第752話 突破口?

 ベルゼブブの攻撃は単調だと思えば、変化のある嫌らしい動きで攻撃してくることもある。それにしても、鳩尾付近から出ている腕の、鉄壁ぶり具合が腹立たしい。視界も広く複眼のためか、的確に盾で受けたりかわしたりするのだ。


 俺・カエデ・ミリーの3人による三方向からの同時攻撃では、俺の大薙刀による連撃を盾で受け止め、ミリーの槍は鳩尾についていない腕の方ではじかれ、カエデの抜刀術は危険だと判断されており、きっちりとかわしている。


 見た目は人間の肉体構造に似ているのだが、明らかに人間の肉体では再現できない動きをするのだ。見た目に騙されていけないとわかってはいても、その考えを拭い切れないため苦労をしている。


 しかも3人の攻撃を同時に受けたのに、反撃までしてくるのだから始末に負えない。チェインでがんじがらめにしようにも、スキルがキャンセルされてしまうのだ。


 死角がほぼ無いようで、どんな近接攻撃にも対応してくる。鳩尾付近から出ている腕なのに、背中に盾を回すことができて、受け止める事もできるのだから、非常識にも程がある……


 近接戦は防御されることが前提で、2~3人で同時攻撃を行い、主力は死角ではなく見えない位置からの、矢の攻撃と範囲魔法による攻撃だ。


 戦闘から20分ほどが経過して偶然に分かった事だが、視覚に関しては頭部にあるようだ。たまたま、矢が当たる事があったのだが、それが仲間の陰から末端に向かって撃った攻撃だったのだ。


 どんなに動体視力がよかろうとも、見えない位置から飛んでくる矢を、近接戦で攻撃をかわしている時に放たれると、矢が見えるようになってから回避は困難のようだ。それでも、4発に1度は回避してしまうのだから、でたらめな反射神経と身体能力だ。


 魔法に関しては四方から囲んでいるタンクが、魔法を使う側以外にフォートレスを張って、強引に魔法をぶち当てている形だ。余波でも魔法を撃った側に、ダメージが出る程強力な一撃なので、余波をくらわないために結界などを使用して、ダメージを防いでいる。


 みんなの攻撃の合間に俺は、実験とばかりにピースを使った銃撃をしている。さすがに回避する事は出来ていないが、ダメージもない様子で少し鬱陶しいな、といった仕草をするだけで、意に介していないようだった。効かないと思ってたけど、ここまで無視されるとさすがにムカつくな。


 ロックオンに関しては、銃弾自体も大きくなり衝撃はかなりのものになるため、3度目の射撃の際にはなりふり構わず突っ込んできて、ロックオンを壊しにきた。いくらミスリル合金をアダマンタイトでコーティングしているとはいえ、殴られた衝撃に銃身が耐えきれずに曲がってしまっている。


 ロックオンを囮に使う作戦も考えていたのに、早い段階で壊されてしまったのがいたい。


 衝撃という意味では、バザール戦の時に作った【RDIストライカー12】をベースした、ショットガンのストッパーは結構よかったかもしれない。


 ただこれにも問題があって、威力を追求した弾丸を10発連続で撃って発覚したのだが、銃身の強度に比べて威力が高すぎたため、11発目を撃とうとした際に暴発してしまったのだ。


 ここまで連続で撃つことが無かったとはいえ、いつ暴発するか分からない武器を使うのは怖い。なので、バザール戦で使い切らずに余っていた、聖銀で作ったバックショットを使って見た。


 聖銀の弾丸……ホーリーバックショットは、予想より効果があり威力を追求した弾丸を使わずに、これで対抗しようとしたが、危険度が高いと判断されたためか、ロックオンのようにすぐに破壊されてしまった。後4丁残ってはいるが、使いどころを考えないと危険だろう。


 そのホーリーバックショットのおかげで、分かった事が1つ増えた。聖銀の効果によるダメージが有効という事だ。という事は、聖拳による攻撃も当たれば有効打になる可能性が高い。


 ホーリーバックショットは、この世界の法則でダメージを軽減させられているので、多大なダメージを与える事は出来ていない。俺たちがスキルの力を借りて振るう、聖銀製の武器の攻撃であれば、今までとは違いしっかりとしたダメージを与えられるはずだ。


「メアリー! マリア! 聖銀の矢を使え! 確か使っていないやつが、腕輪の中にあったよな? 使い切っていいから、隙ができたらドンドン使え。俺は補充用の鏃を作っておく。他のメンバーも聖銀製の武器に持ち替えるんだ!」


 俺が指示する前に、ピーチやシュリ、アリスたちに指示されて持ち替えていた。


 まさか聖銀がここに来て役に立つとはな……バザールと戦ってなかったら、本気でここで詰んだかも知れなかった。これで首の皮一枚つながったというべきだろうか? 本当についてるな。ここにきて、幸運3セットの効果か? 幸運がご都合主義的な感じになってるけど、それでもかまわない!


 それにしても、聖属性の攻撃がアンデッドに効果があるんだから、よくよく考えれば、悪魔系の魔物にも聖属性の攻撃が効きやすい可能性はあったのに、気付かないなんてな。ゲームをしていたら気付きそうな特徴なのにな。


 メアリーとマリアが撃っている矢が命中すると、ベルゼブブが痛みを憶えたのか奇声を発して、嫌がっているのが分かる。そこで俺はメアリーとマリアに指示を出した。できるだけ同じ部分を狙うように指示をした。


 2人は避けられやすくなると言って理由を聞いてきたので、シュリやアリスの攻撃の伏線にしようと考えていることを伝える。同じ部分を狙うように指示したが、あくまでみんなのサポートで、そこを狙ってると思わせるような連携を見せるように、みんなにも指示している。


 戦闘の総指揮は変わらないが、メアリーとマリアが同じ部分に攻撃しやすいように、みんなを誘導する役目を担いながら、攻撃に参加している。


 ちなみに、離れているのに会話ができているのは、魔導無線機と骨伝導スピーカーのおかげである。魔導無線機は、戦闘をするときには基本装備の1つになっている。


 突発的な戦闘でもない限りは、必ず着用しているので意思疎通に問題はない。最近は壊れてしまう事もあるので、近くにいるメンバーが伝えたり、予備の魔導無線機を持たせているけどね。


 メアリーとマリアは、ベルゼブブの右足を中心に狙う事にしたようだ。あいつはハエの羽をはやしているが、今まで飛んでいない。飛べたとしてもこんな狭い空間では意味がないんだけどな。さて、シュリたちの攻撃の伏線のために、いろいろ仕込みますか。

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