第782話 あいつが再び!

 充実堕落した1週間が過ぎて、仕事に戻る日になった! たった1週間、それも適度に運動していたのに体がなまっている気がする。そのせいで、週の始めの朝にある学校での運動の時間に、参加してかなり疲れている。


 ステータスの体力と体を動かす持久力の体力は、イコールじゃないんだな。それと、子供たちの体力を舐めてたぜ。デジャヴ……鬼ごっこをしたら、20分もしないうちにバテてしまったよ。戦闘の時はそんな事なかったのにな……不思議だ。


 月曜の朝の習慣をみんなと一緒にこなしてから、グリエルの執務室へ向かう。


「シュウ様、お久しぶりです。お休みはどうでしたか?」


「よく休めたよ。いや、むしろ休み過ぎて体がなまってしまったな。グリエル達もしっかり休みはとってくれよな?」


「何を言ってますか。シュウ様が自分で休まないのに、部下である私が休むわけにはいかないですよ!」


「俺が休んでも、どうせお前たちはやすまないんだろ?」


「いえいえ、そんな事はございません。シュウ様がしっかり休みを取ってくだされば、私たちも安心して休む事が出来ますよ。そんな事より、先日お話ししたい事があると言いましたのを覚えていますか?」


「あぁ、覚えているよ。俺の家に連絡が来ていないから、大したことじゃないと思って放置してたけど大丈夫か?」


「えぇ、問題ありませんよ。まぁ、ここに来てもらえたことですし、話を聞いてもらっていいですか?」


「おぅ、そのために今日はここに足を運んだんだからな」


「では、初めに言っておきますが、大したことではないですが、結構衝撃的だと思うので気をしっかりもってください」


 グリエルのセリフに背筋を寒くしたので、聞きたくはなかったが、報告が必要と思って俺に伝えようとしてるんだよな、聞かないわけにはいかない。グリエルに話を聞くと伝え、話に耳を傾けた……そして後悔した。


 報告を受けたので、その内容の現場へ行き更に後悔する事になる。その現場では、さらなる悲劇が今現在進行形で、その悲劇が続いているのだ。


 悲劇の現場を見ているという事からわかるように、悲劇ではあるが急を要する案件ではないのだ。それだと誤解があるか……この檻の中にいるモノにとっては、早急に解決してほしいんだろうな。


 でも、救いようのない人間とモノ達だから、檻の外の人間からすれば急ではない。醜いという意味では、急かもしれない。


 謎かけみたいに分かりにくい言い回しは止めよう。目の前で起きている悲劇とは、檻の中と言ってわかるかもしれないが、男の性犯罪者たちの入っている檻だ。ここに来る前に、グリエルの話を聞いて後悔した時の話だ。


「シュウ様、落ち着いて聞いてくださいね。ゴーストタウンにある、男性性犯罪者の檻を覚えてますか?


 あ……今、聞いて顔をしかめましたね? 忘れてたのに思い出させるな! みたいな顔をしないでください。私もできればあそこの事は思い出したくありませんですから……でも、問題と言いますか、そうでないと言いますか……まぁ問題ですよね」


「あまり聞きたい内容じゃないけど、早く話してくれ」


「そこに、ホモークがいましたよね? 最近、あれが増えまして……いえ、増えたというと語弊がありますが、まぁそんなようなモノが増えまして、どう対処しようかと牢番から相談がありまして、まだ女性の牢番は笑い事で済んでいるようですが、特に男性の牢番達からは早くしてくれないと、仕事を辞めるという話が上がってるんですよ。そこでシュウ様の意見を聞きたくて……」


「牢番が辞めるって、結構急を要する事じゃないのか?」


「いえ、もともとあそこの牢番は、野郎憎しの女性の兵士が多いので、そこまで急を要するものではないのです」


 男としては、あの惨状を見て笑える人間は極少数だろう。だから男性が少ない職場というか現場なのだろう。と言っても、女性だけで回せる現場でもないので、辞められるのは困る。


「という事で、現場を見に行きましょう」


「えっ!?」


 グリエルといつの間にか現れたガリアに引きずられるようにして、ゴーストタウンに向かう事になった。ちなみに、今回のお供はニコとハク、ダマの3匹だ。妻たちがついてきていない時は、大体この3匹だけどな。特にダマは話すことができるので、妻たちは安心して任せるようになっている。


 そして現場に着いて惨状を見て、体中に寒気がはしっている。確かにホモークが増えていたのだ。物理的ではなく精神的と表現すればいいのだろうか? そして、精神的にホモークになった奴には見覚えがあった。このゴーストタウンで初めて、性犯罪者で捕まった冒険者だ。


 捕まった時も人間としてはデカかったが、あれから更にデカくなって、ガタイもホモークに似てきたが顔が、変態冒険者のままだったので思い出すことができたのだ。その冒険者が、新しく入ってきた男性性犯罪者の冒険者を、ホモークと一緒に仲良く掘っていたのだ。


 そしてホモークと違うのは、人間の言葉を話せるという事だ。人間だから当たり前なのだが、人間の言葉が喋れて、男性の牢番が辞めたがる……そこから連想されるのは、俺でもすぐに理解した。


 そのホモーク化した冒険者が男性牢番に向かって、色々言ってくるのだろう。さすがにそれはきついだろうな、ここだけ女性の牢番だけで何とかならないか相談するか……確か牢番は、3人1組で夜勤につくはずだから、せめてここに配属されないようにしてあげよう。


 グリエルと話を詰めて、牢番に女性冒険者を少し高めの給料で雇う事に決まった。ゴーストタウンの今月の資金は結構ぎりぎりだったので、今回は俺がポケットマネーで援助する事に決めた。


 気分良く仕事をこなそうと思って、大ダメージを受けてしまった。今日は家に帰ろう……

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