第319話 嫌な事はいったん忘れよう!

 一応の方針は決まった。でも、期待して二週間もかけて森を抜けたのに、ガッカリ感が大きすぎて、今日はこれ以上活動する気にはなれなかった。


 妻たちも俺と同じでガッカリはしているが、妻たちにとっては俺と森を一緒に抜けている過程も楽しんでいたので、俺ほどの精神的ダメージは無いようだ。俺も森を抜ける過程を楽しんではいたけど、期待が大きかっただけにね。


「今日は夜番とかは無いからみんなでゆっくりしよう。久々にゲームしたいし徹底的に楽しもう。まだ見てない映画もたくさんあるし、思い思いに好きなことしよう! まぁ好きなことしたいとは言えご飯を食べないといけないわけで、まずは食事をつくろう!」


 みんなに『ご主人様は作らなくても、私たちがやりますので』と言われたけど、今日はどうしても作りたい気分なので一緒に料理をすることにしたのだ。今日の料理のお供は年少組だ。


 年少組とはいえ、料理スキルを持っていてシルキーたちに料理を仕込まれているので、日本で言えば天才子供料理人と呼ばれる程の腕の持ち主なのだ。下手をしなくても俺よりは料理が上手なメンバーである。


 自分たちより下手な俺が作っても、私たちのために作ってくれた料理なのでとても嬉しいといつも言ってくれるので基本はデザート中心で作っている。


 妻たちは料理に関しては嘘をつかないので、美味しいと言ってくれることは真実なので、俺も食べてもらうまでは正直びくびくして出すんだけどな。何せ失敗した時は普通にダメだしされるからな。


「さて今日は俺が作りたいというよりは、みんなでわいわい作りたいって気分だからみんな手伝ってな。今日のメニューは、餃子・肉まん・シュウマイ・小籠包の中華風でいくから他の料理も合わせてくれると嬉しい!」


 年少組の妻たち以外は、俺の言ったメニューに合う料理を考えて手分けをして料理に入るようだ。シュウマイ以外は手作りの皮を使うので、まずは生地作りから始めていく。作り方は食感が違う事からわかるように、肉餡を包んだ似た料理であっても微妙に作り方が違う。


 餃子の皮は、強力粉・薄力粉・塩・ぬるま湯。


 肉まんの皮は、薄力粉・ドライイースト・ベーキングパウダー・塩・ぬるま湯・油 。


 小籠包の皮は、強力粉・薄力粉・お湯・ごま油。


 材料を見ればわかる通り、微妙に作り方が違う。特に肉まんの皮はスポンジのような柔らかい食感を出すために、イースト菌を使っているのが特徴だろう。


 餃子は水餃子と焼き餃子を作る予定なので、皮の厚さを2種類作ってもらっている。個人的に水餃子は醤油とお酢を1:1の比率でつくったつけダレが好みである。うちの餃子に使う野菜は白菜だ。地域によって餃子や肉まんの餡は変わってくるけど、前にも言ったが手作りの際は絶対に白菜を使うのがうちの流儀だ。


 年少組と一緒に作っていて感じる事があった。たまに一緒に餃子を包んでいる時は気にならなかったが、今日は年少組だけだったので気付いてしまった。この娘たちの包むスピードが俺の倍くらい早い。


 俺が一個包む間に二個以上包んでいる、ソフィー・エレノア・ケイティの三人は三個くらい包んでしまっているので、俺が作る個数が大分少なくなってしまう。早く包んでいるのに形が俺の方が悪いのが微妙に納得がいかない!


 ちなみにシュウマイは、包む方法ではなく市販の皮をまず半分に切って、それを横にして千切りのようにしてほぐしてから、丸く成型した肉餡をほぐした皮の上を転がす感じで、皮をまとわりつかせる簡単なつくり方だ!


 料理で少しでも気分転換ができてよかった。今日の夕食は俺たちが作った、焼き餃子・水餃子・肉まん・シュウマイ・小籠包に、チャーハン・酸辣湯・回鍋肉・青椒肉絲・麻婆豆腐・八宝菜・酢豚・春巻きetc。


 うむ、分かってた事だけど見事に中華系だから脂っこいな! 脂肪分の吸収を抑える黒烏龍茶が準備されているあたり、妻たちの気遣いが嬉しい。どこでそんな知識を学んだんだろうな? 俺の知識を少し引き継いでるシルキーたちからだろうか?


「じゃぁ満漢全席とは言えないけど、豪華な料理には違いないね。いただきまーす」


 みんなも俺に合わせて『いただきまーす』の掛け声をしてから料理が始まる。俺の隣に座っているのは毎食違う、今日はキリエとリリーだ。


 そういえば、リリーのおじいちゃんのレイリーは、ディストピアに置いてきてるけど元気にしてっかな? レイリーは今、前職の経験を活かして兵士達や衛兵の統括を行っている。最近気力が充実しているせいか、父親と間違えるくらい見た目が若返っている。


 酸辣湯がうめえ……何でこんなにうまく感じるんだろう?


 酸辣湯を食べて首をひねっていると、ミリーが声をかけてきた。


「その料理どうです? 美味しくないですか?」


「めちゃくちゃ美味いよ。でもさ、なんか食べた事ないうまさだから、なんでかなって思ってたんだけど、なんで?」


「それはですね、シルキーさんたちやブラウニーさんたち、ドリアードの皆さんたちに手伝ってもらってお酢を作ったんです。


 ご主人様がよく垂れ流しにしてる、うまーいが連発されるあのテレビ番組ですか、あれで前にお酢の回がありまして、お酢のためにお酒を造っててお酒のためにお米から作ってる幻のお酢が出てきたので再現しようと思いまして、DPで取り寄せてもらったものと研究を重ねて作り出したのが、このお酢です。


 取り寄せたお酢は正直もっとおいしいですが、それでも普通に使われているお酢より美味しいのができたので、今日使ってみました」


「そのお酢ちょっとくれ! 醤油と混ぜて、水餃子をつける……なんだこれ! ちょうどいい酸っぱさなのに、うまみが強い? これやばいな!」


 そういえばあのテレビ番組でお酢の王様的な紹介があったっけな? テレビで見てたけどまさかたかがお酢でそんなに叫ぶほどうまいのか? って思ってたけど、これでもまだ本物には及ばないのにこの美味さ。叫んでもしょうがないよね、むしろ納得だよ。


 食事の後はみんなでお風呂に入って、一日の嫌なものを流す。三幼女は気付いたら髪を洗っている俺の前に陣取っていた。いつもみたいに洗えってことか、まだまだ甘えん坊だな。頭を洗い終えると三人で仲良く背中を洗ってくれたけど、あんまりこすると痛いからやめてくれ。


 巨大ベッドを準備して二〇〇型の巨大テレビを設置して映画を見る事にした。今日の映画はゲームの地球〇衛軍みたいに、巨大な生物と戦うSF映画だった。


 誰のチョイスか分からないが、それなりに面白かったので良しとしようか。それにしても、映画に興味の無かった妻たちは二時間ずっと狩りをしていたようだ。レア素材がとれたと喜んでいるみたいなのでモン〇ンでもしてたのだろう。


 眠くなったので先に寝るというと、年少組も眠くなっていたみたいでテレビから離れた場所で一緒に寝る事にした。そこにはスライムたちが陣取っていたので、枕にして寝る事にした。

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