第778話 お祭り終了!

 ヒュ~~~……ドガーン!


 腹に響く重低音が鳴り響いた。花火大会開始用に特別に準備した特大花火が夜空に花開いた。


 超ド級の音にびっくりしたみんなが、俺を守ろうとして周囲に素早く集まて来た。


「みんな、武器をしまって。あの音は花火の音だから大丈夫だよ。それに今日は、ディストピアの周りにスケルトン軍団と人造ゴーレムを配置してるから、ネズミの魔物一体ここまで来れないよ。今までに城壁までたどり着けた魔物もほとんどいないんだけどな。だから安心して、夜空に咲く光の花を楽しもう」


「夜空に咲く光の花?」


「大きい音が聞こえる直前に、空が光っただろ? 今会場の方ではその説明をしているはずだ。もう少ししたら、今さっきの大きさ程じゃないけど、たくさんの花火が空に咲くよ。見ててご覧」


 俺がそういうと、みんなが席に戻って空を見上げる姿勢をとる。そしてしばらくすると、続けて花火が上がりだす。そして夜空に咲く様々な色の火の花を嫁達はキラキラした目で見ている。


 今回の花火は、9分打ち上げて1分休憩を12セット行う2時間のプログラムで組んでいる。1分の休憩に、水分をとったり軽く食事を摘まみながら、俺は久しぶりに見た花火に故郷を思う……わけが無かった。


 花火なんて小さい時に親父に連れて行ってもらったっきり、人が多くてうんざりして次の年から行かなくなって、家でテレビで満足してたもんな。移動時間もかかるし、その時間をゲームや小説を読む時間に当てた方が、俺にとっては有意義な時間の使い方だ。


 デカくなってから見る花火って違うんだな。多分、彼女……じゃなくて、嫁がたくさんいるからだろうか? 俺の隣に陣取った三幼女は、口を半開きにしていたが、見なかった事にしよう。


 って、まわりで見ていたみんなも口が半開きになっていて、とても人様に見せられないな。専用の見る場所を準備しておいてよかった。


 そしてスライムたちよ。何でお前たちは、縦に重なってるんだ? 何だっけ? トーテムポールみたいな感じだろうか?


 最近こいつら、この体勢と言っていいのか、縦に重なるのが好きなんだよな。そして、意味も分からずにゆらゆら揺れて、おっとっと、みたいな事して人の気を引くんだよね。本当になんなんだろうか?


 3セット目の打ち上げ花火が始まった。このセットは、レインボーファイアフラワーと綾乃が名付けた、文字通り7色に光る花火が中心だ。召喚する際に、花火がカスタムできる事を知った綾乃が、四大精霊をとっつかまえて、注文通りの花火を作るようにお願い強要をして作り出されたものだ。


 内から外に向かって色が変わるタイプや七等分に色が違う花火、ランダムにちりばめられた花火。色々な物が大玉で打ち上げられていたが、内側から色が変わる花火に関しては、ちょっと失敗じゃないかな? と思って見ていた。


 なんとなく色が変わってるのはわかるんだけど、花火って球じゃん?


 って事は、打ち上げられて開いた花火も例外なく球状になるわけで、なんて表現したらいいのか分からないけど、光の幕が重なっているとでも表現すればいいのかな? 率直に言えば、汚い花火に見える。あ、岩男や敵を爆発させるタイプの、汚い花火じゃないからな!


 成功した花火もある。花火の種類は知らないが、打ちあがって落ちた所で下側に向かって円錐型花が咲く感じの花火だ。計画的なのか偶然なのか分からないが、ちょうど円錐の中心がディストピアに向いていて、外から内側にむかって濃い色になっていたので、綺麗にみえた。


 さすがにそれを見た時の妻たちの反応はびっくりしており、食い入るように夜空に咲く花を見ていた。


 円錐の花に関しては、花火大会の会場からも「おぉ~」という声が聞こえてくるほど衝撃的だったようだ。さっきまでは花火自体に驚いていたが、たった20分で目が肥えてきたのだろうか? 新しい花火がくると街の方からここまで声が届く。


 楽しんでくれているようで何よりだ。妻たちは、声を出さずに驚いている感じだけどな。って、いつの間にか隣に陣取っていた三幼女がいなくなっていた。代わりに隣に来ていた、シャルロットとレミーに聞いてみると、土木組の方に行ったとの事だ。


 あらためて空を見上げると、肩に重さが加わる。シャルロットとレミーが俺の方に頭を乗せてきていたのだ。


 それから1時間半程花火に見入っていた。


 花火が終わると、大きな拍手が会場を包んでいた。ここまで聞こえてくるんだから、相当な音量だと思うが……子供たちの耳は大丈夫だろうか?


 花火大会の閉めの挨拶は、綾乃にするようにお願いしており、祭りの閉めに関しては、今日になってグリエルとガリアに押し付けた。妻たちと見終わった後に慌てて会場に戻るとか、いじめなの? って思ったので、領主権限で命令して、次回からはお前たちの力でやってくれ! とお願いした。


 もちろん協力はするけど主体的になって動くのはやはり、街の人間がいいと俺は思っている。と言うか、今回も俺が主体的にやった事なんて、ビンゴ大会と花火大会だけだけどな。


 花火がおわって興奮状態の妻たちは、花火について熱く語っていた。土木組の様子を見に行くと、誰一人眠い様子がなく、花火について色々話していた。土木組は、普段なら寝ている時間なんだけどな。そんな様子を見て、もう少し花火をしようかと思った。


「みんな、今度は打ち上げ花火じゃなくて、手持ち花火をしてみないか?」


「ご主人様、さすがにあれを手にもってやるのは、危ないと思うのですが」


「そっか、俺の中で花火っていうと、打ち上げ花火より手持ち花火のイメージなんだけどな。まぁいい、これが手持ち花火だ!」


 DPで召喚した、ファミリーパックの大きいタイプの手持ち花火を出した。


「これをもって、ここの部分に火をつけると」


 魔法で花火に火をつけると、まわりから驚きの声が上がった。ちょっと離れるように言って、花火を小さく回してみたりして楽しみ方を教えると、みんなが食いつき次々と花火を始めた。うん、楽しそうで何よりだ! そしてその身内の花火大会は、打ち上げ花火の時間より長い時間遊ぶことになった。


 さすがに年少組や土木組が眠くなってきたので、家に帰る事にした。途中で眠ってしまった子もいたので、俺や年長組、姉御組がおんぶをして運んだ。


「部屋に戻すのもあれだから、あの部屋でみんなで雑魚寝でもしようか」


 ダンジョン農園の入口付近に半年ほど前に作った、温泉旅館風の建物の大広間に布団を敷いて、みんなで寝る事にした。温泉旅館風なので、起きてから朝風呂に入ろうと心に決めて布団の中に入った。

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