのゴーレムの特性を持っているうえに、アンデッドとしての特性があるので、バザールが直接操作する事ができるのだ。
その上に、クリエイトゴーレムの特性の魔核を、Sランクの魔石を使って動力のコアにすると、Sランクに近いゴーレムが簡単に生み出せるようになったのだ。
ただ、元々は強いスケルトンが作りたかったわけでは無く、綾乃の手足が刃物の人造ゴーレムみたいに、自分の体をそのまま道具として使用できる、アンデッドが作りたかったそうだ。
簡単に言えば、ゴーストキャリッジみたいなものや、スケルトン農耕機みたいなものを作りたくて、アンデッド作成とクリエイトゴーレムを使って研究をしていたら、副産物として操れるゴーレムができてしまった……との事だ。
これを聞いた時には、綾乃と一緒にこめかみを押さえてしまったもんだ。
アンデッド作成によって作ったSランク相当のスケルトンは、秘められている魔力が高すぎるためか感覚共有が使えず、クリエイトゴーレムで作ったゴーレムはスキルを憶えられないため、意識共有で操る事ができない。
だが、アンデッドゴーレムは、Sランクの魔核を埋め込む事によって強制的に昇華したので、魔物としての器は弱い。
なので、意識共有もできてしまう。俺たちも直接操る事が出来てしまう、Sランクの魔物。そして魔物としての特性があるため、スキルを憶える事ができる。使い方によっては、人造ゴーレムの上位互換になりえるという事だ!
まぁ、戦力強化は良い事だよな。でも気付いたら、アンデッドとゴーレムが主力になってしまったな。まぁ、最強の切り札は、リバイアサンなんだけどね。正直こいつの能力を調べた時に、よく支配できたと思ったくらいだ。
当時は、釣り上げて地上で戦えれば水生魔物でも倒せると思っていたが、正直リバイアサンにはそれが通用しないという事が分かった。
簡単に言えば、住み心地がいいから暗い穴倉に住んでいるだけで、空を飛ぶこともできたのだ。ドラゴンが魔力を使って飛んでいることを考えれば、不思議ではないが……あの姿を見た時はショックだった。
そのうえ、迷惑の掛からない外海に出て、無理やり連れてきたレッドドラゴンと戦ってもらったのだが、相手にならなかった。一応地の利と言うのもあるだろうが、リバイアサン曰く魔力の消耗が大きくなるだけで、戦闘エリアを自分の有利な地形、水で満たすことができるそうだ。
ダンジョンバトルで対峙したダゴンも同じような能力を持ってたっけな。そして、天災と言われるSSSランクの魔物は、本当の意味で天候を操れると理解したのだ。
あ、リバイアサンをダンジョンバトルの攻めに使う事はないよ。だってそんなことしたら戦ってくれるダンマスがいなくなるからね! その内、防衛の最終ラインをまかせようと思ってるけどね。
最初の内は意思疎通がうまくできなかったけど、ダマに頑張ってもらってたら念話が使えるようになって本当に助かるよ。
リバイアサンも俺の支配下に入れてめっちゃ喜んでた。理由を聞いて苦笑したけど、ダンジョン内だと、食事しなくても問題が無いから、食事をせずにゆっくり寝れる。それに食べたいと思ったら、自分でワームを召喚できるからと言って喜んでいた。
リバイアサンは、めっちゃ引きこもりの動きたくないさんでした。でも、俺に保護されているから有事の時は力を貸してくれるとの事だ。
なんて、変な事を考えながらの訓練は、やっぱり身が入っていないな。体のキレが悪いのが自分でもわかった。新しい装備の試験だし体のキレは関係ないか。
今俺が行っているのは、神のダンジョンで見た魔拳、それを改良したスキルとでも言えばいいのか、
今回準備したのは、魔物の皮を使ったグローブ、魔物の皮とミスリル合金繊維を使ったグローブと、ミスリル合金だけで作った籠手の3種類だ。
魔物の皮だけのグローブは、やはりというか耐久力に問題があった。剣を持つ手袋や、滑り止めに使うのは問題ないが、殴る武器として使うには不十分だった。それでも手に入る一番高価な皮、レッドドラゴンの皮と、小さい鱗を使った特性のグローブだったけど、俺が使うには耐久性が低すぎたのだ。
魔物の革とミスリル合金繊維も、魔物の皮だけと大体同じ結果に終わった。魔物の皮だけよりは耐久力はちょっと高くなったが、戦闘中に壊れる可能性が高いのは一緒だったので、大した差はない。
最後のミスリル合金製の籠手も耐久力と言うか、魔力を込めて殴る時に生まれる衝撃の所為で、変形してしまう事が分かったのだ。
魔力の通りは、魔物の皮、レッドドラゴンの皮が一番よかった。でも、耐久力に問題があったので、直接殴る部分には使えないとわかった。緩衝材と言うか、拳を守るインナーに使う事にした。
変形に対しては、籠手のフレームをアダマンタイトで作成して、ミスリル合金で補強する形がベターだという形で落ち着いた。重くなるけど、防具としても使えるようになるので、使い方次第ではかなり有用だろう。
「という事で、坊主! 酒飲み行くぞ!」
そう、今日は老ドワーフに頼んでおいた武器の試験だったので、訓練がてら色々やっていたのだ。だけどね、まだ昼前だから! 俺がいると、飲み全部がタダになるって分かってるから、こういう時こそって、めっちゃ飲むんだよな。色々頼んでるからこれくらいは融通するけどな。
武器の事で、妻たちも相談する事が多いから、俺の家にも来ることが増えて、ドワーフ用の飲み食いできる部屋を、新しく建てたくらいだしな。こいつら、酒に関しては遠慮を知らんから困る! ただ、シルキーとブラウニーは、作り甲斐があると言って喜んでるのが救いかな。
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