第743話 まさかのボス……
「何で堕天使で続いてたのに、ここに来てお前なんだよ! 俺的にはこの流れなら、堕天使ルシファー的な何かか、サタンだと思ってたのに……ってどっちも一緒か。悪魔系で同じだけど、よりによってその姿で出てくるのは勘弁してくれよ。巨大な黒い悪魔もきつかったけど、お前もきつい」
部屋の中心にいたのは、ハエの王ベルゼブブだろう。見た目がもうね、ハエ。気持ち悪いくらいにハエ。それに取り巻きに自分の分身みたいに、人間の顔位あるハエがいっぱい飛んでいる。あれって眷属ってことか? ちなみにベルゼブブは目算で3メートル程もあるハエだ。
蠍とか蛇は大きくても怖いって思うだけだけど、黒い悪魔やハエって大きくなると、怖キモって言葉しか出てこない。あ、でもイビルスパイダーは怖かっただけだな。そもそもクモはキモイっていうより、出てきたらビックリする対象ではあるけど、毛嫌いするほどではなかったせいか?
妻たちの意見……どうぞ!
「…………」
黒い悪魔が平気だった妻たちでも、ハエの王ベルゼブブの見た目には、絶句するしかないほどの気持ち悪さを感じているらしい。妻たちの後ろでカタカタ骨が鳴っているので覗いてみると、スケルトンたちまで体を抱いてブルブル震えていた。
おい! 魔物なのに相手の見た目を毛嫌いするのか? お前たちもホラーが苦手な相手からしたら、大して変わらないからな!
全体的に気落ちしている俺たちは、お互いを励ましあってベルゼブブを倒す会議を始めた。そしてスケルトン! お前らも慰めあってるのはわかるが、骨同士が肩? を叩いたりハグをしたりするのは、意味が分からんからやめてくれ。
「本当の名前はわからないけど、見た目からしてハエの王なのでベルゼブブと呼称します!」
ハエの王というのは何となく理解してくれたが、ベルゼブブというのは聞いた事あるが、名前とハエが結び付かず首をかしげていた。
「そう言うもんだと思って。で、ベルゼブブは見た目からしてハエだから、火とか効くのかな? ん~堕天使より強いはずなんだから、ただの火では効き目が薄いかな?
人造ゴーレムだと攻撃するまで、反応しなさそうだから、動いている所は見れないけど……周りのハエを見る限り、かなり早い可能性があるね。早い魔物っていうと、フェンリル以外に移動が速い魔物って、あまり戦った事あんまりないな。どう対応するべきかな?」
動きが早い魔物に対する対応は、チェインで組み付いて逃がさないって、意外に思いつかないんだが。アリスが一対一ならそれしかないけど、俺たちは複数なので数で包囲しつつ、殲滅が妥当なのでは? という意見が出た。
ただ1つ問題があった。天井が20メートル程と制限のある空間なのだが、相手が自由に飛びまわれるという、圧倒的なアドバンテージが向こうにあるという事だ。
対策をたてようにも、行き当たりばったりな戦闘になりそうだ・・・
年少組から、部屋が高いなら土魔法で、低くしちゃえばいいんじゃない? という話が出たが、土魔法で無い物を魔力から作り出すとなると、ありえないほどの魔力を使う事になるのだ。
アースウォールなど、一時的にそう広くない範囲に、壁を作るのはまだいいのだが、周りに利用できるものが無い所で、大きな物を作るのは勘弁してほしいところだ。今回のような広範囲は厳しい……けど、着眼点は良いと思う。
「年少組の意見を聞いて、ちょっと思いついたことがあるから、聞いてもらっていいかな?
土魔法で壁や天井を作るのは、魔力がいくらあっても足りないけど、結界で行動範囲を制限すれば、戦いやすくなるんじゃないか? 結界の範囲内に入ったら発動して、外に出られなくする感じ。3メートルくらい先に結界の壁があるんだけど、ちょっと殴ってみて」
シュリにお願いして、殴ってもらった。拳ではなくシールドバッシュみたいな感じで、体当たりをしていた。シュリの攻撃でも耐えれるのは、外から中に入れるが中から外には出られないという条件にして、結界の強度を高めている。これなら多少広範囲に展開しても問題ないだろう。
「結界内は密室みたいな形になるから、広範囲に展開する魔法は使えないね。でも相手の行動を制限できるのはこっちからすると助かるね。一応初手はユニゾンマジックの火と風で魔法を叩き込んでから、範囲内に来たら結界をはって閉じ込めよう」
その後いくつかの決まり事を決めてから進む事になった。150階でやったように穴を掘って出口を確保しようとしたが、この階は穴を掘る事が出来なかったのであきらめて、上の階で準備していたアダマンタイト板を組み立てる事になった。
部屋に入ってもハエの王ベルゼブブは戦闘態勢に入っていない。なので、入口を塞ぐようにして休憩所を作る事にした。念のため空気の入れ替えができるように入ってきた通路を使う事にした。
準備が整いベルゼブブに近付いていく。
「まずは手始めに!」
魔力を圧縮して、ユニゾンマジックで、部屋の温度が500度ちかくまで上がるくらいの余波を起こした。ベルゼブブの取り巻きは、そこまで強いわけでは無く、あっさりとドロップ品に変わっているのが分かった。けど、あれって何だろうな? ハエの羽とかいらねえぞ?
油断しているつもりはなかったが、次の瞬間強い衝撃が体を襲った。俺たちの誰にもダメージが入った様子は無かったが、原因が分からず混乱しかけている。
「落ち着け! 全員防御態勢!」
今すぐ簡単にできる行動をみんなに指示する。やる事が分かると意外と落ち着くようで、周りを見る余裕が出てきていた。
「ベルゼブブがいない!」
誰かの声がして、ベルゼブブのいた場所を見ると姿が無かった。みんなで探すと、50メートル位離れた、上空に飛んでいた。
「もしかして、あいつが高速移動して体当たりをしてきた? その割には痛くなかったけど……」
言い終わった瞬間に、俺は吹っ飛ばされていた。やはり痛みはない。けど、かなりのスピードでぶつかられたのに、吹っ飛んだだけだった。だけど、分かった。あのハエがぶつかったのがわかった。
「みんな、痛みはないけどめっちゃ速い!」
誰も反応できていない。気付いたら取り巻きの眷属も復活しており、集団で襲ってきていた。
「「「「「「キャァァァァァッ!」」」」」」
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